カテゴリー別アーカイブ: リアル生産スキル向上計画

リアル生産スキル: 第10回

 さて。前回までで、ブレード面の削りだしはあらかた終わったので、これからはブレード面を含む鋼材表面の研磨工程だ。この研磨が終わったら、ほぼその状態のまま焼入れにだし、焼入れ後はそう易々とは切削できない硬度になる。ある程度の研磨はできるものの、大きな変更は不可能になるので、この工程が最後の形成工程と言える。

 この工程でやることは、基本的には表面の傷取りと、磨きだ。本来そう大きな傷はついていないはずなので、基本的には「磨き」要素が強いのかもしれない。けれども私においては、前回述べたように「ヤスリで傷を消すことをあきらめた」という部分が多いため、まだ比較的大きな傷が多数残っている。だからこの工程で、わりと深めの傷取りもしなければいけないのだ。


オイルストーンでトライ

 ということで、オイルストーンなる道具を仕入れてみた。出費2000円増だ。

 オイルストーン、日本語で言えば油砥石は、その名のとおり、油を使って砥ぐ砥石だ。日本で砥石と言えば、「ヤマンバが山小屋で夜な夜な出刃包丁を砥いでいるシーン」でおなじみの水砥石なわけだけども、アメリカでは砥石と言えば油砥石らしい。この辺は文化の違いであり、その特性うんぬんも色々あるんだろうけども、私はよく知らない。

 特性うんぬんではなくて、今回私は単純に、「ヤスリよりも切削力が低く、耐水ペーパーよりは高い」というラインの研磨道具として、オイルストーンを試してみようと思っただけなのだ。それならば、目の粗い耐水ペーパーでも同等だったのかもしれないけど、耐水ペーパーは切削力が衰えるたびに使用箇所を動かす必要があって、「ヤスリの深い傷を消す」という、いかにも時間の掛かる今回の作業を行うには、大変面倒くさいことが想像された。そこで、少しでも楽をしたいとばかりにオイルストーンに逃げてみたわけだ。

 ・・・ん? 手間を惜しんじゃいい仕事は出来ないって? 全くですな、うへうへ。

 ってことで、これよりオイルストーンによる傷消し&研磨工程の開始だ。軽く1時間程度やっただけでは、全く傷が消えない。これは今までで一番タフな工程になりそうだ。

リアル生産スキル: 第9回

 ってことで、RPGのやりこみプレイができない私は、ブレード削りもそこそこで終了。いわば、キャラ育成を極めることなくAltに走る心情といえなくもない。


ブレード削りだし完了

 仕上がりは・・・うーん。ベベルストップの部分(ブレード面と、ブレードじゃない面の境界線)にメリハリがなくて、素人っぽさが前面に出てしまっているなぁ。本当はもっと、リカッソの部分(ベベルストップからヒルトまでの部分)を広く取るつもりだったんだけど、削りすぎ>修正>削りすぎ・・・を繰り返して気が付けば、猫の額の如きリカッソになってしまった。しゃーないな! 放置!

 また、ベベルストップの位置も、実は表裏でずれていて、刃を自分に向けてみるとさらに醜い仕上がりになっている。でも、もうリカッソに手を加えるだけの面積が乏しいので、手を加えるのが怖いから、これまた放置だ。

 さらにさらに、ファスナーボルトの穴も微妙な位置にあいてしまった。ぬう。でも放置!

 全部「そういうデザインなのさ」と言い張ればいいはずだ!

 これからは、ブレード面を中心に、鋼材全体についたヤスリの傷を消していくとともに、表面の仕上げをしていくという、研磨工程だ。これまた、地道な忍耐力勝負の予感。

リアル生産スキル: 第8回

 ついに正念場のブレードの削りだしに入った。


ブレード削り開始

 素の鋼材のサイズは、3mm(厚さ)×25mm(幅)×250mm(長さ)なので、外形を削りだした状態のブレードの断面図は、3mm×20mm程度の長方形になっている。これを、上底(刃側)が0.5mm、下底(峰側)が3mm、高さが20mmの台形にしてやるのが次の作業だ。

