忘れたころにやってくる10周年記念企画の8つめはDark Age of Camelotだ。
Dark Age of Camelot(DAoC)は現在に至るまでのMMORPGの中で、私が唯一本当にPvPが楽しめたMMORPGといえる。他に私が手を出したMMORPGの中で、PvPがそれなりに自由であったMMORPGというと、Meridian 59、Diablo、UO、AOといったところがあるんだけど、どれも他者と協力・競合するゲームとしての完成度では、DAoCに遠く及んでいなかったと思う。
Meridian 59で自由にPvPをすることは、アクション性が高かったこともあって非常に熱かったけど、うかつにPvPをすることが同時にゲーム生命を賭けることを意味していて、とても日常的に気軽にPvPをするというわけにはいかなかったし、DiabloはそもそもMMORPGとは言いがたい。AOはそれ以前の問題として、初動時の出来が悪すぎて、対戦するに至らなかった。現在は出来が良いと噂には聞くけど、ゲームそのものの命脈が細すぎてDAoCの比較対照としては論外だ。
UOは日本において、PvPのイメージが最も強いMMORPGの1つだと思うけど、だから未だに誇らしげにUOのPK経験談を語る人がいるから、そういった読者を大いに想定できるこのサイトでは批判しにくいんだけど、でも対戦ゲームという観点からすれば、UOはそんなに大したもんではなかったと思う。UOのPKの大半は「ゲームコーナーで5歳児が拙い手で必死にスト2をしている。おもむろに乱入。30秒で叩き潰す。『対戦台はこんなもんだ。弱いのが悪い。カカカ』と高笑い」という連中だったと思う。そういう暗い欲望を満たしうるゲームだったということは、一点評価できるけど、ちゃんとした対戦ゲームとしては決して私は評価しない(別の多くの点で評価はしている)。時代が進み、ギルド間戦争などが行われるようになると、同じUOでも話は違うのだろうけど、そのころ私はすでにUOをプレイしていなかったので不明だ。
さてそこでDAoCだ。DAoCのPvP志向のMMORPGとして優れていた部分は、1)敵と味方がはっきりしていた点、2)勢力間の個性と、勢力間の戦力バランスを同時に成立させていた点、3)勢力内での役割分担が比較的うまくいっていた点(邪魔なクラスが少なかった点)、などが挙げられるように思う。
DAoCは勢力間闘争(RvR)という形をとることで、味方と敵が実にはっきりとしていた。敵に対してはフリーに攻撃をしけることができ、一方で味方には全く悪影響を及ぼせない、という非常にシンプルな仕組みだ(除く、PvPサーバー)。そのためいわゆるPKというような行為がなく、そういうアクシデントがないことは、スリル感という点でマイナスだったかもしれないけど、そのスリルの減少が及ぼす悪影響以上に、仮想敵国に向けた戦術の練りや、モチベーションの向上などを、信頼できる味方とより純粋に行えたメリットは、はるかに大きかった。
また3つの各国が、それぞれまるで違うキャラクターシステムを持っていたというのも、驚異的な話だ。各国にタンク、ヒーラー、アタッカー、スカウトなどがいるわけなんだけど、それぞれの国のそれぞれの役割を持つクラスは、それぞれが全く別のクラスと言っていいほどの個性を持っていた。3つの国が、旗印が違うだけのコピーではなく、それぞれ本当の意味で別個にデザインされた国として存在していたのである。それはクラスやスキルの種類に限った話ではなく、たとえばスキルが武器ダメージに及ぼす計算式のシステムまでもが、国ごとに違うという徹底っぷりなのだから頭が下がる。
さらに驚くべきことは、その3国間のバランスが(当然ある程度の強弱はあるだろうけど)、非常に高いところで維持されていたという点だ。これは容易な話ではない。3つの国を、「ガワ」を変えただけの複製で造っていれば、当然バランスをとることは容易だ。でも、まるで違うクラス、システムを搭載した3つの国を、ランダムに作成される軍勢でぶつけてバランスが取れるというのは、一つの奇跡ではないかとさえ思える。
そんなDAoCで行われるPvPの戦闘は、本当に熱かった。バランスが取れているだけに、人数の与える影響は大きく、大きな人数差がついたぶつかり合いだと簡単に踏み潰されてしまうんだけど、拮抗した大戦力がぶつかり合う時の興奮は、ただならぬものがあった。これは人類のゲーム史上初めての種類の興奮だったと言っても、過言ではないはずだ。同じプレイ経験を与えてくれたゲームは、DAoC以降にはなかったに違いないのだから。
来春に向けて、DAoCを造った人々が、DAoCに似たコンセプトのゲームをリリースすべく動いている。そのゲームに、今までで唯一DAoCが与えてくれた興奮を期待しないではいられない、私なのであった。