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蘇英09: ホリールード教会

 スターリングの鉄道駅からスターリング城にいたる上り坂の途中にあった教会。完全に「もののついで」に立ち寄ったんだけど、予想以上にいい雰囲気の教会だった。

 教会に入ると、優しい顔をしたおばさん(修道女なのかどうかは不明)が「どこからきましたか?」と聞いてきた。そこで「日本です」と応えると、「日本語のガイドもありますよ」と各国語ごとの解説紙片が納められているラックのなかから、日本語のガイドを探し始めた。

 ラックの各国語の段には、それぞれの言語で書かれた国名と国旗が記されていたんだけど、その中にある「日本の国旗」と「日本語で書かれた『日本語』の文字」を、おばさんはなかなか探し当てられない。それは無理もないことで、たぶん日本の国旗なんて覚えてもいないに違いないのだ。

 そこで、私も捜索に加わると、一目で日の丸が書かれた段を見つけ出すことができた。私がラックからガイドを抜き出し、「見つけましたよ(I found it.)」と言うと、おばさんは「オォ!・・・しかし(英語で会話ができている)あなたには、日本語のガイドは必要なさそうですね」などと言いながら、私から日本語のガイドを取り上げ、英語の解説を渡すフリするのだった。そして悪戯っぽい表情を浮かべると、ホッホッホと笑いながら、やがて大股で立ち去っていった。もちろん、私はほとんど英語など話していないので、単なる優しいユーモアだったのだが、それは実に楽しいものだった。

 海外の宗教施設を訪問すると、そのコミュニティにおける施設の重みがわからないだけに、どうしても緊張して望んでしまう。それはそれで悪いことではないんだけど、そのせいで観覧そのものに集中しにくいことが多い。しかしこの教会では、はじめにこのような交流を持つことができたおかげで、実にリラックスして教会内を見学することができた。

 またそういう面を除いても、この教会はなかなか立派なものだった。日本でいうところの船底天井のような天井に、美しいステンドグラス。そこにいるだけで教会や教義の神性を信じてしまいそうな、美しくも神秘的な空間が、見事に現出していた。

 この教会は、かつてプロテスタントとカトリックの対立の舞台にもなったらしく、一時は教会内が2つに壁で区切られていたらしい。今でもスコティッシュ・プレミアリーグのセルティックとレンジャーズに見られるように、完全には宗教的対立が根絶されているとは言いがたいスコットランド。日本人には到底理解できない文化背景だけれども、この美しい教会を分断するような対立は、この先できるだけ無いに越したことはないよなぁ、と思ってしまう日本人なのであった。

 ところで、このホリールード教会は、Church of Holy Rude。しかしエジンバラのホリールードハウス宮殿は、Palace of Holyrood House。これはなんなんじゃろ、と思っていたんだけど、ここで読んだ解説紙片によれば、両方とも同じ語源で、「イエスの十字架の磔」を意味するそうだ。Rudeといっても、中指を立てるわけではないわけですな、うむうむ。

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蘇英09: アーガイルズ・ロッジング

 スターリング城すぐ近くにあるピンク色の建物が、アーガイルズ・ロッジングだ。日本語でいうとなんだかわからなかったので、カタカナ英語そのままの名称でご紹介。アーガイルという、昔のお偉いさんの邸宅かなんかのようだ。

 ここはスターリング城の入場券があれば無料で入れるというので、しめしめとばかりにスターリング城からの帰路に立ち寄ったんだけど、あいにく入場することはできなかった。正確に言えば、入場しようと思えばできたのだけど、時間の都合でできなかった、ということになる。

 顛末はこうだ。

 ・アーガイルズ・ロッジングに向かった
 ・入口で止められた
 ・「ガイドツアーで案内するから開始時間を待て」
 ・待つだけの時間はない
 ・帰る

 という流れである。ま、仕方がないですな。入口で写真だけとって、おさらばした。トホホのホ。

 さて、以下は余談だけども、ここで面白かったのは、入口で制止して「ガイドツアーの開始を待て」といったおじさんだった。

 このおじさん。この旅行で遭遇した現地人の中でも、群を抜いて訛りのキツイ人で、正直何を言っているのか全くわからなかった。かろうじて聞き取れた重要な単語を抽出すると、ひたすら「ワイト・フォー・ゲイト」と言っている(冠詞がついていたかもしれないが聞き取れない)ようだった。

