カテゴリー別アーカイブ: リアル生産スキル向上計画

リアル生産スキル: 第20回

 ヒルトの接着後、かしめピンをヒルトもろとも削って、かしめピンの存在を抹消しておいた。

 きっちりかしめられていれば、ヒルト材とかしめピンが隙間無く密着するので、ピンを削れば、ピンの痕跡は見えなくなるはず。でも、もちろんかしめが甘ければ、かしめピンが露呈してしまう。

 なのでヒルトの接着剤の固化を待つの間、作業ミスで隙間ができてしまうか、作業成功で綺麗な仕上がりになるか、という判定が下るまでドキドキだったんだけども・・・結果は、なんとか綺麗な仕上がりになっていた! イエイ! でも、かしめピンとは全然違う部分なんだけども、かしめた際に勢いあまってハンマーで傷つけてしまっていた箇所があることが発覚。うーん、ちょっと残念だ。

 で、今回はさらに次の工程である、ハンドルの作成を行った。


ハンドル外形削り

 大まかにハンドルの形になるように切り出したハンドル材を2枚用意して、ナイフの鋼材を表裏からサンドイッチしてやり、接着。しかるのちに、ハンドル材を削って形を整える・・・というのがざっくりとした作業手順になる(これは「フルタング」というハンドルの形式らしい)。この際の接着は、ハンドル材用の瞬間接着剤と、ファスナーボルトによるネジ止めの、2段構えで行うのがオーソドックスだ。

 で、まぁ、木を張り合わせて、ネジを締めるだけだし、正直どうということはない作業。…と思っていたんだけど、甘かった。

 まず、いきなり苦戦したのはハンドル材。ナイフハンドル用の木片を購入したんだけど、購入したままだと、分厚すぎたのだ。こんなに分厚いまま接着しては、あとから削るのが非常に大変になってしまうことが、容易に予想できた。なので接着前に、どうにかノコギリでハンドル材を薄くスライスしてやった。ハンドル材の2枚おろし、という作業イメージで間違いない。すごく疲れた。

 ハンドル材は、もともと近しいサイズに切られたものを買ったんだけど、厚さへの認識が甘かったな。次は考慮しておこう。こういうときは、カンナでもあれば楽なんだろうかねえ。

 さらに苦しめられたのが、瞬間接着剤だ。塗りすぎて、接着時に大量の液剤がハンドル材と鋼材の隙間からあふれ出てきてしまい、手やテーブルにポタポタとこぼれてしまった。おかげで、指やら、テーブルやらが、硬化した接着剤でコーティングされてしまったよ。指の感触が気持ち悪いこと、この上ない。

 さらにさらに難しかったのは、ファスナーボルト用の穴あけだ。2段ドリルで「適当な深さまで6mm径」に、「そこ以外は4.5mm径」になるようにハンドル材に穴をあけるんだけども、これを目分量でやったのは失敗だった(当たり前だ)。おかげで片方のファスナーボルトは、「ハンドル材に引っかかっていない」という、全く持って接合の役に立たない、ただの飾りとなってしまったのだ。むう。

 (未知の作業内容を写真も無く文章で伝えるには、本当はこの数倍頑張って説明しないとイメージできないことと思う。が、これは作業マニュアルではないし、そんなことを詳細に伝えることもなかろうと思うので、その努力は放棄してます。ここではそれっぽいことを断片的に述べるにとどめてるので、工程を正確に理解する努力はたいていの人には無駄です。あきらめてください)

 てなわけで、なにやら手際の悪さを露呈しつつも、ハンドル材と鋼材の接着が終わり、ハンドル材の加工段階に入った。この加工が終われば、外形的にはほとんど完成状態になるから、テンションも上がるというものだ。

 楽しみ楽しみ。

リアル生産スキル: 第19回

 ってことで、下の写真がベリーシンプルヒルトだ。なに? 手抜きだって? でも、こういうのがきっと素朴で格好いいんだ! たぶん!


かしめ!

 さて、写真ではすでに結合されてしまっているけど、このヒルトと本体との接合は、接着剤とかしめピンの2段構えで行った。

 まずは接着剤。これは接着するということよりも、接合面の隙間を埋めるという意味合いが強いものだ。なので、なんらかの金属粉の入った接着剤を使用して、隙間をできるだけ金属っぽく見せるようにすることになる。ここでプロは「銀ロウ」というものを使うらしいけど、私は素人なので代用物の2液混合接着剤だ。

 接着剤の使用説明書には、「2液を同量(重量比10:7)で混ぜる」と書いてあるんだけど・・・こんな少量のものを正確に量ることのできる機材なんて、我が家にはもちろんない。こういうときに手間を省くと、だいたい後から痛い目を見るんだけど・・・でも、どうしようもないので目分量で混ぜました! どうなることやら。

 そして、かしめる。今までさんざん、かしめる、かしめる、と言っていたけど、これはヒルトと本体を貫通するように、金属のピンを通し、それを両側からぶっ叩いて、ピンを穴の中で膨張させ、ひしゃげるさせることで、ヒルトと本体とを固定する方法のことだ。

 作業自体はそう難しいこともなく、ピンを左右5ミリほどはみ出る長さにして切り、ヒルトと本体を串刺しにして、ぶっ叩きまるだけ。簡単だ。とはいえ、ちょっと階下の家に迷惑を掛けた気がするなぁ。30秒程度なので許してください。ごめんなさい。

