2022年3月16日深夜に発生した地震、およびそれに付随した停電の体験の記録をしておく。
こういった「不幸にあった方もおられる災害」に関することを、面白おかしく(・・・はないけど別に)書くことに是非はあろうけども、この場は閲覧者もそう多くなく、というかかなり限定的であり、私にとってほぼ言葉そのままの意味の日記帳でもあり、あとで見返すべき体験や思考を書き留めておくための場でもあるので、ご容赦いただきたい。
さて。
それはPCゲームをプレイ中の事だった。
いや、もっと厳密に言おう。レインボーシックスシージのアンランク戦の対戦中のことだった。イヤー7のアップデート間もない頃。マップは銀行。一緒に遊んでいたのはT氏とU氏。そういうシチュエーションで、まずは地震の弱い振動が始まった。
初動の揺れはか弱く、VCで「ゆらゆら揺れてる」「震度は低いな」「しかし揺れの時間が長いね」的な会話をしつつも、ゲームを続行していた。この程度の揺れは日本人にとって日常茶飯事。この段階では緊急地震警報がスマホから鳴り響くこともなく、スルーして遊び続けることに問題は感じていなかった。むしろそんなエクスキューズ的なことをVCで話もしていた。「揺れてるけどスマホの『ヴーウヴーウッ!ヴーウヴーウッ!』がないから問題ないでしょ」。
が、次の瞬間。
いきなり私の視界を暗黒が支配した。
PCはおろか家のシーリングライト他、すべての光源が一斉に消えたのだ。これは・・・停電か。理解するのに0.5秒を要した。
しかし、この程度の揺れで停電するの?おかしいな。
そう訝しんだとおもったら、それに遅れること数秒後。突然、激しい振動がやってきた。
そう。強い振動より、停電が先だったのだ。確かにそうだった。
そしてほぼ同時に、緊急地震警報がスマホから鳴り響いた。ヴーウヴーウッ!ヴーウヴーウッ!
この時点で私の視界は依然として真っ暗。なにもみえない。助かったのは手元の充電台の上に、充電率100%のスマホがあったことだった。
スマホを光源としつつ、強い揺れがおさまるのを、なすすべもなく待った。暗闇の中で揺れ続けるというのは、なかなかにストレスフルな経験だった。
どたん。なにかの激突音がデスク上でした。おそらく重たいクリスタルの置時計が倒れたのだろう。こいつはよく倒れる。いつものことだ。大丈夫。
がっしゃーん。台所で何かが落下した音がする。何が落ちたかな。大丈夫だろうか。確認したいけど、今はそれどころではない。
やがて振動が収まると、暗闇と静寂とが場を支配した。
うーん、どうしようかな。
スマホのライト機能でなんとか視界を確保しつつ、まずは家の中の被害状況をざっと確認した。これは思ったよりも軽微で、台所の落下音も、水きり台の上の、まな板とステーキナイフが落下していただけだった。割れ物である陶磁器やガラスの食器類などは、落下の被害がなく一安心。
生活機能を確認してみると、もちろん電気は停電しているので使えなかった。付随してモデムが動かないためネットも切れている。その確認の過程で、念のためにブレーカーは落としておいた。そして水道も停止してしまっていた。ポンプが給電されていないのだろう。ということはトイレもダメだろうけど、タンク内の水は貴重品になりえるので、無駄にテストはしないでおいた。ガスについても、下手なことをして下手なことになっても困るので、漏れていないことだけを確認し、着火確認などはしないでおく。
となると、あとできることは・・・ないな。真っ暗だし。スマホは使えるけど、唯一の光源であるスマホのバッテリーを無駄に食うことは避けたいから、この状況でスマホをエンタメ目的には乱用はできないし。
って、光源か・・・。
そういえば、引っ越しの際にダンボール箱に入れたまま、天袋のどこかにしまい込んでいるキャンプグッズを漁れば、キャンプ用のランタンなんかが見つかるはずだな。真っ暗で暇だし、捜索隊の出動といくか。
