日記: 8月3日(2017年)

 洗濯用洗剤は、10年以上コンパクト粉末洗剤タイプの「部屋干しトップ」を使い続けてきた。

 幼少期にアタックの「コンパクト粉末洗剤革命」に触れた世代としては、洗剤の大正義はコンパクト粉末タイプだ、と思っていたということもあるし、基本的に部屋干しの私にとって、「部屋干し」の名に恥じぬ生乾き臭の抑制力は魅力だったからだ。

 一度魔が差して、「部屋干し」に特化していない、普通のコンパクト粉末洗剤に切り替えたことがあったけど、見事に生乾き臭に辟易させられたものだ。それ以来、部屋干しトップ信者としての生活を続けていた。この失敗で、洗剤を切り替えることそのものに消極的になってしまったのだ。

 それを今回、おもいきって液体洗剤タイプの「アリエール・リビングドライ・イオンパワージェル」にしてみた。やっと1度の失敗による呪いが解けた、ということかもしれない。

 結果から言うと、生乾き臭もなく、自然に利用できた。悪くないな、という感じだ。リビングドライ、は要するに部屋干し。液体洗剤タイプの部屋干し用ということだから、まぁそりゃそうか、というところだ。

 正直、洗浄力についてはよくわからない。一般的には粉末洗剤のほうが洗浄力は高いはずだけど、そもそも社会人の一人暮らしでは、衣類がそれほど汚れないので、要求される洗浄力が低い。仮にも洗剤を名乗るものであれば、おそらくなんでも十分な洗浄力があろう、というところだ。

 大きな違いは、洗濯物につく芳香剤の香りだろうか。

 洗いあがった洗濯物が、「部屋干しトップ」はほぼ無臭だったのに対し、「アリエール・リビングドライ・イオンパワージェル」はかなり強く甘い香りがする。グレープジュースのようなにおいだ。不快なものではないからいいけど、気になる人は気になるかもしれない。

 ともあれ大失敗はしなくてよかった。買ってしまった以上、これからある程度の期間はずーっとこの洗剤を使うことになるだろうけど、仲良く付き合っていけそうだ。

日記: 8月2日(2017年)

 はい、まだまだ困ったときのスカイリムですよ。

 去年の11月末ごろまで遊んでいたキャラクターで、DLCのドラゴーンボーンを遊び始め、無事メインシナリオらしきものを終えた。

 シナリオの感想を述べたいところなんだけど、中途半端に進んだ状態で長期間中断していたから、正直ストーリーの流れがよくわからなかったんだよなぁ。だからラスボスもなぜ倒さなければならないのかもわからないまま、勢いで倒してしまった。こんなことでいいのだろうか。うむむ。ま、いいか。

 このキャラは鍛冶・錬金をしていない割にはなかなか強く、難易度的には余裕だった。すべての場所にどすどすと走って乗り込み、ズンバラリンと切り捨てるだけで終わるゲーム。あぁ、この辺の単調さが中断した原因だったかもしれないな。再開直後だから、今はなんとも思わないものの、クエストを重ねれば飽きそうではある。なるほど。

 ともあれ、DLC「ドラゴンボーン」のメインシナリオは終わった。DLCの舞台のソルスセイム島には、まだ多くのサブクエが残っているようだから、だらだらとその辺をこなしてゲームライフを維持しながら、次の別の主力ゲームのリリースを待つことにしよう。

日記: 8月1日(2017年)

 ルンバが充電されなくなった。

 我が家では現在のマンションに越してきて以来、ルンバを前提にした家具配置を行い、家の床掃除の95%をルンバ任せ、という体制を敷いている。ルンバなくして文化的な生活は営めないレベルだ。「ルンバは俺の嫁」といっても過言ではない。

 そのルンバが、突然息をしなくなってしまった。おいぃぃぃ!

