グルメ編最後の記事は機内食だ。
今回は「プレミアムエコノミー」というエコノミーとビジネスの中間クラスに乗ったので、少しだけ食事は豪華だった。正直それでも所詮は機内食なんだけども、カトラリーが金属で、布製のナプキンがついてきて、といつもと違うなにかは感じ取れた。
5年前の渡英時にも立ち寄った、ヒースロー空港ターミナル5のパブ、The Crown Riversで今回も最後のエールを飲んだ。
今回はちょうど昼食時だったこともあり、店内はやたらと混み合っていた。落ち着いて座って飲めるスペースはどこにも空いてなかったので、ハイテーブルでの立ち飲みとした。このあと飛行機で12時間も座りっぱなしになるんだし、逆に立っているのもいいかもな、とポジティブに考えた次第だ。
英国最後のエールに選んだ銘柄はDoom Bar。コーンウォールの地ビールのようだ。初めて飲んだけどクセもなく、水のように飲めるエールだった。よいよい。
ちなみにお値段は1パイントで3.55ポンド。以前ここで飲んだときは、「安い!安すぎる!」って思って飲んだ記憶が強いんだけども、あれから円安が進んだこともあって、ずいぶんと高くなってしまった印象だ。それでも日本で飲むよりはずっと安いけどね。
(※1パイント3.55ポンドは今回旅行時のレート1ポンド180円前後で640円。都内でマイナーレーベルのドラフトエールを飲むと、1パイント900~1100円かな。参考までに前回旅行時は、1パイント2.5ポンドでレートも1ポンド130円くらいだったので325円だ。前回は安すぎた)
とはいえ、空港を行き交う人々を眺め、旅の思い出を振り返りながら、英国最後のエールをちびちび・・・立ち飲みだろうが、お得感がなかろうが、美味いに決まっていた。
マナーハウスホテルThe Oakley Courtの朝食は、やっぱりおなじみのフルイングリッシュブレックファスト風ビュッフェ。おなじみのメニューを、好きなだけとって食らう形式だ。
もう散々食べてきたメニューなので、感動もなかろうと思ったんだけども、なかなかどうして。それぞれの宿泊先で、それぞれの特徴があって、そのへんの比較をしつつ食べるのは興味深かった。
そんな比較からすると、ここの朝食はレベルが高かった。特筆すべきは、イングリッシュソーセージかな。イングリッシュソーセージに関しては、ここのものが今回の旅行で一番美味しかった。多分だけど、肉が多めだったんじゃないかと思う。以前も紹介したように、イングリッシュソーセージというのは、ひき肉に小麦粉を加えてかさ増しをしている、ふにゃふにゃソーセージなんだけども、ここのものはふにゃふにゃといえども肉の食感、うまみを比較的維持していたように思われた。
それとスクランブルエッグもリッチな味わいだった。バターが多いか、生クリームが入っていたか、そういう濃厚ななにかを感じた。4日間、素朴なB&Bの朝食を続けていたので、この手の高級な変化球には敏感になっていたのかもしれない。
あとはB&Bでのフライドブレッドの位置に、おなじみのハッシュブラウンが帰ってきた。フライドブレッドはそれはそれで珍妙なれども興味深いものだったけども、イモ好きとしてはハッシュブラウンの帰還は喜ばしい。残念ながらハッシュブラウンの品質は並程度だったけども、ついつい多めに取って食べてしまった。
最後の晩餐は宿泊先のThe Oakley Courtの庭園にあるテラスで優雅に頂いた。
宿泊先のThe Oakley Courtは、古いマナーハウスを改造した豪華なホテルで、敷地内を流れるテムズ川沿いには芝生の庭園が広がり、テムズ川に浮かぶ水鳥や、ボートハウスにかかる桟橋、行き交う船舶を望みながら、ゆったりとした時間を過ごすことができる。
そんな望むテラス席での食事は、最後の晩餐を贅沢な気分で過ごさせてくれた。
数時間前に味わった、ウィンザーのパブでのひどい扱いとはうって変わって、給仕の応対も最上級。早口の英語でなにを言っているのかはやっぱりよくわからないんだけども、にこやかな笑顔と元気な発声(そして美人ぞろい)で、こちらの気分をもり上げてくれた。
ここでは初日と同じくボディントンと、ハンバーガーをオーダー。
ボディントンに始まりボディントンに終わるというのも一興。初日のホテルと、今回のホテルは、同じスラウという都市の中にある(たぶん)。スラウ周辺ではボディントンの勢力が強いのだろうか。
そして特筆すべきはハンバーガー。これが異常に美味かった。肉汁たっぷりのパテと、その肉汁を吸い込んでなお香ばしさを失わないバンズ。別段特別なソースが使われているわけでもなかったんだけども、肉本来のうまみを存分に活かしたハンバーガーだった。「パサパサになるまで焼く」のが身上のイギリスで、肉をこんなにも絶妙な焼き加減で料理してくるなんて、一体どうしたことだろうか。雰囲気込みで、生涯ハンバーガーランキングでも最上位に躍り出る一品だったよ。
あ、もちろん、付け合せのポテトも美味かった。こちらにしては珍しく、細めのカットのシューストリングタイプ。ちょっと日本が近づいたような気がした。
今回の旅行で唯一、店員の態度という点で悪印象だった店。
ここはウィンザー城の正面にあるバプだ。内装はボロく、店員の雰囲気も怪しげだったんだけども、都会の観光地の店なんてそんなものかと、多少の居心地の悪さは覚悟の上で利用した。客の入りはそこそこよかったから、「そうハズレの店でもなかろう」という判断があったことも否めない。今にして思えば、その判断は大間違いだったわけだけども、そんなことはこの時点では知るよしもなかった。
一応、料理自体は悪くなかった。別によくもなかったけど、標準的なパブフードだった。
しかしこの店の問題は接客態度だった。
なにかを頼むと非常にめんどくさそうに対応する。それだけならまだしも、しばしば意図的に気がつかない振りをして、無視しさえする。もちろん、こちらにも英語をろくに話せないという弱みはあるけども、だからといって無礼が許されるはずもない。
さらに驚いたのは、別のグループの中国人(たぶん)の家族も、同じようにぞんざいに扱われ、しばしばバーテンに無視されて、憤慨していたということだ。なぜ驚いたかというと、そのグループの代表と思しき男は、私とは違って、実に流暢な英語を話していたからだ。香港かどこかの、英語ネイティブな地域の人なのかもしれない。しかし、それであっても、やはり低く扱われていた。そして、欧米人がなにかをいうと、すぐににこやかに最上級の対応をする。明らかに人種ごとにとる態度が違っていたのだ。
食事を終え、支払いをしようとその意思を伝えても、一向に来ない。そして、別の欧米人グループが同じように席を立つと、すぐさまやってきて手続きを行う。もう、こっそりという感じではなく、こちらがそれと気が付くように、人種差別的な行動をとっていた。最低だ。
観光も最終日だというのに、この一件のせいで、この国全体の印象が悪くなってしまった。がっかりだ。