英国’14: 21.Lowerfield Farmの朝食

 今回コッツウォルズでの滞在先としたB&B、Lowerfield Farmの朝食は、いわゆるフルイングリッシュブレックファストと呼ばれるものだった。

 食堂は厩舎を改造したダイニングでとる形で、そこで食べたいものの希望を述べて、提供される。メニューは、フルイングリッシュブレックファスト以外に、軽めがよい人のためのエッグズベネディクトもどきや、ベジタリアンメニューなどがあったけど、私は常にフルイングリッシュブレックファストを選択した。

 フルイングリッシュブレックファストの内容は、敷地内で放し飼いになっている鶏、または鴨の玉子料理、バックベーコン、イングリッシュソーセージ、ブラックプディング、ベイクドビーンズ、焼きトマト、焼きマッシュルーム、そしてフライドブレッドだ。これにサイドテーブルに置いてあって、自由に取ってよいものとして、パン、フレッシュジュース、ミルク、シリアル、フルーツ、ヨーグルト、などがあり、各テーブルには紅茶かコーヒーがサーブされる。実に盛りだくさんだ。

 玉子料理は好きな料理方法(目玉焼き、スクランブルド、ポーチド、ボイルド)をお願いできるし、使用する卵の個数も1個か2個かを選べる。「鶏か鴨の卵」と言われたものの、実際に出てきたものがどちらだったのかはよくわからなかった。

 バックベーコンは、ロース部分とバラ部分がつながったベーコン、と思えばいいと思う。塩辛くて、固い。が、かみ締めると肉のうまみが出てきて、美味い。2つの部位を同時に楽しめるというのも、食の楽しみが倍増する。こういうのは日本でも売って欲しいものだ。

 イングリッシュソーセージは、悪名高いイギリスのソーセージ。ひき肉に、ハーブの風味がこれでもかと効かせてあって、そこまではいいとして、さらに小麦粉で大量に嵩増しされている。そのおかげでドイツ式の(つまり日本で普通に食える)ソーセージが旨としているような、肉のプリプリ感などは微塵もなく、ふにゃふにゃしていて頼りない。ドイツ式の「普通の」ソーセージを期待する日本人からすると「不味い」という評価になるに違いない。ただし、私は結構好きだ。郷に入っては郷に従えの精神で先入観なしに食べれば大丈夫。

 ブラックプディングは、豚の血入りソーセージ。ソーセージといっても赤身の肉はほとんど入っていないようで、脂身と穀物と香辛料とでできているとおぼしい。ねちゃねちゃした食感で、なんとも奇妙な食べ物だ。慣れれば普通に食べられるけど、なくても別に悲しくはない、というのが私の評価。

 ベイクドビーンズは、ケチャップ味の煮豆、といった風なもの。可もなく不可もない感じ。なんとなくこのメニューだけ出身国を間違えているような気がして、調和を乱しているように感じてしまう。

 焼きトマト、焼きマッシュルームは、名称そのままのもの。トマトを焼くというのはなかなかに珍妙な行動に思えるけど、案外美味しい。ピザの具だけを食っているような感覚。焼きマッシュルームは、マッシュルーム自体が日本のものよりも巨大で味わいがあって、これは疑いなく美味しい。真っ黒になるまで焼かれて出てくるけど、別に焦げ臭くはない。焼くとそういう色になるのだろう。品種的にはブラウンキャップマッシュルームというものらしく、名前を聞くとよく欧米のゲームで出る名前だな、と思ったりもする。

 そして今回の一番の驚きは、フライドブレッド、というものだ。今まで経験してきたフルイングリッシュブレックファストでは、この位置にハッシュブラウン(ハッシュドポテト)が鎮座していたんだけども、このB&Bでは、これがフライドブレッドなるものに挿し変わっていた。これははじめての経験だ。フライドブレッドはその名のとおり、薄切りの食パンを、カリカリになるまで揚げただけのものだった。その味わいは「巨大なクルトン」というのが、自分の経験の中で例えるなら最も近い。カリカリサクサクな食感で、かみ締めると油が染み出してくる。スナック感覚の食べ物で決して不味くはない。というか、私はむしろ気にいったんだけど、その一方で、ひとくちひとくちごとの罪悪感がハンパなかった。栄養価的に評価できそうな部分が微塵もなく、カロリーの摂取のみを目的とした食品といわざる得ないからだ。ま、いい経験をしたな、ってところかな。

 このB&Bでは、これらの料理を「アーガ」という調理器具で料理してくれていた。アーガというのは、イギリスの伝統的な調理器具で、ストーブ、オーブン、コンロなどが一体化したものらしい。料理の評判が劣悪な割りに、調理器具には変な伝統があるというところに、この国の奇妙な可笑し味を感じないでもなかった。

スクランブルエッグバージョン

サニーサイドアップバージョン

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