日記: 5月18日(2008年)

 件のEQ小説、「エバークエスト連合帝国の興亡」を読了した。ので、ちょっと感想なんかを。

 ネタバレは露骨にはしないつもりだけど、少しも知りたくない人もいるだろうから、見たい人だけどうぞ。


 純粋に小説としてみて、うーん、傑作とはいえない気がするかな。

 まず訳書独特の言い回しの不自然さが隠しきれてないのが引っかかる。ファンタジーの訳書って他にはハリーポッターくらいしか知らないけど、それと比べても、他のたとえばドイルやクリスティといったメジャーどころのものと比べても、「脳味噌にすんなりと言葉が入ってくる度」が低い。このあたりは相性というものもあるだろうから、みんながみんなにとってそうかはわからないけど、私には若干「読む」という基本的な部分で難を感じた。わかりやすい=いい小説、ではないだろうけど、文学ではなくて娯楽として読む私にとっては、わかりやすさは非常に重要な要素だ。

 それと、全体の構成も、比較的小さな浅い内容の章の集合体という構成になっているのが、よく言えばテンポがよいのかもしれないけど、本音を言えばかなり物足りないと感じた。一つ一つの内容の掘り下げ方が甘く、物語としての味わいが薄いこともあるし、また章ごとに時間や場面が一気に飛んでしまうことがしばしばあることにも、少々戸惑った。読んでいる側としては、読みにくい文体の壁を乗り越えて、やっと小説世界に入れたかと思ったら、すぐに全く違う場面になってしまい、読者である自分だけがその前の場面に取り残されているうという、妙な置いてけぼり感を感じてしまった。ただこの点は、主人公アータルタールが変幻自在にさまざまな歴史上の人物に成り代わるという、小説全体のテーマに関連する構成だから、必要な手段なんだろうとは思うけどね。それが面白いかというと、少し疑問符が現れるというくらいのことだ。

 私の個人的な好みというか、こうあってほしかったということからすると、もっと人間グループの活躍やその前後の部分を厚くして欲しかったし、カッタやセルの事件前の部分も厚くして欲しかった。限られたページ数で収めるためには仕方がないんだろうけど、両方とも10倍にでもできるくらいの素材だと思えるだけに、もったいない。特にセルは、なんでああいう風になり、ああいう力を得たのか、全く理解できなかった。謀反に至る心理や、力の根拠をもっと示すべき。フォシィについても同様だ。

 とまぁ、非常に辛口なんだけど、それらすべてを許せるほどに、EQプレイヤーからすると面白い「資料」だと思う。カッタ、セル、フォシィ、クラッシュ、ドヴィン、アータルタール、等々。EQやEQ2で登場する数々の有名人が、どんな相関関係なのかがわかって興味深い。一応これが「正史」と思っていいのか、疑ってしまうほどのトンデモ展開だけど・・・多分正史なんだろうなぁ。

 とにかく、読むことでEQやEQ2のゲームプレイが楽しくなることは疑いない。小説というよりも、歴史的資料としての価値が高そうな一冊、よく出来たファンブック、というのが私の素直な感想だ。

日記: 5月18日(2008年)」への3件のフィードバック

  1. DarkRaven

    SWのスピンオフ小説(特に初期の)とかも翻訳のせいでかなり読むのが辛い物になってた。こういうのって訳者が世界観に精通してないとちゃんと訳せないので難しいんだろうね。
    EQの世界観に詳しく、かつ翻訳やっている人とか居るのか分からないしやはり原本を読むしか。

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  2. 訳している人の理解度に寄るところなのだろうか。
    やはりEQ世界観知っていないと難しい所はあるよねぇ。

    素朴な疑問。
    帝国なのか連合なのかどっちなんだ。

    返信
  3. Nez/蝿

    れいぶんさん:
    いやいやいやいやいや。
    私にとっての原本は、もっと「言葉の吸収度」が低いよ!

    弁明するわけじゃないけど、この小説の和訳は悪くはないよ。
    和訳のされ方から原文を想像するに、原文の言い回しがひねてて、
    和文との親和性が元々低いもののように思われる。
    和訳時に読みやすい原文と読みにくい原文ってあるだろうしね。

    そんな和訳に適さない(と勝手に想像している)原文を、素直に
    欠落無く訳す苦労と、それが一応達成できていることは評価したい。
    勝手に言い回しや表現を変えてよいなら、もっと楽なんだろうけど、
    やっぱりある程度原文ままにするという制約があるだろうからねえ。

    ひょっとすると英語脳で読むと、
    和文でも少し読みやすいかもしれない。かな?

    vさん:
    内容より表現かな?
    EQの世界観の再限度はかなり高い。
    私の頭の中のビジョンよりも、はるかにリアリティがあった。

    どうしても日本人(ってひっくるめちゃだめか)のファンタジー感は、
    どこかのどかなアニメっぽいイメージが多くて、リアリティに欠けると
    思うんだけど、本作は見事に血と汗と焦げた森の匂いが漂う、
    コナン・ザ・グレート的ファンタジー世界を描くことに成功している。
    大昔ロードス島戦記を読んだときには、頭の中で動くキャラクターは
    アニメっぽいキャラだったけど、本作ではしっかりとバタ臭い
    オッサンオバサンが脳内で躍動してくれた。

    > 帝国なのか連合なのか

    連合帝国です! Combine Empireの訳!
    それまで種族ごとに異なる国家を築いて生活していたノーラスに、
    種族の垣根を越えた巨大なコミュニティを形成したのが連合帝国。
    一応帝国ということで、皇帝がそれを統べてはいたものの、
    どっちかというと連合の議長というような立場のように思われる。

    れいぶんさんがスターウォーズの例を出したけど、SWにおける
    銀河共和国に考え方は近いと思う。インスパイアはされてそう。
    銀河帝国元老院最高議長=連合帝国皇帝。皇帝権力が弱い。

    で、結局種族間の不和をまとめきれず、帝国はあっさりと崩壊し、
    帝国首脳陣はラクリンに逃亡しましたとさ。
    SoLの街では善悪種族が一緒に暮らしていたのはそういうわけですね。

    その帝国崩壊を描いたのが本作なのである。べんべん。

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