カテゴリー別アーカイブ: 英国紀行’14

英国’14: 10.ヒドコート・マナー・ガーデン

 チッピング・カムデンから車で10分程度のところにある、マナーハウスを改装した庭園がヒドコート・マナー・ガーデンだ。ガーデニングの本場に来たということで、本格的なイングリッシュガーデンのひとつも見て帰らないわけには行くまい、ということで訪問した。

 なお、ここは行ってから知ったんだけども、イングリッシュガーデンといいつつ、作った人はアメリカ人の富豪らしい。だからどうということでもないんだけども、そういうことだ。

 で、庭だ。

 なんでも今はアジサイの季節らしく、はいどれんじゃー(Hydrangea:アジサイ)、はいどれんじゃーいっていた。確かにあちこちでアジサイが咲いていて綺麗だったんだけど、日本人が真っ先に思い浮かべるような、青や紫のアジサイではなくて、ピンクや白いアジサイが多かった。

 そのほか、庭園内は生垣で数十ブロックに区切られていて、それぞれのブロックで、それぞれのテーマに沿った見事なガーデニングが施されていた。私には庭のことはよくわからないんだけども、これを維持するのは相当なコストがかかっているであろうことは、想像に難くなく、そういう感覚で恐れ入ってしまった。

 ただ、なんだろうな。おもったよりもこじんまりというか、私のような素人にも、ガツンと衝撃を与えてくれるようなものではなかったかもしれない。私のような素人の場合、もっとデカさとか、過剰なまでの華美さとか、そういうものがないと感激できない。そういう点で、英国は趣味がいいというか、成金趣味に走らないので、玄人向けのように感じたよ。

ガーデンの入り口建物

ガーデンの様子1

ガーデンの様子2

ロングウォーク

ハイドレンジャー

英国’14: 9.チッピング・カムデン

 B&Bから10分ちょっとのドライブで到着したのは、コッツウォルズの著名な街のひとつ、チッピング・カムデン。ハイストリートの街並みの美しさと、その一角に遺されている古いマーケットホール跡が特徴的な街だ。

 この日の最初の見物の場所としてこの街にやってきたため、到着したのはまだ午前の早い時間だった。そのため、まだ街は動き出しておらず、多くの店は開店準備中といったところ。かわいらしい店も多かっただけに、そのどれひとつとして入ることが出来なかったのは残念だった。でもそのおかげで観光客も少なく、静かな雰囲気の中で、街の様子をうかがうことができたので、逆によかったかもしれない。

 メイン通り沿いの建物は、歴史を感じさせる蜂蜜色のレンガでできた、これぞコッツウォルズというような街並みを形成していた。現役で営業中の小売店の店舗やホテルが、歴史を内包している様は、不思議な異世界感を与えてくれる。多くの建物には、それと調和するような植物によるデコレーションが施されていて、過去の止まった時間と、今の息づいている時間との融合が印象的だった。

 ただ、おそらく住民のものだとは思うんだけども、せっかくの綺麗なハイストリート沿いに、びっしりと乗用車が駐車してあったのは、少々もったいないな、と思った。この街に限らず、今回訪ねたイギリスの多くの場所で、住居前の路上がその住民の駐車場、というケースは普通のようだった。地理的にも車がないと生活できないし、古い町並みは保存しないといけないから駐車場も満足に作れないし、路駐というのは妥当な線なんだろうけどね。

街並みとマーケットホール跡

路註だらけの街並み

駐車場は安め

普通の民家の入り口もおしゃれ

肉屋

英国’14: 8.ブロードウェイタワー

 ボートン・オン・ザ・ウォーターの人ごみに辟易したので、人の少なそうな郊外の観光スポットであるところの、ブロードウェイタワーを目指すことにした。

 ブロードウェイタワーは、ブロードウェイの街から車で15分くらいのところにある、古い見張り塔だ。見張り塔という性質上、周囲が見渡せる位置に建てられていて、そこからはコッツウォルズが遠く一望できるという。基本的に、旅先で高いところに登ると、決まって思い出深い風景に出会える、というのが私の旅の法則にあるので、期待して赴いた。

 そのことはいいんだけども、逆に見張り塔という性質から、周囲に何もない甚だしく不便な立地にあるということには、少々手間取ってしまった。街から近いとはいえ、そこまでの道路が全く整備されていなかった。満足にすれ違うことすら出来ないような、細い林道、農道に毛が生えたようなものを抜けた先に、やっとタワーの駐車場がある。「本当にこの道でいいのか?」「正面から車がきたらどうすれ違おう?」「ここ私有地じゃないの?」などと不安いっぱいのドライブになった。