 ホームベース(充電ドック)にセットしても、充電マークがつかない。内部電池も使い果たしたようで、ボタンを押しても無反応。死んでしまったのか、お前・・・。

 困ったときのウェブ頼み。ってことでウェブで調べてみると、ルンバには充電接点の不具合があるらしい、ということが分かった。その不具合というのは、充電熱で接点周囲の樹脂が軽く融解し、接点が徐々に陥没していき、最終的には接点が接しなくなる、という恐ろしいものだそうだ。

 マジかよルンバ。今まで全幅の信頼を寄せて大絶賛していたけど、ちょっと信頼度下がったぞ。

 しかし熱融解って、怖いな。火災案件じゃないか。まさか「ウチの嫁」までそんなことになっているのか、と思って我が家のルンバの底面を見てみると、うーん、陥没しているかというと、どうだろうなぁ。してない気がするな。そうだよな、ウチのにかぎってそんなアバズレじゃないはずだ。

 ウェブで見た接点陥没例の中には、ホームベースに置いた状態でケツだけ少し持ち上げて傾けてやると、接点が接して充電されることがある、というようなことも書いてあった。陥没はしていなかったものの、試しにケツを持ち上げてみると、チカッと充電ランプがついた! おお? こ、この尻軽!

 その後いろいろと接点をうにゃうにゃやると、接点が接していても、接し方によって充電されたりされなかったりする、ということがわかった。つまりこれは内部の異常という重大なことではなくて、単なる接続不良ということのようだ。陥没しているわけではないが、接点の汚れかなにかによって接続不良は起きている、と。とりあえず症状が軽微そうだとわかって一安心だ。

 ホームベース側、本体側、双方の接点を清掃してやり、セットしてみたところ、無事に充電が始まった。ふー、一時はどうなるものかと思ったけど、やれやれだ。

LoL: 夏休み

 はい、夏休みの季節です。

 ってことで昨日はLoLで「いかにも夏休み」といった出来事がありましたので、ブログに季節感を出すべくご紹介。

 特に何もなく普通に試合開始。私はmid。

 レーン戦開始。対面はちょっと不利マッチアップ。中盤以降までは勝てない。そこまでで有利を作られるとスノーボールされそうだ。序盤はガンクに期待しつつ地道に安全にCSを取っていこう。

 と思ったら、自陣ジャングル内で猛烈なピン。なにかが起きたらしいがすでに事後で、マップや画面上からはよくわからない。少なくとも敵がインベードしたとかではなさそうなので、レーン戦に意識を戻す。

 ・・・あ、どうやらsupが赤バフのリーシュ時にとどめを刺してしまったようだ。あらあら、JGもかわいそうに。でも、当面関係はないな。

 引き気味にレーン戦を続ける。ガンクしやすいよー、おいしいよー。と思っていたらJGが颯爽と登場。

 わかってるねー、と合わせてやるも、しかしJGはまったく戦うそぶりもみせず、下がる対面midと一緒になって、仲良く一直線に敵タワー下にダイブし、そして死んだ。

 ええええええ!?

 対面midにおいしすぎるキル献上。よく見ればJGのレベルはまだ1。赤バフを取り損ねた足で、そしてそこでブチギレたテンションで、最寄りのmidに飛び込み自殺をしに来たらしい。

 おかげで対面は序盤で安直に有利をゲット。お、俺がなにをしたってんだよ・・・。なにもmidにこなくても・・・。

 そして、そこから彼の暴走は始まった。

 リスポーンする度に、敵のbotタワーに突撃。そして死亡。以下繰り返し。

 飛び込み先をmidからbotに修正した点は評価するが、しかしキルを献上すること8回。スコアは0/8。開始数分にしてもうこの試合は終了がほぼほぼ確定した。

 チーム全体に暗い雰囲気とあきらめムードが漂うも、早期降参できる時間までまだ10分近くある。仕方がないので各レーナーは黙々とファームを続けた。

 そんななかで見かねたADCが、ついに口を開いた。

 ADC「バフとられたから怒ってるの?」
 JG「そのまえにいうことがあるだろ」
 私「(ぶほっ)」

 こ、これは、夏キッズ!

 そうかー、そういえばそんな季節かー。もうこれは負け試合だとあきらめていたけど、この展開は違う意味で面白くなってきたぞ。さぁ、supよ。せめて面白く返してくれ。あわよくば大舌戦を見せてくれ。

 しかし。

 sup「(無言)」

 こ、これは、外国人!

 どうやら日本語を理解していない。ここまで口を結んで溜め続けたJGの怒りが、いざ口を開いても届かない。バフを取られ、しかし自分からチャットでは咎められず、トロール行為を通じて怒りをわかってもらおうと健気に行動し、そしてついに怒りを表明する機会を得たのに! しかしそれがsupには届かなかった! 残念!

