カテゴリー別アーカイブ: 英国紀行’14

英国’14: 25.Prego

 イギリスで食ってはいけないもの。それはイタリアンだ。

 ・・・ってことはわかっていたんだけども、ずーっとイギリス料理を食べ続けていて、変化球が欲しかったので、一縷の望みをかけて入店したのが、このブロードウェイのイタリアンレストラン、Pregoだった。

 が、その結果は「やっぱり食ってはいけなかった」。率直に言って不味かった。

 一応店の名誉のために言っておくと、選んだメニューがよくなかったかもしれない。ちょっと胃も疲れていたので、ベジタリアン向けのリゾットなどという、肉好きの私にしてはガラにもないものを選んだら、当たり前ながら、面白くもなんともない味のシロモノだったのだ。自爆といっても、まぁ差し支えはない。

 でも、それを鑑みても、あまりにも味気ない料理だった。それに他にピザとパスタも食べたけど、それらもやっぱり美味しくはなかった。例えば日本のサイゼリアにすら、大きく劣る出来栄え。うーん、なんだろうな、どれも味がないんだよな。基本的に味がなくて、うまみもなくて、風味もない。ピザは香ばしさがないし、パスタは茹ですぎ。お約束どおりのイングリッシュイタリアンだった。まるで病院食。

 しかし、不思議なことにこの店、海外旅行サイトにおける評価は悪くないんだよね。確かに接客は非常にフレンドリーだったし、コッツウォルズにしては今風でお洒落な部類の店だった。でも、食えば一気にその印象は覆ってしかるべきだと思うんだけど・・・現地の人々とは味覚が違うとしか考えられないな。

ペローニ

ベジタリアンリゾット

店舗外観

英国’14: 24.Bibury Trout Farmのカフェ

 バイブリーの鱒養殖施設、Bibury Trout Farmに併設されているカフェで昼食をとった。

 食べたものはもちろん鱒。いくつかの調理法の鱒と、あとは普通のサンドウィッチと、そんなものが売られていたので、「焼き」の鱒にした。オープンカウンターの店先では、日本の縁日のヤキソバ屋台のような鉄板で、3枚に下ろされた鱒を焼かれていた。魚を鉄板で焼く、というのは日本的でもあってその味に期待した。

 ・・・んだけども、普通だった。

 出てきたものは、鱒のソテーと、その上に魚を覆い隠すほどに大量に乗せられた野菜、というようなプレートだった。かなりサラダ感覚の強い料理で、魚メインで楽しみたかった気持ちは、粉々に打ち砕かれた。これは「魚料理と付け合せの野菜」ではなくて、「サラダと付け合せの魚」だよ。トホホ。

 とはいえ味のほうはというと、塩焼きを期待したのにドレッシング味だった、というような誤算はあったものの、決して悪くはなかった。そもそもこの旅行では、生野菜が完全に欠落していたので、生野菜を摂取できたことはむしろ好ましくさえあった。

 ただ味は悪くはないんだけども、この「焼きすぎ文化」のメッカであるイギリスにおいて、しかしこの料理だけは「焼かなすぎ」だったのは残念だった。魚料理こそはちゃんと焼いて、皮目がパリパリになるまで頑張れば、もっとおいしくなるのに。皮がヌルヌルネチョネチョ感を保つ程度にしか焼かれてはおらず、香ばしさと言うものとは無縁の料理だった。うーむ、素材がもったいない。

 ま、せっかくバイブリーまできたから、という記念の食事と考えれば、許せるラインかな。

 余談だけど、この施設には日本語で「この先にはトイレはありません。橋を渡った先にある公衆トイレをご利用下さい」などと書いてあった。でもその下には英語で「トイレはこの先にあります」と書いてある。そして実際にそこにトイレがあって、それを私は利用した。一瞬、「日本語を間違えたのかな」と思ったけどそうではない。要するに日本語では意図的にウソを書いているのだ。

 おそたく日本人のツアー観光客がトイレに押し寄せると迷惑だから(たぶん過去にそういう事例が多発したのだと思われる)、どうせ日本人には英語は読めまいとたかをくくって、誤誘導しているのだろう。

 誠意のないイギリス人のやり口にも、それを誘発してしまう日本人にも、同時に憤りを感じてしまい、複雑な気分になったのだった。

トラウトのグリル

トラウトファーム外観

英国’14: 23.The Swan

 毎晩The Bellで夕飯というのも面白くないので、という感じでB&Bのオーナー夫妻に夕食にオススメの店を聞いたところ、候補に挙げられた店のひとつがここ、The Swanだった。