 で、完成したのが写真の様子。かしめピンがつぶれているのがわかると思う。接着剤の硬化時間は8時間だそうだから、これでひとまず作業は中断だ。接着剤が乾いたら、かしめピンを削って、表面を滑らかにしよう。

 かしめピンとヒルトの間に、目立つ隙間が出ないといいなあ。

リアル生産スキル: 第18回

 焼入れから鋼材が戻り、酸化皮膜をとりあえず削り落としたので、工程を先に進めることにした。

 焼入れ前に念入りに磨いた甲斐があってか、ナイフ本体はもうさほど磨かなくてもよさそうで、あとはすべてが終わった後の仕上げ工程に行えばよかろうと判断したのだ。


ヒルト整形中

 ってことで、次の工程はヒルト、つまり鍔(つば)の部分をつくり、それをナイフ本体にくっつけるという作業になる。

 ヒルトは、硬度はさほど必要ではないので、加工性の良いブラス(真鍮)やニッケルシルバーで作られることが多く、まれにステンレスでも作られるらしい。私も今回は、ニッケルシルバーで作ることにした。ちらっと第13回でも登場したので、参照されたし。

 さて、今回のナイフは教本の見本のデザインを真似て、大半の部分を作成しているのは、以前にも述べたとおりだ。だけどヒルトのデザインだけは、教本のものとは違うようにしようと、初めから決めていた。せめてそこで、オリジナリティを主張しようと思ったのだ。

 そんなわけなので、なんとなーく完成デザインをイメージし、何本かの目印の線をけがいたあとで、作業順の詳細見本がない状態で、おもむろに作業を開始した。・・・・んだけども・・・。

 ・・・想像以上に立体物の加工は難しかった。結局、なんとか削りだしたヒルトは、教本どおりにはならなかったものの、教本よりもだいぶシンプルな、「ただの手抜きじゃねーの?」というような物体になってしまった。うーん。ま、いいか!

 どんなものになったかは、次回以降で明らかに!

リアル生産スキル: 第17回

 熱処理に出して待つこと、2週間弱。ついにナイフ鋼材が、熱処理業者から戻ってきた。ほぼ想定どおりの期間でのリターンだ。


帰ってきた!

 全体的にうっすらとキツネ色に染まった鋼材は、しかし思ったよりも綺麗な形で戻ってきた。もっと傷がついたり、酸化膜がジョワーっとなってるのかと、勝手に想像していたけど、全体的な色が変わった以外は、例えばブレードの鏡面度なんかも、ほぼそのまま戻ってきた。

 これからまた1から地獄の磨きなおしかと思っていたけど、このくらいならそんなにつらくもなさそうだな。ちょっと一安心だ。

 そして八田工業はさすがにプロらしく、焼き入れ後の硬度を計測して、その結果も同梱してくれる。結果はHRC62とのこと。

 鋼材の硬度は、ロックウェル硬度(HRC)という単位で示すらしく、今回使用しているATS-34の平均焼入れ硬度は60~61らしい。だから、平均よりも硬く仕上がったということで、これは喜ぶべきことのようだ。硬さ=刃持ちのよさ、切れ味、なところがあるようだからね。でも私としては、硬くなっただけに、今後の加工性が下がったのでは、という部分での不安が大きい。

 ま、とりあえず酸化膜落しから作業を再開するとしますか。

リアル生産スキル: 第16回

 近況報告。

 先週、ナイフ鋼材を焼入れ業者に送ったんだけども、今日まで一週間以上、見事なくらいになんの音沙汰も無かった。これにはさすがの私も不安に駆られてしまった。なにしろ、その業者に関しては、「焼入れをやっているらしい」ということと、「ウェブサイトによれば1本1,050円らしい」ということしか情報がないのだ。安心材料が皆無といわざるを得ない。

 実のところ、郵送すればよいというのも、ウェブ上の見知らぬ第三者の書いた体験談をもとにとった、あやふやな手段でしかなく、果たしてそれが本当に正しい方法だったのか、自分では確かめていなかったりする。そんな状況なので、すでに送っておきながらなんだけども、私の鋼材が無事に受理されるラインに乗っているのかすら、私には確証が持てないのだ。

 冷静になって考えてみれば、郵送する前にメールなり何なりで、問い合わせをすべきだったんだよね。だけど、なぜか私は「そこに郵送しさえすればうまくいく」と勝手に思い込んでいて、常識的なプロセスをすっ飛ばして、いきなり郵送してしまったのだ。うーむ、我ながらなにを考えているのやら。

 ってことで、大変遅ればせながらメールを発射。

 ―ワタクシ、2日ごろ着のクロネコメール便で、突然に鋼材を送った物ですが、無事着いてますか? これからどうすればよいですか?

 すると、半日ほど経って返事が来た。

 「本日処理を行いました。しかし料金が振り込まれていないので云々・・・」

 ―ああ、払い忘れてましたよ・・・ってそもそも振込口座知らないですよ!

 ってな感じで、無事に処理はされていたが、料金未払いという状況にあることがわかった。無論、速やかに振込口座を聞き出し、本日料金を振り込んできたので、これで今や憂いはないはず。振込みが確認され次第、鋼材が送られて来るそうなので、遅くとも来週中には当企画も再開できそうだ。

 どんな風に戻ってくるか、楽しみだなー。

 そうそう、それと今日は、きたるべきシース(鞘)作成のフェイズに向けて、レザークラフトの材料と簡単な道具も手配したよ。さらに出費になってしまったけど、実は革細工のほうも結構楽しそうで期待しているのだ。これまた楽しみだ。