 しかし、そうまでしてたどり着いたタワーは、そこからの景色も最高だったし、吹き抜ける風も心地よかったし、また小高い丘の上にぽつんと立つタワーの状景も、実によいものだった。

 立地の関係で他の観光客もそう多くはなく、そういった部分でも、特にボートンでの人ごみのあとだっただけに、この場所の印象をよいものにしてくれた。

ブロードウェイタワー

タワー頂上からの眺め

受付兼カフェ

英国’14: 7.ボートン・オン・ザ・ウォーター

 ボートン・オン・ザ・ウォーターは、今回の旅行で最もいまひとつだった目的地だ。

 ボートン・オン・ザ・ウォーターはその名のとおりの水郷で、「コッツウォルズのヴェネチア」などと称されているらしい。流れる小川が清涼感と美観とを生み出している、実に美しい町という前評判だった。

 実際に訪れてみても、たしかに街を美しい小川が貫いていた。今回訪問した日のような夏の暑い日には、その涼しげな流れが目にありがたく、キラキラと光る水面と蜂蜜色の建物との調和が、コッツウォルズの他の街や村とはまた異なる雰囲気を形成していて、興味深いものでもあった。

 ではなにがいまひとつだったかというと、これはもう人。ヒト。人間。ホモサピエンス。これが多すぎた。

 夏休みに入ったこの時期、この水の街には涼を求める観光客が押し寄せていて、とにかく混雑を極めていた。小川の中では子供たちが縦横無尽に暴れ周り、それ自体はほほえましいことではあるものの、とても水の風景を楽しむような、落ち着いた心境にはなれない。英国人の夏のひとコマを垣間見れたという点では面白かったけど、コレジャナイ感が勝ってしまう。

 求めていたものはここにはないと判断し、早々にこの地をあとにしたのだった。

 ところで、ボートン・オン・ザ・ウォーターやストラトフォード・アポン・エイボンのように、英国には説明的な地名が多い。他にもコッツウォルズには、「ストウ・オン・ザ・ウォルド」とか、「モートン・イン・マーシュ」とかがあった。おそらく同一の地名を区別するためのものなんだろうけど、英語に縁遠い日本人からすると、名前の付け方が妙に文学的に感じられて面白かった。

メインストリート

河畔の様子1

河畔の様子2

英国’14: 6.バイブリー

 コッツウォルズの代表的な村の1つが、バイブリーだ。

 バイブリーはウィリアム・モリスが「英国で最も美しい村」と賞賛した村らしい。ウィリアム・モリスって誰やねん、などとは口が裂けても言えないが、そんなに美しいというならば行ってみなくてはなるまい。

 ってことで行ってきたわけだけども、果たしてバイブリーは美しかった。特に、アーリントン・ロウという、14世紀の趣を今に残す一角は、抜群の雰囲気だった。ファンタジー小説やゲームの世界に降り立ったかのごとき錯覚を味わえた。

 コッツウォルズといえば蜂蜜色の石材で作られた街並みが特徴なんだけども、アーリントン・ロウはそれともまた違った独特の雰囲気。まるで時間が止まったかのような、いにしえのたたずまいなんだけども、実際に人の住んでいる家々だというのだから驚かされる。日本でいうところの白川郷のもっと古い英国バージョン、といったところか。

 バイブリーには澄んだ小川が流れていて、そこには白鳥や鴨が浮かんでいた。その水景を通して見る、アーリントン・ロウをはじめとするバイブリーの村の風景も、また絶妙な調和をもったものだった。また、その流れを利用してバイブリー・トラウト・ファームという鱒の養殖場も営まれていて、食事どころや釣堀、特産品の生産地として活用されていた。

 難点をいえば、バイブリーは非常にこじんまりとした、高度に観光地化されていない村で、駐車場すらほとんどなかった、ということだろうか。しかたなく路駐をして凌いだんだけども、路駐の車で景観が乱されているのは残念だったし、その一員に自分がなってしまったことも残念だった(できるだけ遠くの景観に関わらない場所に停めたけど)。

 定番過ぎるバイブリーの風景は、このコッツウォルズの村としては、今思い返しても最も美しかった村の1つとして記憶に残っている。定番には定番たる理由がやはり、ある。

アーリントン・ロウ

民家の玄関

スワンホテル

小川に泳ぐ白鳥