 The Swanはブロードウェイの街にあるホテルで、その1階部分はオープンに開かれたレストランになっていた。そこで食べてきたわけだ。ブロードウェイまではB&Bから車で10分程度。位置関係としては、B&BからThe Bellのあるウィラージー(Willersey)の村までが車で3分、ブロードウェイまでがさらにその向こうに7分、というような感じだった。

 ホテルの脇の、道路沿いの駐車場に車を停めた。店の駐車場なのか、公共の駐車場だったのかがそのときは分からなかったんだけど、その後のドライブの経験から思い返すと、あれはきっと短時間駐車用の公共の駐車場スペースだったようだ。

 余談なんだけども、その駐車スペースに書いてある標識が簡単な英語なのに意味が分からなくて興味深かった。曰く「2 hours(改行)No Return(改行)within 2 hours」。2時間、2時間以内に帰るな? なんのこっちゃ? ・・・で、あとで調べたところ、「2時間駐車してよし、駐車後は2時間たたないと同じところに停めなおしちゃダメ」という意味だそうだ。そういわれれば確かにわかるけど、その場ではぜんぜんわからなかった。まさか再駐車というズルを指摘する文章だったとは・・・。

 話を戻そう。The Swanだ。さすがにブロードウェイはウィラージーに比べると人が多い。ホテルの入口のテラス席では、我々が到着した時点ですでに大勢の客が食事を楽しんでいた。でも幸いなことに、屋内の席には空きがあったので、そこに席を確保し、食事をすることができた。

 ここではエールパイを注文した。ステーキ・アンド・エールパイが正確かな。肉をエールで煮込んだもの、ビーフシチュー的なものを耐熱容器に入れて、それをパイ生地で蓋をしてオーブンで焼いた、というような料理だ。以前、スコットランドのスターリングでも同じ料理を食べて美味しかったので、間違いはなかろうと思ったのだ。

 案の定、間違いのない味だった。パイとビーフシチューだから、不味いわけはないんだよな。店の雰囲気も落ち着いた感じで悪くなく、いいディナーを楽しめた。ただ、やっぱり宿から少し遠いというのはネックではあったかな。

エールパイ

英国’14: 22.Hathaway Tea Rooms

 シェイクスピアの街、ストラトフォード・アポン・エイボンでのランチは、Hathaway Tea Roomsでとった。

 Hathaway(ハサウェイ)というのは、ガンダム好き的にはブライト艦長の息子の名前としておなじみなわけなんだけども、もちろんそうじゃない。これはおそらくは、シェイクスピアの嫁さん、アン・ハサウェイから採られた名称だろう(同姓同名の現代の女優もいるがそれも違う)。

 道路側から一見すると狭い間口の狭い店にしか見えず、せいぜい3、4組しか入れない規模の店かと思われるんだけども、実際の店のつくりは中に入るにつれて広くなっていて、さら奥にいくと中庭にテラス席まである、というような余裕のあるつくりの店だった。

 「ちゃんとしたティールームで、ちゃんとしたクリームティーを味わう」というのも今回の旅の目的だったので、前日のソールズベリー大聖堂と同じメニューにはなるものの、The Hathawey Traditional Cream Teaなるクリームティーをオーダーした。クリームティーというのは、スコーンにジャムにクロテッドクリームに紅茶、というセットメニューのことだ。

 スコーンの種類をプレーンかレーズンかで選べたので、2つ出てくるということだったので両方を1つづつオーダーした。紅茶の種類もいろいろありそうだったんだけど、こちらは問われなかった。まぁ、問われても困ったけど。

 しばらく待って出てきたのは、これがまた実に巨大なスコーンだった。マックのクォーターパウンダーくらいの大きさのスコーン。それが2つ。しかも、かなりヘビーな食感のずっしりスコーンで、食べきるのに相当難儀してしまった。味のほうは、好みという観点からするともう少し軽いほうが好きかな。

 周囲の席では、地元のおばさまと思しき人が、ティースタンドで供されるサンドウィッチやケーキ、そしてスコーンを食べながら、アフタヌーンティーに興じていた。「ティースタンドを使う本格的なアフタヌーンティー」などという仰々しい催しは、なんだか現実離れしたものかと思っていたんだけども、しかし普通にそれが行われている様を見せつけられ、「あぁ、異国にいるんだなぁ」ということ再確認させたられたのだった。

