海賊、大航海時代、カトラス、マスケット銃、ガレオン船・・・。
こういったフレーズで彩られる物語は、やはり男の子としては心弾むわけで、古くは「宝島(スティーブンソン)」から、現代のちびっ子に大人気「ワンピース(尾田栄一郎)」まで、絶えることなく人気を保ち続けてきた一大分野なのである。
ってなわけで、「ネプチューンの剣(ウィルバー・スミス)」を読んだ。
まさに正当派の海洋冒険物と呼ぶにふさわしい、綿密なリサーチをもとに書かれた本作は、史実に忠実(?)な、シビアで血なまぐさい大航海時代後期の世界観を、そこそこリアルに提示してくれて、「『宝島』とか好きだったけど、『ワンピース』はガキっぽすぎてちょっと・・・」、という貴方に強くおすすめである。たぶん。
・・・しかし、こういう、単純明快な冒険活劇は、日本では全然流行らないのが残念だ。とくに中世以降近代以前を舞台にした本は、非常に少ない。かろうじて、江戸時代などの時代物がこれにあたるんだろうけど、和風一辺倒では何ともバリエーションが乏しい。
思うに、日本では西洋中世~近代という題材は、活字の世界では「子供っぽい世界」という括りになっているように見える(その割に、ハリウッド映画に対しては非常に寛大だ)。児童向け図書やマンガ、TVゲームの世界が、この世界観を多く採用しているせいではないかと思うんだけど、非常に残念な話である。「西洋中世」という時点で「幼稚」の誹りは避けうべくもない、という危機的状況だ。そういった意味で、この世界の大人の本を書き続け、あまつさえ直木賞まで受けた佐藤賢一などは、(当たりハズレが大きいものの)得難い才能といわざるを得ない。
ってなわけで、「子供っぽい」世界が舞台の「ネプチューンの剣(邦題が最低・・・)」。偏見なく、考えなく、一気に読んでスカッと爽快な一冊でした。