という話。
生まれも育ちも関東南部限定。神奈川、東京、埼玉の範囲から一回も出ることなく、限られた世界の中を、何度か移り住んできた私としては、醤油といえば濃口醤油一択で、薄口醤油なるものは、聞いたことこそあれ、使ったことなどは、ついぞないものだった。
それを今回試しに買ってみて、使ってみたのだから、まぁ一つの事件として挙げてもいいだろう。
なぜそういうことになったかというと、家で美味い牛丼を食べたくなったからだ。いや、もっと限定的に言おう。家で吉野家のような牛丼を食べたくなったからだ。
牛丼のレシピというのは星の数ほどあり、インターネットで調べればその枚挙には暇がない。でも、その多くは「すき焼き丼」のような仕上がりで、吉野家のそれとは程遠いものだった。牛丼といえば吉野家、だと思っている私としては、これは不満だった。
牛丼なんてものは、牛肉と醤油と砂糖でできているのだから、だいたいどうやっても美味しくはなる。だから、それはそれでいいと言えなくもないんだけど、でも、家にある濃口醤油だけで作れる範囲のレシピで作ろうとすると、吉野家の牛丼とは明らかに別のジャンルの味になってしまう。吉野家を自分で作りたいのだから、それがいくら美味しくても、満足度は100%にはならない。
そしてそんな自作牛丼が、味とともに、いやそれ以上に吉野家と明確に違うのは、色だった。ビジュアルだった。
普通に家庭にある濃口醤油で作ると、どうしてもその仕上がり色は濃く、黒くなる。でも皆さん知っての通り、吉野家の牛丼は肉の色が薄く、白いのだ。あの色こそが吉野家なのだ。あの色は、薄口醤油という、未知の調味料を使わなければ出ないのに違いない。ぐぬぬぬぬぬ。
そういうものを作りたい衝動に、ついに抗えなくなった。
ってことで、薄口醤油をついに入手し、ネットで再現レシピを調べ、牛丼を作った。そういう次第だ。大げさに言ってるけど、数百円の出費の話だ。うむ、我ながらスケールが小さいな。まぁいいだろう。
結果は、すげーうまかった。というか、吉野家に相当に近いものができた。感動。特にビジュアルが完璧に吉野家のそれ。感動。そして味に関して言えば、おそらく吉野家で使われているものよりも、ずっといい肉を使ったせいもあって、本家越えしたとすら言える。自分史上最高の自作牛丼を味わうことができた。うまぁぁぁい。感動。
で、そんな感動の牛丼体験から一夜明けて。
手元に残ったのは、大さじ2杯だけ使用した薄口醤油の残りだ。
さて、これ何に使おうかなぁ・・・。今のところ、アイデアは、ない。