 ADCはそれでも頑張る。

 ADC「もういいでしょ」
 ADC「まだワンチャンあるよ」
 私「(ねーよ)」

 すごいな、このメンタル。見習うわ。私はもう完全にあきらめ、練習試合だと割り切って、ひたすらCSを取るマシーンとして、自分の世界に閉じこもっていたというのに。しかもJGを決して咎めはせず、あくまでも母親のようにやさしく説得する姿に、おじさんの目頭も熱くなった。

 しかしそれでもJGは機械のように繰り返す。

 JG「そのまえにいうことがあるだろ」
 JG「そのまえにいうことがあるだろ」
 JG「そのまえにいうことがあるだろ」

 お前はそれしか言えないんかーい! ADCのやさしさわかったれよ! 私は自分の世界にいるけどな。

 一方そのころ我らのtopは、黙々とソロキルを2回上げ、着実に有利を築いていた。おぉ、お前も自分の世界に入ったか。そうだよな。通じ合うtopとmid(一方的)。

 そんなとき、おもむろにtopがbotにテレポート発動した!

 え? お、お前、自分の殻をついに破るのか。俺たちは自分の世界で満足するんじゃなかったのかよ。俺を置いていくなよ。お、俺も行くよ!

 タイミングを合わせて私も発動! 必殺、ダブルテレポート! ひきこもりから脱皮した我らの力を見よ!

 はい、3キルゲット。botタワー2つゲット。ドラゴンゲット。

 ・・・あれ? これ勝つんじゃない?

 そう思ったのか、ここでゴソゴソとおもむろにJGも稼働開始。目の前にぶら下げられた勝利の美酒の前に、簡単に主張は曲がったらしい。

 お、お前というやつは・・・。

 その後、各レーンは順調に有利を広げ、さらには中盤からよみがえったJGがなんとキャリーをし始め、終わってみれば「圧勝」という形で試合は終わったのだった。

 試合後のリザルト画面でもJG君は持ち前の腐れ根性をいかんなく発揮して、

 JG「よwwwっわwwwwすwwwwぎwwwww」

 と相手チームをあおることを忘れない。本当に、お前というやつは・・・。

 しかしワンチャンあったなー。ADCごめんよ。JGの復帰も君の頑張りが彼の心を癒したおかげだ。

 試合評価でADCに「メンタルマスター」を送りつつ、JGにはそっと「AFK」「暴言」「意図的なフィード」を送っておいたのでしたとさ。願わくば彼がサモナーズリフトから抹殺されますように。

 以上、夏を感じていただければ幸甚です。

日記: 7月28日(2017年)

 「夏休みだ。読書感想文の季節だ。ってことでボクの好きな本を紹介する」

 というようなネタの記事を見た。おお、実に面白そうなネタなじゃぁないか。よしよし、恥も外聞もなくアイデアをパクって、私も書こうぞ。

 ってなわけで、蝿さんおすすめの10冊をご紹介。普段から本をそんなには読まない人向けに、単純に楽しく、かつ、それほどボリュームのないものを中心にチョイスした。盆休みに読め!

■ 王妃の離婚

 佐藤賢一(著)
 集英社文庫

 1498年フランス。国王が王妃に対して離婚裁判を起こした。田舎弁護士フランソワは、その不正な裁判に義憤にかられ、孤立無援の王妃の弁護を引き受ける……。直木賞受賞の傑作。

 1冊挙げろと言われればこの本を推す。

 中年のインテリ崩れが、インテリとしての自分と青春とを取り戻す物語。最初から最後まで弛むことなく、知的な刺激を感じ続けたまま読み進めることができる傑作中の傑作。切った張ったではなく、言葉と理論の戦いでここまで熱い展開はなかなか見られない。

 沈黙よりも雄弁こそが金だと信じる人におすすめ。討論とかが好きで、掲示板バトル上等、という人におすすめ。言い争いは面倒くさい、うるさい、だまれ、もういい、って人は面白くないのかもしれない。とことん言い合うほうが好きな人向け。

 この作者の本は、初期のころのものが勢いがあっていい。エンタメ勢としては、あとは「傭兵ピエール」「双頭の鷲」を読んでおけばよろしいかと思われる。これらはいずれ劣らぬ名作。

■ 楽毅

 宮城谷昌光(著)
 新潮文庫

 古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山国宰相の嫡子として生まれた楽毅は栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。人が見事に生きるとは、どういうことかと。諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。