そして見つけ出したのは、単3電池で稼働するランタンと、同じく単3電池で稼働するヘッドライトだった。
エネループ運用を快適にするために、できるだけ単3電池を動力にするアイテムに統一していた、キャンツー現役時代の私をほめてやりたい。単3のエネループは家に大量に備蓄してあったので、すぐにこれらを使用することができた。
おお、キャンプグッズ、つええ。
さすがに電気のない世界での運用をはじめから想定しているだけあって、キャンプグッズの使い勝手はよかった。ランタンは周囲を煌々と照らしてくれるし、なによりヘッドライトはハンズフリーで行く手を照らしてくれて、暗闇における活動能力を飛躍的に上げてくれた。
これでさらにもう一度家の中を探索し、異常がないことを再確認することができた。スマホを光源ではなく、情報ツールとしてのみ使うことができるようにもなった。
異常なしの確認を終え、光源も、情報源も確保したら、割と安心してしまった。
ここで寝てもよかったんだけど、可能な限り停電の復旧までは起きておいて、本当の安心を得てから寝たい。というか、復旧の瞬間に立ち会いたい。そう考えて寝もせずに待機をつづけたんだけど・・・やっぱり暇だった。
どうしようか。
で、おもむろに始めたのは、日課のフィットボクシング2だった。
アホである。
暗闇の中で、ふっ、ふっ、とジャブ、アッパー、ストレートを繰り出す私。のんき極まりなし。
30分ばかりプレイして、デイリーエクササイズを終えた。体が温まった。と同時にじんわりと汗をかいたが、水道が出ないので洗い流せはしない。そうだった、水道でないんだった。仕方がないので、汗ばんだ手のひらだけ、ウェットティッシュで拭っておいた。
そして冷静に考えると、今は運動直後で体温が上がって暖かいけど、汗の蒸発とともに体が冷えることを考えると、まだ夜は冷え込むこの時期には、問題のある行動だったのかもしれない、と思い至った。とはいえ、まぁ、羽織る服はたくさんあるし、さすがに凍死するわけでもなし、自らを不問に処すことにした。
この時点で地震から1時間近くが経過しており、Twitterではあちこちで復旧報告が上がり始めていた。もう少し待てば、我が家も復旧するだろう。そう楽観的に考えることにした。
復旧までの間に、せっかくの非日常の世界なので、家の外に出てみることにした。が、エレベーターが動いていなかったので、非日常の世界を歩き回ることは、すぐに断念した。階段の上り下りはさすがにだるい。マンションの上から街を遠望するに留めた。
マンションから見下ろす世界は、街路ひとつを挟んで、停電している真っ暗なエリアと、いつも通りの不夜城のような明るいエリアとに、くっきりと分かれていた。私のマンションは、残念ながら真っ暗なエリア側。明るいエリアに羨望のまなざしを送らざるを得なかった。
真っ暗なエリアでは、街灯が消え、信号機すらも消え、コンビニも真っ暗。観たことのない景色が広がっていた。東日本大震災の時はこの家に住んではおらず、輪番停電もないエリア住まいだったからね。
そしてやがて電力が復活した。
この時、私は家の中に戻ってソファに寝転がり、スマホでウェブの情報を漁っていた。ふと気が付くと窓の外が、家の中よりも明るかった。窓から外の世界を見てみれば、街灯も、信号機も元通りだった。
そこで、家のブレーカーを上げてみると、無事通電した、という次第だ。
そのあとは、家の各所をチェックし、問題がないことを確認できたので、おとなしく就寝。困ったことながらも、少しワクワクする夜は、ひとまず幕を下ろしたのだった。
教訓としては、水の備蓄も大事だけど、「充電されたエネループが十分にあること」が電気頼りの生活においては、バカにならない安心感を与えてくれるとわかった。これを機に、家のエネループを今一度すべて充電しておいておこう。