 さて私は考えた。しかし「ワイト・フォー」の部分は、おそらく「Wait for」ではないかと推測できたんだけど、「ゲイト」が全くわからない。普通に考えると「ゲイト」は「Gate」で、「城門で待て」かとも思ったんだけど、それにしては文脈がおかしい。「Wait for gate」じゃあ「城門『を』待て」になってしまう。

 で、10回くらい聞き返した挙句、「ゲイト」は「Guide」であり「ガイドを待て」だとわかったんだけど、いやー、難解だったよ。こんなに難解だったのは、前回の訪英時の入国審査で「アイ・ダイ?」と言われたとき以来だ。ちなみに「アイ・ダイ?」は、「I die?(私は死ぬ?)」ではもちろんなく、「Eight days?(エイト・デイズ?:滞在は八日間?)」だった。

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蘇英09: ウォレス・モニュメント

 ウォレス・モニュメントは、映画「ブレイブハート」でおなじみのスコットランドの英雄、ウィリアム・ウォレスを記念して立てられているモニュメントだ。

 モニュメントは内部を登ることができる塔形状をしていて、ウォレスが使用した(とされている)剣なども飾られているらしい。

 ただその場所が、スターリング観光の目玉であるところのスターリング城からは相当離れていたので、今回の旅行では、私は訪問するに至らなかった。もちろん根性を入れるなり、タクシーやバスを使うなりすればいけたのかもしれないけど、スターリングの登山で疲弊していた私は、ウォレス・モニュメントに肉薄することを、あっさりとあきらめてしまったのだ。旅行も3日目にして、精神力が磨耗していたのかもしれない。

 ということで、スターリング城から遠望しただけで終わったウォレスモニュメントなのでした。

 写真は↓

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蘇英09: スターリング城

 円錐形のスターリングの街の頂点に立つスターリング城。岩山の頂上に建てられ、難攻不落を誇ったこの城砦は、スターリング観光の目玉にして、この街のシンボルに相違ない。

 第一印象は、正直に言ってパッとしないと思った。エジンバラ城を見学したあとだったので、若干のスケールダウンという感が否めなかったのだ。加えて天候も災いしたと言っていい。青空の中気持ちよく眺めたエジンバラ城と、薄暗い風雨の中で覗き込むように見たスターリング城では、どうしても印象に差が出てしまう。

 しかし、スターリング城は噛めば噛むほど趣の出るよい城だった。

 時代に従って増築されていったと思われる、統一性のない建築物。どこか田舎の素朴さが残る、古めかしく、安っぽくすらもあるインテリア。どこを見ても、何か足りないというか、間の抜けた印象が否めない。高度に観光地化され、洗練されていたエジンバラ城と比べると、スターリング城はどうしても素朴で無骨といった印象になってしまうのだ。

 しかしそれこそがスターリング城最大の魅力であると言っていい。素朴で無骨で、そして少々間抜けであることが、「スコットランドっぽさ」を私の深層に投影してくれたのだ。私は「スコットランドっぽさ」を語るほどに、この土地の人々の気性を知るわけではないけれども、直感的に「これぞスコットランドだ」と私には思われた。

 城からの眺めも、スコットランドらしさという点では、エジンバラ城からの景観を凌駕すること数段だ。遠くバノックバーンの古戦場を望み、ウォレスモニュメントを望み、あるいは遥かなるハイランドに思いを馳せつつ虚空を眺める。純粋に景観が美しいという場所も、もちろん好きだ。でもそれ以上に、想像力の翼を羽ばたかせるような望み方ができるという点で、スターリング城からの景観は、私にとっては魅力的だった。

 スターリング城は、深い魅力と見所と景観に富んだ、私の大のお気に入りの場所となった。

 写真は↓

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