ポット・オブ・ティー

スコーン

英国’14: 21.Lowerfield Farmの朝食

 今回コッツウォルズでの滞在先としたB&B、Lowerfield Farmの朝食は、いわゆるフルイングリッシュブレックファストと呼ばれるものだった。

 食堂は厩舎を改造したダイニングでとる形で、そこで食べたいものの希望を述べて、提供される。メニューは、フルイングリッシュブレックファスト以外に、軽めがよい人のためのエッグズベネディクトもどきや、ベジタリアンメニューなどがあったけど、私は常にフルイングリッシュブレックファストを選択した。

 フルイングリッシュブレックファストの内容は、敷地内で放し飼いになっている鶏、または鴨の玉子料理、バックベーコン、イングリッシュソーセージ、ブラックプディング、ベイクドビーンズ、焼きトマト、焼きマッシュルーム、そしてフライドブレッドだ。これにサイドテーブルに置いてあって、自由に取ってよいものとして、パン、フレッシュジュース、ミルク、シリアル、フルーツ、ヨーグルト、などがあり、各テーブルには紅茶かコーヒーがサーブされる。実に盛りだくさんだ。

 玉子料理は好きな料理方法(目玉焼き、スクランブルド、ポーチド、ボイルド)をお願いできるし、使用する卵の個数も1個か2個かを選べる。「鶏か鴨の卵」と言われたものの、実際に出てきたものがどちらだったのかはよくわからなかった。

 バックベーコンは、ロース部分とバラ部分がつながったベーコン、と思えばいいと思う。塩辛くて、固い。が、かみ締めると肉のうまみが出てきて、美味い。2つの部位を同時に楽しめるというのも、食の楽しみが倍増する。こういうのは日本でも売って欲しいものだ。

 イングリッシュソーセージは、悪名高いイギリスのソーセージ。ひき肉に、ハーブの風味がこれでもかと効かせてあって、そこまではいいとして、さらに小麦粉で大量に嵩増しされている。そのおかげでドイツ式の(つまり日本で普通に食える)ソーセージが旨としているような、肉のプリプリ感などは微塵もなく、ふにゃふにゃしていて頼りない。ドイツ式の「普通の」ソーセージを期待する日本人からすると「不味い」という評価になるに違いない。ただし、私は結構好きだ。郷に入っては郷に従えの精神で先入観なしに食べれば大丈夫。

 ブラックプディングは、豚の血入りソーセージ。ソーセージといっても赤身の肉はほとんど入っていないようで、脂身と穀物と香辛料とでできているとおぼしい。ねちゃねちゃした食感で、なんとも奇妙な食べ物だ。慣れれば普通に食べられるけど、なくても別に悲しくはない、というのが私の評価。

 ベイクドビーンズは、ケチャップ味の煮豆、といった風なもの。可もなく不可もない感じ。なんとなくこのメニューだけ出身国を間違えているような気がして、調和を乱しているように感じてしまう。

 焼きトマト、焼きマッシュルームは、名称そのままのもの。トマトを焼くというのはなかなかに珍妙な行動に思えるけど、案外美味しい。ピザの具だけを食っているような感覚。焼きマッシュルームは、マッシュルーム自体が日本のものよりも巨大で味わいがあって、これは疑いなく美味しい。真っ黒になるまで焼かれて出てくるけど、別に焦げ臭くはない。焼くとそういう色になるのだろう。品種的にはブラウンキャップマッシュルームというものらしく、名前を聞くとよく欧米のゲームで出る名前だな、と思ったりもする。

 そして今回の一番の驚きは、フライドブレッド、というものだ。今まで経験してきたフルイングリッシュブレックファストでは、この位置にハッシュブラウン(ハッシュドポテト)が鎮座していたんだけども、このB&Bでは、これがフライドブレッドなるものに挿し変わっていた。これははじめての経験だ。フライドブレッドはその名のとおり、薄切りの食パンを、カリカリになるまで揚げただけのものだった。その味わいは「巨大なクルトン」というのが、自分の経験の中で例えるなら最も近い。カリカリサクサクな食感で、かみ締めると油が染み出してくる。スナック感覚の食べ物で決して不味くはない。というか、私はむしろ気にいったんだけど、その一方で、ひとくちひとくちごとの罪悪感がハンパなかった。栄養価的に評価できそうな部分が微塵もなく、カロリーの摂取のみを目的とした食品といわざる得ないからだ。ま、いい経験をしたな、ってところかな。

 このB&Bでは、これらの料理を「アーガ」という調理器具で料理してくれていた。アーガというのは、イギリスの伝統的な調理器具で、ストーブ、オーブン、コンロなどが一体化したものらしい。料理の評判が劣悪な割りに、調理器具には変な伝統があるというところに、この国の奇妙な可笑し味を感じないでもなかった。

スクランブルエッグバージョン

サニーサイドアップバージョン