 刃側の側面に、中心から0.5mm分の線をディバイダでけがき、峰側の頂点からこの線までが一直線でつながるように、断面で言えば三角形部分を取り除くようにヤスリで切削していく。

 と、やることは単純なんだけど、これは熟練工の腕前が必要な作業だとわかった。


ヘボい図解。クリックで拡大

 とにかく平面が出ない。どうしても切削面が丸みを帯びてしまう。最終的に目指しているブレードの傾斜角どおりにヤスリを固定して削れば、もちろん切削面はその角度どおりの平面になるわけなんだけど、人間の、しかも素人の手でやっているから、どうしてもヤスリを動かす角度が安定しない。そうすると、切削面が丸みを帯びてしまうのだ。

 また、終盤近くになると今度は、ヤスリの傷が消せないという問題も発生してしまった。ヤスリの構造上、傷は当然つくものなんだけど、引っかいたような深い傷が何箇所かに残ってしまうんだよね。傷のない箇所もあるから、多分、力の入れ方や方向でついたりつかなかったりなんだろうけど、今ひとつその辺を体得できず、ヤスリで傷を減らす努力を最終的には放棄せざるを得なかった。消そうとすると、消せたと思ったら、新しく傷ができてしまうのだ。要修行ですな。

 で、結局この工程を両面合わせて8時間ほどやったんだけど、そこで心が折れた。まだまだ丸いし、傷もあるけど、先に進んでしまおう。

 まずは1本完成させてみたいという素人判断でGO。

リアル生産スキル: 第7回


外形の削りだし完了

 見てのとおりだ!

 苦節・・・4、5時間? の苦労の結晶がこれ。うむ、やっとこさ、「謎の金属板」から「ナイフの原型」になった気がするな。

 まだ、ヒルトをはめる箇所のくぼみがテキトーなのと、ファスナーボルト(ハンドル材と本体をつなぐねじ)を入れるための穴があいていないんだけど、ほぼこんなとこかな。曲線を美しく演出するのが難しくて、優美なラインを描けなかったけども、まぁ無骨なハーフリングナイフということでいいとしよう。ジャムジャムを切るのに最適。

 これからは最大の難所になる(予定)の、ブレードの削りだし工程だ。

リアル生産スキル: 第6回


輪郭がみえてきた

 輪郭の削りだし開始。

 ニコルソンのヤスリを駆使して、ひたすら人力でゴリゴリごり。砂鉄状の金属粉が作業台の上や周辺に降り積もっていく。室内でこんな作業をしているくせに、比較的潔癖症な私は、部屋が汚れるのがイヤでちまちまとそれを掃除するんだけど、大変面倒くさい。

 そこで、ビニール袋にいれた磁石を用意して、吸い付ける作戦を取ったんだけど、全然効果なし。余計面倒くさい。

 で、結局ホームセンターで、1,980円の安物ハンディクリーナー(充電式手持ち掃除機)を購入して、こまめに吸い取ってやることにした。またしても出費だけども、うむ、これは便利。微細な鉄粉なんぞを吸っていると、たちまちぶっ壊れるだろうけど、安物だから使いつぶそう。

 しかし、削るに当たっては、やはりけがいた線がよく見えないということがわかった。きっちりけがけていなかったことと、青マジック作戦が甘かったのの双方が原因だろう。

 そこでけがく作戦は放棄して、鋼材に型紙を貼り付けて削ることにしてしまった。どうせ型紙は読本のパクりなので、いくらでも量産できる。これでいけるはずだ。

 で、毎日30~1時間くらいこつこつ削ること1週間弱。合計・・・4、5時間かな? だいぶ型紙の輪郭と、その裏にある鋼材の輪郭が一致してきて、平ヤスリで削れる部分の大半を削り終えるに至った。微妙なディティールが再現し切れていないけど、こだわるのは次回以降にして、今回はそこそこでとりあえず完成を目指すハラだ。

 あとは、ヒルトをはめる溝や、平ヤスリのとどかない凹型の部分を丸ヤスリで削って、外形の削りだしパートはフィニッシュかな。