私が最も好きな食べ物の1つは、フライドポテトだ。すし食い放題よりも、ステーキ食い放題よりも、酒飲み放題よりも、フライドポテト食い放題のほうがうれしい。そのくらい好きだ。マクドナルドに行って「ポテトL、2つ、持ち帰りで」といって、それだけを夕食にするのが、最高のご馳走だというくらい好きだ。
そんな私からすると、フライドポテトというものを軽く考えている、「揚げてあるイモならどれも同じ」というような無知蒙昧な輩の意見は、聞くに堪えない。そこで、フライドポテトを分類し、かつその評価をしていきたい。
なお、そんなことをまじめに力説するな、という真人間はここで帰ることをオススメする。
【形状による分類】
フライドポテトの形状は、理論上無数にありえる。神が与え給うた奇跡の食材であるところのジャガイモは、カットすることで、スライスすることで、あるいはマッシュし、整形することで、無限の可能性を持って造形されうる。しかし、一般的に良く見られるものは以下の4タイプであろう。なお、名称の一般性は知らない。
a.シューストリング
最も細長いタイプ。マクドナルドのポテトがその代表例。
b.ノーマル
シューストリングの倍ほどに太く、同等の長さのタイプ。ケンタッキーやモスバーガーのポテトがその代表例。多くのファミレスチェーンでもこのタイプが供される。
c.クリンクルカット
ノーマルと同サイズのもののうち、断面がギザギザになっているタイプ。子供だましの形状。
d.カントリータイプ
皮つきのままジャガイモを扇形にカットしたものをそのまま揚げているタイプ。野趣あふれる異端児。
さて、この中で、私が最も高く評価するのは、bだ。最高にウマイのはbだと断言したい。
しかし、問題はbタイプは「おいしくするのが難しい」というところにある。そのため実際には、「おいしく作りやすい」タイプであるaのほうが、世間でおいしいものに遭遇する可能性が高い。そのためaが好きといっておいたほうが、多くの場面では無難だというのが現実だ。なお、cで喜んでいいのは小学生まで。dも嫌いではないが、異端児なのでベストとはいいにくい。
ということで評価は、理論値ではb>a>d>cとなり、実際値ではa>b>d>cとなる。
ちなみにbタイプがおいしくなりにくいのは、以下のような原因からだ。
フライドポテトの妙味というのは、「サクサクに揚げられた外側」「ホクホクとした内側」「程よい塩加減」の相乗効果にある。その全てを豊富に持ちうるのは、aタイプよりもbタイプであるということは、一目瞭然であろう。しかし、「ホクホクとした内側」というのは要するに「水分(水蒸気)を内包した層」であって、それは「サクサクした外側」を破壊する作用をも併せ持つ、諸刃の剣なのだ。そのため、表面積に対する体積が大きいbタイプは、自らの潤沢な「ホクホクとした内側」分によって、あわれ自滅するケースが多い。またそれは同時に、フライドポテトの表面に付着する塩分が、体積に対して不足することも引き起こしやすく、味が薄く感じられることが多いという点も不利な要素だ。だから、bタイプの真のおいしさというのは、最高の調理と、最高のタイミングが要求される、奇跡の産物なのだ。
【実際の事例】
マクドナルドを基準値として考えるべきジャンルだが、基準値の実力が高いために生半可な決意では伍して戦うことすら厳しいと心得なければならない。またファストフード系のものは、その性質上同じチェーンのものであっても、店舗ごと、調理担当者ごとの味の格差が激しく、平均値を出しにくいため、異なる生活圏のフライドポテト好きの間で意見が分かれやすい。
マクドナルド:ザ・ポテト。多くの人にとってのフライドポテトの原体験。メジャーであるがゆえに、フライドポテトの美学に本来は反するような「しなっとしたのが好き」派まで生み出す懐の広さを持つ。原点といえども、十分以上にうまい。シューストリング。
ロッテリア:ポテトの質は並。マクドナルドに比べて平均的に揚げが甘いことが多い。しかし塩(+スパイスなのだろう)の味が抜群で、この1点だけはフライドポテト界の最強クラス。シューストリングだが、かつて存在したチキンバスケット(好きだったなぁ)のポテトだけは、カントリータイプだった。
ファーストキッチン:かつてはただの劣化マックだったが、いつの頃からかフライドポテトに力を入れだし、いまや8種以上のフレーバーポテトを展開する、フライドポテト界のやる気勢。ただし、根っこの部分はあまり変わっていないので、私は大して評価していない。塩でダメならダメだ。シューストリング。
ケンタッキー:昔はファーストフード系フライドポテト界の面汚しだったが、ここ数年で実力をあげた。店舗によってはカントリータイプだったりするが、今はノーマルが多いと思う。揚げたてならうまいが、タイプの宿命として、劣化率が高い。
モスバーガー:業務形態の関係で、劣化しやすいノーマルタイプを、かならず揚げたてで得られる。のだが、フライドポテトそもそものレベルが低く、しかも量が少ないので、トータル的に同タイプのケンタッキーの後塵を拝している。モスならオニオンリングフライのほうがウマイ。モスバーガーはほとんど唯一の「私が一緒にポテトを頼まない」ファストフード店。
バーキン:すまん、日本でバーキンに入ったことがほとんどない。海外で何度か入ったバーキンのポテトは、量よし味よしの最上級品だったということだけ記しておく。シューストリング。
