MMOフライトシム、ファイターエース(FA)のサービスが終了になる、という内容のメールが運営元より届いた。非常に短期間ではあるものの、私はFAをプレイしていた時期があったので、私のアドレスがメーリングリストに登録されていて、届いたのだと思う。
そのメールの文面が、なぜか私の心をいたく打った。
おそらくそのゲームの歩んできた歴史と、私の歩んできた歴史とが、同じ道の上にあったからだと思う。メールの文面を無断転載するのはどうかと思ったけど、FAの公式サイトにも掲載されているので、問題がないと判断し、その一部を紹介したい。
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私の友人たちへ、そして飛行仲間の皆様へ
喜びと悲しみの中で、今日私は、このメッセージをしたためています。
多くの皆様のため、このファイターエースは13年間にも渡って友情と学びの旅を続けてきました。この私にとっては、技術と哲学の両面において、大変な仕事、魅惑的な友情関係、世界旅行そして多くの知識に満ちた、20年の伝説でした。そして全ての素晴らしいものと同様、ファイターエースにもその終わりの時があります。
私たちが住む世界は、ファイターエースの登場当初と比べて、大きく様変わりしました。ファイターエースは、Grand Theft Auto や Bejewelled といった多くの人気ゲームより、多くの歴史を重ねてきました。DVDが登場したのはもう昔のことですが、ファイターエースはそのDVDとほぼ同時期に誕生したゲームなのです。その当時は、まだ Google も、MySpace も、iPod も Facebook も存在していませんでした。それどころか、私がこの仕事に取り組み始めたのは、Jerry Yang 氏が Yahoo! を作るより前のことだったのです。あの Tiger Woods も、まだPGAツアーには参加していませんでした。
この間の世界の変化の中で、ファイターエース・プレイヤーという立場から見て、一つの不幸な点は、PCやそのユーザー、そしてPCの標準的な周辺機器が変化したことでしょう。15年前は、PCの隣にはごく当たり前のようにジョイスティックが並んでいました (訳注:海外においては、昔は操縦桿タイプのジョイスティックがPCに標準添付されていた例が多かったようです)。しかし今日となっては、ジョイスティックを所有している家庭はあまり見なくなりました。15年前は、大人向けのゲームではPC用が主要なマーケットでした。しかし今日では、家庭用ゲーム機や携帯機へとその中心がシフトしています。今では、PCはソーシャル・メディアの利用手段としての性格が強くなり、ソファーに腰掛けてプレイできる家庭用ゲーム機のゲームでは、PC用とは大きく違った設計が要求されます。このような変化には抵抗を感じる人も居るかもしれませんが、しかしやはりこのような進化は、私たちの手を広げて、多くの利益をもたらしてくれるものです。そして、私の視点から見て、本当に残念だったことは、人々の、航空、そしてより広範には技術や科学に対する、関心の変化でした。
私は1969年生まれなのですが、私たちが成長してきた時代には、空を飛ぶことは驚くべきことだし、パイロット達は英雄。みんな、そう思って育ってきました。今では、飛行機という存在は、あまりにも窮屈な席に不幸な魂を押し込めるための言い訳のような存在で、パイロットはバスの運転手よりやや上程度の位置付け。多くの人がそのように思っています。かつては、工学や科学は興奮、成長、そして機会に満ちた分野でした。しかし今では、工学や科学の啓蒙から離れて、部族生活やシャーマニズム、迷信や誤った認識などに傾倒するようになってしまった多くの人達の中には、科学者や工学者に対し不信感を抱き、蔑視しているような風潮さえ見られるようになってしまいました。
このような技術や消費傾向、関心の変化は、プレイヤー層の固定化を招きました。現在の登録ユーザーの平均登録期間は、約67ヶ月、実に約5年半です。マイクロソフトからVR-1へのサービス移転 (訳注:ファイターエース2.xはマイクロソフト・ゲーミングゾーンで運営されていました) がなければ、これはより長い期間となっていたことでしょう。これは、古参プレイヤーの皆様には長らくのご愛顧を頂いているものの、新規プレイヤーの数が極めて限定的であることを意味しています。その他の判断材料からも、同様の結論が導かれます。この状況では、古参プレイヤーが去っていっても、新規プレイヤーによって補填されることがなく、プレイ人口の減少に直結しているということです。
その一方でこれは、私たちが、非常に特別で結束力の強いコミュニティを持っている、ということでもあります。私たちは、多くのことを共有してきました。このFAの友情に満ちた空で一緒に飛行してきました。3つの戦争と、2つの経済崩壊を体験してきました。子どもが生まれ、成人する姿を見守ってきました。いくらかの大人達が、子供に戻る姿も見てきました。そして、多くの良き友人達の死を見送ってきました。
ファイターエースのサービス終了
そんな彼らと同様に、ファイターエースは本年8月1日に、皆様の記憶の中の存在と化します。4月19日(月)には、3ヶ月および6ヶ月フライトチケットの販売を終了させて頂きます。その2ヶ月後の6月19日(土)には、1ヶ月フライトチケットの販売も終了となります。そして、7月19日(月)から 7月31日(土)までの最後の12日間は、これまでの長らくのご愛顧への感謝を込めた特別無料期間とさせて頂きます。そして8月1日(日)、ファイターエース・サーバーは稼働を終了します。
(以下略)
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読んでいて泣きそうになるような、それでいて微笑ましくなるような、妙な感じを覚えた。おそらく共感という感覚が最も近いのだと思う。
FAは、1のベータの段階では面白いとは思えず、2の中期においてはコミュニティに溶け込めず、いずれも長期間プレイをすることに耐えなかった、私にとっては「いまいちな印象」のオンラインゲームではあった。しかし、それでもFAはオンラインゲーム黎明期から、その名を広く知られたゲームであり、今まで共に歩んできた盟友であると、こちらが一方的に認めているタイトルの一つでもある。
だから、サービスが終わっても私は困らないし、残念だと思う気持ちも正直少ないけど、心からお疲れ様と言いたい。
Fly Dukedomはファイターエースの冥福をお祈りいたします。