 春秋戦国に強い著者、宮城谷昌光の作品の中でも一番輝いていると感じられる作品。

 歴史に名高い軍神楽毅の生涯を描いたもの。全4巻構成と、今回紹介するものの中では長いほう。実際のところ、最初の3巻は史実に描かれない部分であり、前座。最後の4巻こそが真骨頂。溜めに溜めたパワーを、史実通りの偉業として一気に爆発するような構成。

 絶頂期はよくても晩節はみじめ、という偉人の多い春秋戦国期にあって、最後まで輝いていた人物が題材であるという点もいい。

■ おしどり探偵

 アガサ・クリスティー(著)
 坂口怜子(翻訳)
 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫

 冒険好きな若夫婦のトミーとタペンスが、国際探偵事務所を開設した。平和で退屈な日々は、続々と持ちこまれる事件でたちまち慌ただしい毎日へと一変する。だが、二人は持ち前の旺盛な好奇心と若さとで、猟犬のごとく事件を追いかける!おしどり探偵が繰りひろげるスリリングな冒険を描いた短篇集。新訳で登場。

 史上最強のストーリーテラーの一角、アガサ・クリスティからはマニアックなものを選んだ。

 トミーとタペンスものは、クリスティの作品の中でも実に軽妙で、肩ひじ張らずにサクッと読めるのが気に入っている。ライトノベル感覚。普段活字に触れていない層でも安心。推理小説としては、トリックなどは近代の凝りに凝ったものにくらべると物足りないかもしれないが、古き良き英国の空気を感じられるという付加価値込みで、とても楽しい。

 また、クリスティのド定番であるポワロやミスマープル、そして誰もいなくなった、等々ももちろんおすすめ。ただこれらは作品や翻訳者によっては、すんなり頭に入らないものも多い、当たりはずれのある印象。

■ 街道をゆく〈20〉中国・蜀と雲南のみち

 司馬遼太郎(著)
 朝日文庫

 蜀の地・四川から雲南へ―。少数民族七百万の暮らしに日本民俗との接点を見る。

 街道をゆくシリーズは、個人的には国内編は退屈で、海外編が面白い。今回は「蜀と雲南のみち」を挙げたけど、ほかにも同じ中国の江南や閩、モンゴルにアイルランドなどが海外編としてあり、それぞれの地に司馬遼太郎が訪れ、独自の史観に基づく洞察をする姿をうかがうことができる。

 この「蜀と雲南のみち」、特に「蜀のみち」は、読んで大変にその土地に興味を持つようになり、後日実際に蜀(中国成都)に旅行に行ってくるほどの影響を私は受けた。司馬遼太郎と同じように、成都郊外の諸葛武候祠で、杜甫の詩「蜀相」に思いをはせることができたのは、今でも忘れられない経験となった。

 この本に描かれているのは、もう数十年前の様子なので、特に中国などは現在とは隔世の感がある。そういう時代の変化も込みで、また変わらぬ悠久の歴史や文化を見出すという点も込みで、読みたい。

■ 沈黙のフライバイ

 野尻抱介(著)
 ハヤカワ文庫JA

 アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する―静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。

 SF部門代表。

 SFとしては、クラークの「宇宙のランデヴー」などを挙げたくもなるものの、読みやすさや親しみやすさなどの点から、この作品を挙げた。一般人向けの表現で、比較的最近書かれた、しかも短編集なので、本当に気軽にSFに触れられるSF良著。

 作者はライトノベルレーベルでもSF/スぺオペを書いている。ロケットガールくらいラノベ臭がきつくなると、私には少々ついていけないのだけど、クレギオンシリーズなどはジュブナイル寄りのスぺオペの名作なので、大人にもおすすめしたい。

■ 韃靼疾風録

 司馬遼太郎(著)
 中公文庫

 なぜか九州平戸島に漂着した韃靼公主を送って、謎多いその故国に赴く平戸武士桂庄助の前途になにが待ちかまえていたか。「17世紀の歴史が裂けてゆく時期」に出会った2人の愛の行方を軸に、東アジアの海陸に展開される雄大なロマン。第15回大仏次郎賞受賞作。

 同じ著者を2度出すのはどうかなぁ、と思ったんだけども、司馬大先生なら許されることだろう。

 明王朝を打倒し、清王朝を打ち立てた女真族と、日本人との交わりを描いた作品。女真族を中心に据えるという舞台設定が面白い。著者の遊牧民族への深い愛を感じる。この本を読む前は、明と清を並べた場合、心情的に被征服民である明に同情的だったんだけど、この本を読むと断然清贔屓になる。そのくらい魅力ある物語だった。

