日記: 12月24日(2022年)

 乙嫁語りというマンガがある。

 Wikipediaの説明文を抜粋すれば「19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺の地域を舞台に~(中略)~人々の生活と文化、時に人間の愚行を織り交ぜた物語を緻密で丁寧な画で描く」というようなマンガだ。

 ざっくり言えば、「ちょっと昔のトルキスタン生活文化マンガ」と言ったようなところだろうか。日本人が思い描く「西域」や「シルクロード」のロマンがそこにはある。

 で、その中で登場する魅惑の食料が、「パン」だ。

 共同の大きな窯で焼かれる、円盤状の大きなパン。フリスビーのような形状のパン。それがとてもおいしそうに描かれている。どんな味なのか、マンガを読んでいて非常に気になる。特に、パンを焼くのが得意な、しかし感情表現が不器用な女の子「パリヤさん」の焼くパンが、作中では頻繁に描かれていて、いつの日か食べてみたいものだ、と思っていた。

 で、そんなことを以前にTwitterで吐露したんだけども、この時期になって突然そのツイートが「いいね」された。

 すわ、何事か。と思ってみてみると、ウズベキスタン料理の店かなにかが、パリヤさんのパンに近しい、「ウズベキスタンのノン」なるものを、いろいろなところに出店しては販売しているらしく、その宣伝目的の「いいね」であるようだった。なるほど。

 その店は西荻窪に店舗があるらしいのだけど、都内を中心に、様々な催事場に出店しては、そこでも商品を販売しているらしい。直近のスケジュールでは、クリスマスの時期にコレド室町テラスで販売されるとのことだ。

 うーん、これは常々食べてみたかった「パリヤさんのパン」を食べるチャンスが、ついに来たか。

 ってことで、行って、買ってきた。

 パンの写真を載せろ、と言いたいかもしれないけど、無事に撮り忘れたので、パンの写真はお店のTwitterのものに直リンクしておくので、それで見てほしい。こういうものだ。

 変わったことにこのパン、販売時にはかちんこちんに冷凍されていた。要するに冷凍食品だった。「今朝焼いた、焼き立てパンでーす」とかいうものではまったくなく、ある時期に大量生産し、冷凍して在庫してあるものを、適宜売っていくスタイルのようだった。

 これには一瞬興ざめしかけたものの、ニッチな商品だし仕方がないよな、と気分を持ち直して購入した。実際19世紀のトルキスタンでも、寒い冬にはパンは凍っていたかもしれないしな!

 凍っていたパンは、家まで持って帰って、夕食時に食べるころにはほとんど解凍されていた。

 それを適当な大きさに切り、軽くトーストして、食べてみた。

 ふーむ。

 思ったよりも普通のパンだった。

 割としっかりとした生地で、重めのパン。もちもち要素はなく、しっとり、かつ、ざっくり。なんというか「小学生が手作りパン教室で作った発酵不足で膨らんでないパン」とでも表現するのがいいだろうか(注:けなしてない)。そんなどこか洗練されていない風合いがある。

 これが美味しいか不味いかと言われると、美味しい。素朴ながらも小麦の味がして、噛めば甘みもある。主張が激しいパンではないので、甘いジャムにも、肉系のおかずにも合いそう。食感も、ソフト系のパンより、ハード系のパンのほうが好きな私には、嗜好に近い側に位置している。トータル的に好感度の高いパンだった。

 数か所に振られている黒いつぶつぶは、ゴマかと思ったらゴマではなかった。なんだろうな、これ。オリエンタルな香りのするスパイス。風味的にはクミンっぽいなにか。これもいい仕事をしていた。

 ってなわけで、「パリヤさんのパン」a.k.a.「ウズベキスタンのノン」。なかなか出会えないものだから、気に入ったのでリピート、などということのできる属性のものではないけど、知りたかった味を知れたし、美味しかったし、良い買い物ができてよかったよ。

 今回は大きいほうのパンを買ったので、向こう3日分の朝食はこれになりそうだ。

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