一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編>(沢木耕太郎、講談社文庫)を読んだ影響で、微量に親ベトナム的になった私。
ってなわけで昼飯に、ベトナムの代表的な麺料理「フォー」なるものを食ってみた。まぁ、ファミレスで食ったものなんで、本物といえるかは甚だ不安だけど、いいとしよう。
ウィキペディアによれば、フォーとは
「ベトナムの代表的な麺料理である。鶏や牛から出汁を取った透明なあっさりしたスープにコシのない米麺を入れ、鶏肉や牛の薄切り肉、肉団子などが典型的な具材としてのる。そこにライムの絞り汁や、たっぷりのバジル、コリアンダー、青唐辛子などのハーブや生のモヤシ、チリソース、ニョクマムなどを好みで加える」
というものらしい。
私は案外、食に関しては保守的で、なにかのきっかけがない限り、新しい文化圏の食には、あまり手を出さないで生きてきた。特に東南アジア系の料理は、殆ど未知の領域で、パクチーもニョクマムも食べたことがない。エスニック料理の超初心者。なので、勢いで頼んでしまったものの、いったいどんな味なのか全く見当もつかず、かなり不安に思いながら、料理の完成を待った。
待つこと15分前後。案外のんびりとやってきたフォーは、あっさり系ラーメンのような、なかなか良い香りを立てていた。丼の中をのぞきこむと、パクチーと思しき香草、海老、鶏肉が見え、その下でスープの中に白い稲庭うどんのような麺が泳いでいた。結構うまそうだぞ。
丼の脇には、ドレッシング皿のようなものの中に、醤油のような液体が入っている。おそらくこれが、「ニョクマム」なる調味料なのだろう。外見上は、薄口醤油にしか見えない。容器を持ち上げ、匂いをかいでみる。
く、く、く、くさっ!!!
なんじゃこりゃ。この匂いはアレだ、クサヤだ。クサヤの匂い成分を抽出し、液体化すればこんな感じのものになるのではなかろうか。そんな、かなり不快な匂いが立ち上っていた。こんなもんかけていいのか? 本当なのか?
あらかじめニョクマムがかけられていなかったのは、この匂いが苛烈に人を選ぶからに違いない。嫌ならかけないでも食えますよ、っていう良心の現われとみた。
とはいえ、毒食らわば皿まで。ここでニョクマムをかけないで、画竜点睛を欠くフォーを食らって帰るほど、私は落ちぶれてはいないのだ(?)。容器を取り上げ、そのすべてを丼の中にぶちまける。ふっふっふ、これで後戻りはきかない。
そして、いざ食う。
ん、ん、ん。うん。普通にうまいかな? 拍子抜けするほどに普通だ。
まずニョクマム。かける前の味を試さなかったので、かけた後の味しかわからず、このフォーの全体を構成する味の、一体どの部分がニョクマムによるものなのか、まるで分析できなかった。けど、匂いにはすぐに慣れてしまったし、少なくともニョクマムのせいでまずい、と感じるような箇所には遭遇しなかった。ニョクマム攻略完了。余裕だ。
続いてパクチー。こっちのがちょっときつかったな。思いのほか味が強かった。ちゃんと配分を考えて、「薬味」になる程度をフォーと一緒に食えば、こういう香草もありかな、と思えるんだけど、最初に食ったときに「具」として、一気に大量のパクチーを口に入れて失敗してしまった。もう、口の中はパクチー。フォーの味なし。料理名パクチー。でも、「薬味」としてのパクチーは全然アリですね、私的には。で、パクチーも攻略。他愛ないな。
麺。なんだろ。私の食ったことのあるもので無理やりたとえれば、細長く切ったワンタン、というかんじだ。麺の形状をしてはいるものの、麺にコシが全くなく、その食感を擬音で表現するならば、「ドロドロ」というのが最も近しい。カップヌードルを10分くらい煮込むとこうなるのかもしれない。まずくはないけど、なんか食としての手ごたえが鈍いので、満足感に欠ける気がする。残念。
スープ。安っぽいファミレスラーメンスープ・エスニック風、って感じだった。初物尽くしのメニューの中では、それほど初物感がなく、安心できる味。レベルとしてはインスタントラーメン以上、中華飯店未満。でも、ジャンクフーダーな私としては、うまいか、まずいか、といえば、うまかった。
つーことで、先に言ったように私の感想としては、トータルでは案外うまい部類だったよ。
ただ、値段と、味と、カロリーを含めて考えると、うーん、もう頼まないかな、という印象。もう少し安くて、ヘルシーならば、このレベルの味でもいいんだけどね。だけど、わがままな私としては、値段が高かったり、カロリーが高かったりする料理には、どうしてもその代償として、相当な美味さを求めたくなるのだ。
50点。
インスタントのフォーはたまに食うよ。ファミレスでは食べないけど。
インスタントかー。
小さい包装にニョクマムが入ってたりするんだろうか。
そしてあけるのをミスって飛び散るクサヤ臭・・・。