 司馬遼太郎の作品のなかで、わざわざマイナーなものを挙げるのもどうかと思ったんだけど、こういう「知らなかったもの」が題材であるというのは、新選組や有名戦国武将が題材であるものよりも、「本による知識的な出会い」が強調されて好ましく感じるのだ。

■ ぼんくら

 宮部みゆき(著)
 講談社文庫

 「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」―江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。

 時代劇部門堂々の1位。

 あまり時代小説は読まないんだけど、このシリーズは本当に面白かった。続編の「日暮らし」とともにおすすめしたい。

 宮部みゆきは本当に文章がうまい。さらっとしていて、内容が脳みそに到達する速度にかけては、比肩するものは少ない。彼女の作品にはホラーだったりサスペンスだったりする、ちょっと気構えのいるものも多いんだけど、このシリーズはそういう暗さがなく、読中も読後も清涼でさわやか一辺倒。それがいい。

■ 七王国の玉座(氷と炎の歌1)

 ジョージ・R・R・マーティン(著)
 岡部宏之(翻訳)
 早川書房

 ウェスタロス大陸の七王国は、長い夏が終わり、冬を迎えようとしていた。狂王エイリスを倒し、ターガリエン家から〈鉄の玉座〉を奪って以来、バラシオン家、ラニスター家、スターク家ら王国の貴族は、不安定な休戦状態を保ってきた。だが、ロバート王がエダード・スタークを強大な権力を持つ〈王の手〉に任命してから、状況は一変する。それぞれの家の覇権をめぐり様々な陰謀が渦巻き……。ローカス賞に輝く歴史絵巻開幕!

 ファンタジー部門代表。

 世間的にはドラマ版のゲーム・オブ・スローンズで有名なファンタジー巨編。著者が遅筆過ぎて、一向に新刊が出ないばかりか、ドラマ版に展開で追い抜かれた。原作を派生が追い抜くというまさかの展開。むしろ著者もドラマ版の監修のほうに夢中。それで余計に新刊が出ない。ファッキンドラマ版。

 世界観や内容は間違いなく一流だけど、今回挙げた本の中では、ボリュームもあり、登場人物の把握も難しく、未完でもあるので、少し読むのがかったるい系でもある。

■ 深夜特急

 沢木耕太郎(著)
 新潮文庫

 インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く――。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは「大小(タイスウ)」というサイコロ賭博に魅せられ、あわや……。一年以上にわたるユーラシア放浪が、いま始まった。いざ、遠路2万キロ彼方のロンドンへ!

 紀行文の白眉。バックパッカーのバイブル・・・だったようだ。今は知らないが。

 前掲の「街道をゆく」と同じく、数十年前の世界の紀行文なので、現在とは趣が異なる部分も多い。それでも色あせない魅力がある。

 我々の世代的には、世界観としては「猿岩石のユーラシア大陸横断」に近い。得られる楽しみも近い。ユーラシア大陸各地の風物をベースに、人と人との交流や、貧乏旅行の甘み辛みを伝えてくれる。そして読後には、猛烈に旅行に行きたくなる。そういうパワーのある一作。

 私などは今でも旅先でフェリーに乗り、風を浴びると心でつぶやく。「Breeze is nice」

■ タテ社会の人間関係

 中根千枝(著)
 講談社現代新書

 「ウチの者」と「ヨソ者」、派閥メカニズム、日本型リーダーの条件…。ビジネスパーソン必読、これを読まずに組織は語れない。なぜ日本人は上下の順番のつながりを気にするのか? なぜ日本人は資格(職業など)よりも場(会社など)の共有を重視するのか? 日本の社会構造を鋭く析出したベストセラー!

 最後は少々お堅い本。

 ウェブ掲示板などで「日本人は~だからなぁ」とかほざく、浅薄なクソガキにこそおすすめしたい一冊。賢明なる弊サイト読者諸兄にも、なんらかの知的補完となろうことは請け合いで、もちろんおすすめしたい。

 今回紹介するなかで最古の著作ながらも、いまだに色あせない理論を展開している、文化人類学的名著。書いてあることすべてを鵜呑みにしろとは言わないものの、こういうしっかりとした先行文献を腹に収めたうえで、若者は日本人論を展開してほしいと、そして世界に羽ばたいてほしいと切に願う(オンラインゲーム的な意味で)。