ストラトフォード・アポン・エイボンといえば、英国の産んだ希代の劇作家ウィリアム・シェイクスピアの故郷として広く知られる街だ。地理的には、今回4日間滞在したコッツウォルズ地方の、最北端に当たる位置にある。
そんな街なので、観光の目玉も当然シェイクスピア関連のものが主となる。シェイクスピアの生家を含む「シェイクスピアセンター」、シェイクスピアの孫娘夫婦の家「ナッシュの家」、シェイクスピアの嫁の実家「アンの家」などなど、これでもかのシェイクスピアづくし。孫娘夫婦の家とか、嫁の実家とか、いくらなんでも便乗しすぎだろ、と思わないでもないけど、そこはガーデニングの国イギリス。家そのものだけではなく、その庭園を見事に整備することで、観光地としての体裁を維持しているらしい。
とはいえワタクシ、恥ずかしながらシェイクスピアの作品なんて、本で読んだことも、演劇をみたこともない。ロミオとジュリエットのバルコニーのシーンをなんとなく知っているくらいで、オセロもリア王もあらすじすら知らない。そんなわけで、「一応有名なところだから近くに来た以上は行ってみたけどさほど興味はない」という立場で、軽めに観光をしてきた。
B&Bで朝食を採った後、30分ほどのドライブでストラトフォードに到着。3、4層くらいの屋内駐車場に車を停め、観光を開始した。
ちなみに英国では駐車料金は前払い、というのが多かった。駐車場に車を停めたら、発券機で停めたい時間分のチケットを買い、それをダッシュボードに外から見えるように置いておく。定期的にチェックしに来る(らしい)係員が、チケットがなかったり時間切れだったりする車を見つけると、その所有者にいくばくかの罰金請求が届く。というようなスタイル。
今回、そんなに興味のなかった場所だから、短く見積もってランチ時間込みで3時間のチケットを購入したんだけども、この見積もりが甘くて失敗した。理由は後述しよう。
まず観光したのは、王道のシェイクスピアセンターだ。センターの展示と、整理された庭園と、シェイクスピアの生家とが合体したような、複合観光施設だった。ストラトフォードに来た以上、当然観なければならない場所ではあるんだけども、当初の予想通り、シェイクスピアに興味薄な私としては、別段面白いところではなかった。
特に辟易したのが、有名な観光地かつ夏休みなだけに、中国系の観光ツアー軍団が大挙して押し寄せていたことだ。人が見ているもののまえに強引に割り込んでくるわ、ぎゃーぎゃーうるさいわ、と迷惑極まりない。このおかげで落ち着いて見物することができなかったということも、この場所の印象をマイナスなものにしてしまった。
続いてシェイクスピアの孫娘婿の家であるところの「ナッシュの家」なるところにもいったんだけども、印象は同じ。こちらはややマイナーなせいか中国系観光ツアー客はいなかったけども、シェイクスピア本人の生家にすら興味を抱かない私が行っても、本人の生家以上に面白く感じるわけもなかった。
純粋に街として見ても、ストラトフォードのメインストリートはちょっと観光地化されすぎな感じで、私の興味の外にある場所だな、と感じた。
低調な盛り上がりしか感じないままに、ティールームでランチを取りながら次の作戦を練ることにした。なんとかもう1つ、この街でいい印象を残して帰りたい。
ええと、結局シェイクスピア関連を観ても、そんなに気持ちは上がらないんだよな。よし、それならばエイボン川のほとりまで行って、ナローボートなんぞを眺めるってのはどうだ。また違った印象が抱けるに違いないぞ。ナローボートの行きかう風景は、いかにも古き良きイギリスといった趣のものだし、きっといい思い出になるに違いない。
・・・となかなかいい計画を思い立ったんだけども、そこには致命的な欠陥があった。
気が付けば駐車場の時間切れまで、あと20分程度となってしまっていたのだ。20分ではランチを取ったティールームから、エイボン川の河畔までいって、駐車場に戻る時間はない。かといって今から駐車場までいって、1時間ぶん発券しなおすのも時間的、体力的に厳しい。うーん、今回はここまでであきらめざるを得ないか。
ってなわけで、なんだか消化不良の状態のまま、すごすごとストラトフォードをあとにしたのでした。
教訓:1度きりの旅行なんだから前払い駐車場はケチケチしないで長めに買っておこう
シェイクスピアの生家
シェイクスピアセンター内の庭園
センター前の街並み