ローソン:妙に外皮の存在感のあるノーマルタイプ。おそらく衣がついているのではないかと思われる。衣の存在は、要するに保温機の中で長時間保存しても、そこそこのクリスピーさが保たれるという意味だろう。正統派ではないものの、それなりに安定している。
ミニストップ:Xポテトなどという、断面がX字状になったポテトを展開している。表面積が大きい分、外皮の占める割合が高いから、クリスピーさが売りかと思いきや、あまりクリスピーではないという期待はずれな品。揚げたてどうしの勝負ならローソンに軍配。昔はただのシューストリングで、これは普通に美味かった。
ポッポ:ヨーカドーなどのフードコートに出展する外食チェーン「ポッポ」のフライドポテト。品質的には、下の「冷凍シューストリングを自分で揚げる」とほぼ同じ。素人くさいポテトだが、外食で食うフライドポテトの中では、最も価格対量比が良いので馬鹿にできない。
ファミレス:多くのファミレスのサイドメニューにはフライドポテトがあり、その場合はノーマルタイプであることが多い。揚げたてを必ず食すことができる上に、なかなかおいしいことが多い。フライドポテト目的で入店するようなシチュエーションがないのが難点。
冷凍シューストリングを自分で揚げる:揚げたてを安価で大量に食えるので、決して悪くない選択肢。味の面でも、マクドナルドの最もコンディションのいいケースに比肩する。ただし、多くの家庭ではサラダ油で揚げることになると思われるため、ラードやショートニングを用いる外食系と比べるとパンチが足りなかったり、ただの食卓塩で味付けをすることで、味の深みがなかったりと、やや物足りなさもある。
冷凍カントリーを自分で揚げる:揚げたてを安価で大量に食えるので、これも決して悪くない選択肢。カントリータイプのフライドポテトは、揚げたてで香ばしい良いコンディションのものを外食で食う機会に乏しいので、カントリータイプの実力を知りたい場合は、自分でこうやってあげるのが手っ取り早い。カントリータイプを舐めてかかってる向きには、是非真の実力を垣間見て欲しい。
【その他のマイナー、異種別事例】
マクドナルドのハッシュドポテト:ウマイ。シューストリングに勝るとも劣らない魅力を放つ。さすがは僕らのマクダーネルズだ。
クアアイナ:衣つき超極細シューストリングという、邪道というか、鬼才的な品。ポテトを食べてるんだか、衣を食べてるんだかよくわからなくなる。揚げ油をこれでもかと吸い込んでいるので、とてもしつっこいが、ウマイ。
PA(八ヶ岳PA等)にあるポテト:マッシュポテトをところてんのように絞り出して、そのままそれを油に落として揚げるフライドポテト。絶賛するほどウマイものではないが、ほかにはない味を楽しめる。イモ餅とフライドポテトの中間のような味だ。過去に八ヶ岳PAや、談合坂SAで確認しているが、今どこで食えるのかは不明。フライドポテト好きを名乗るのならば、発見し次第食うべき品。
シェーキーズのフライドポテト:フライドポテトの名を冠していること自体が許せない駄作。フライドポテト食い放題に騙されてシェーキーズに行ってはいけない。
リトルマーメイドのハッシュブラウン:ベーカリーチェーン「リトルマーメイド」では、なぜか極まれにハッシュブラウン(ハッシュドポテトの別名)やフライドチキンが売られている。これが馬鹿にできないポテンシャルを秘めていて、揚げたてのハッシュブラウンは、マックのハッシュドポテトをしのぐ美味さだし、また蛇足ながらフライドチキンも、ファミチキを凌駕するクオリティだ。レギュラーメニューになって欲しいが、いつも売れ残っているので、そうはなりそうもない。
ポテチ:コイケヤ>>>(越えられない壁)>>>カルビー。じゃがりことか、じゃがびーとか、そういう小細工は不要。コイケヤののり塩、カラムーチョ、スッパムーチョがあれば生きていける。
イモフライ:ひとくち大に切ったジャガイモにパン粉をつけてあげたもの。串揚げにされることが多い。これも大好きなメニューだが、さすがにこれをフライドポテトと同列に扱うのは難しい。佐野市がこれを名物にしようとしている動きはイラっとくる。
フィッシュ&チップス:いわゆるチップスの部分がフライドポテト。なお、英語でチップスはフライドポテトのことであり、日本でいうポテチは「クリスプス」というそうだ。これが米語だと、ポテチはチップスであり、フライドポテトはフレンチフライとでもいうらしいのがややこしい。ま、どうでもいいけど。本場のチップスはどれも美味かったが、日本のパブで食うフィッシュ&チップスはさほどでもないことが多い。そもそもチップスの量が少なすぎる。マックのポテトでいえば、皿の上にLサイズが1つ分以上はぶちまけられていないと嘘だ。
【食い方】
塩一択だ。胡椒、モルトビネガーまでは雰囲気で許すが、それ以外は認めない。ケチャップや各種シーズニングは、塩でダメな駄作を仕方なく食う場合に、味を画一的に引き上げるために使用するもので、それらを用いて食うフライドポテトは、塩で勝負できるそれと同列に語ってよいものではない。
フライドポテトをケチャップで食うのが好き、という人は、フライドポテトが好きなのではなくて、ケチャップがすきなのだ。
【まとめ】
無軌道にだらだらと書き続けたけど、特にまとめとなる結論も何もない。私のポテトにかける情熱さえわかってもらえればそれでいい。恐ろしく長くなったうえにグダグダだけど、以上!