ストーンヘンジ観光を終えたあと、昼食とちょっとした観光を兼ねて、最寄りの都市ソールズベリーにまで足を伸ばした。ストーンヘンジからは車で15分程度だったかと思う。
都市内の公共駐車場を探し、停める、ということは英国内では初めてだったので、果たしてどうなることかと不安だった。結果としては、何度か迷走しながらも、ナビと標識とを頼りに何とか駐車できたので、ほっとひと安心だ。
ソールズベリー観光の目的は、ソールズベリー大聖堂見学だ。ソールズベリー大聖堂の特徴は、英国随一の高さを誇るらしい尖塔と、現存する4つの写本のうち最良の状態のものといわれる、かの「マグナカルタ」の写本が保管されている、ということにあるらしい。
駐車場から大聖堂まで、地図でみた限りでは、徒歩7、8分といった距離か。標識に沿って、ソールズベリーの街を歩いて進んでいった。
その日は日曜で時間は正午すぎ。途中の街並みは期待していた古風なヨーロッパの街並みと言うよりは、そこそこ近代的なそれで、日曜のショッピングやランチを楽しむ若者や家族連れでにぎわっていた。本当になんの変哲もない日常といった普通の風景に見えた。でもそれが期待はずれだったかと言うとそんなこともなく、いかにも地方都市の日常、というもの体感するのもまた興味深かった。
そんな日常の風景も、歴史のありそうな古い城門のようなところを抜けると一変した。街並みが一気に古式ゆかしい雰囲気に変わったのだ。そこからすぐに、芝生の広がるエリアが現れたかと思うと、その中心にソールズベリー大聖堂が鎮座していた。
緑の芝生の中、青空に屹立する尖塔は、たしかに高くそびえ立っていて美しかった。この美しさは、尖塔自体の高さによるものもあるだろうけども、周囲に映りこむものがない独立した立地であることが、より一層その大きさ、高さを強調して、美しさを演出できているように思われた。
大聖堂の周りの芝生エリアでは、多くの地元住民と思しき人たちが、おもいおもいの場所にシートを敷いて、日光浴やランチに興じていた。またこの日は大聖堂でなにやら軍楽隊の演奏イベントがあったらしく、その演奏の周囲にも人が集まっていた。どうもこのエリアは、地元民の憩いの場としての機能を持っているようだ。ここでも日常を垣間見る事ができて、これが旅の醍醐味だよな、と実感した。
大聖堂の内部で印象的だったのは、聖堂そのものや、マグナカルタもよかったんだけども、なによりも回廊の雰囲気だった。聖堂そのものは、まぁなんというか、いろいろなところで似たようなものは見ている。マグナカルタは「教科書のあれや!」というような感動こそあれ、紙一枚だし、写本だし、ってことで経験値は溜まるものの、それ自体のもつ力はさほどでもない。
でも、回廊の雰囲気は、それ自体が美しく、好みに合った空間だった。回廊と中庭とを隔てる構造物の少ない開放的な回廊では、夏の日差しをさけつつも、夏の明るい日差しが織り成す、中庭の風景を鮮やかに目で楽しめ、しかも吹き抜ける風は冷たく心地よかった。回廊の設計と、季節と、天気と、時間とが、見事にマッチした結果の、この光景だったのだろう。
この回廊をすっかり気に入ってしまった私は、その回廊この一角が、併設された売店で売られている飲食物を飲むためのカフェスペースになっていたので、街中のレストランにいく計画を撤回して、そこでランチを取ることに決定。
回廊の雰囲気を楽しみながら軽食を摂り、しばし旅の疲れを癒して、次の目的地へ向かう英気を養ったのだった。