カテゴリー別アーカイブ: ツーリング

日記: 10月1日(2011年)

 寒い寒い寒い寒い寒い寒い、寒いわ!


焚き火をしても寒い

 はい、全国の自宅でぬくぬく過ごしている皆さんこんばんは。今晩はワタクシ、冬の足音聞こえるキャンプ場で寒さに震えております。

 いやー、今回ばかりはいろいろと選択を誤ったよ。
 
 きっかけは、てっきり雨だとばかり思っていた週末の天気予報が、突然土日ともに晴れに変わったこと。ちょうど遠出したい気分が高まっていたところだったので、これは久しぶりのキャンプツーリングしかあるまい! そう思って家を出たんだけども、この時点でまず1つミスを犯してしまった。

 出発を決意した土曜の昼の時点で、家の中の気温が暖かかった…というか暑かったもんだから、油断して夏装備で出発してしまったのだ。10月にTシャツとメッシュジャケット。冷静に考えると無謀極まりない装備なんだけど、昼過ぎに急にツーリングを決意したもんで、ちょっとあわてていたのだ。

 さらに失敗したのが、目的地の選定。気温のこととかなにも考えずに、2年前に行った●山牧場キャンプ場を目指したんだけど、ここ、標高1200メートルの高原だったんだよね。100メートルで0.6℃気温は下がるわけだから、麓から大体5-7℃は気温の低い場所ということになる。一気に秋めいてきて、朝晩の気温もぐっと下がりがちなこの時期に、好き好んでさらに寒いところへと向かってしまった。


肉を食う!ご飯は一瞬で冷や飯

 そういう失敗の結果が、これだよ!

 せっかくのアウトドアライフなのに、アウトドアにいると寒い。死ぬ。いられない。

 ただでさえ気温が低いところへもってきて、しかも開けた丘の上に広がるキャンプサイトは、風をさえぎるもののない吹きっさらし。推定気温7、8℃、体感気温5℃。完全に冬。焚き火で暖をとろうにも、暖気はあっという間に風で吹き飛ばされてしまい、まったく暖かくならない。

 とりあえず体温を生むために肉を焼いて食い、あとは速やかにテントの中に引きこもって、翌朝の日の出を待つ以外に、私には採る術がなかった。

 で、翌朝。


不思議な米袋&カレー

 昨晩からの強風も落ち着き、快晴。8時ごろになるとテント内の気温もぐんぐん上がってきて、昨晩の極寒地獄がウソのような気持ちのいい秋の陽気になった。

 いつものように、米とレトルトカレーで朝ごはん。昨晩の、早く終わらせることのみを主眼においた、作業のような炊事とは打って変わって、気持ちの余裕を持って、静かな自然の中で、ストーブの燃焼音に耳を傾けながら、のんびりと炊事することができた。あぁ、これだよ、これ。こういうゆっくりとした時間の流れを得るために、長駆ここまでまできたんだよ。

 あいにく、少し米の炊け具合が悪くて、不完全なカレーライスになってしまったけど、そんな欠点すらもアクセントにして、久しぶりの野外朝食を楽しむことができた。

 その後、昨晩のテントに引きこもった時間を取り戻すかのように、昼前までのんびりと太陽の下で読書などをして過ごして、正午近くになってやっと私は帰路に着いた。


道の駅「しもにた」のカツ丼

 帰り道では、道の駅「しもにた」でカツ丼。下仁田といえば下仁田こんにゃくと下仁田ねぎが有名らしいんだけど、それに加えてなぜかこのあたりでは、新名物(?)とすべくカツ丼推しをしているらしい。あちこちでカツ丼、カツ丼と宣伝されていた。

 そんな力の入れ具合だけに、このカツ丼も道の駅のカツ丼にしてはおいしかった。下仁田ねぎらしきねぎも入っていたり、刺身こんにゃくもついてきたりと、ご当地感が豊富で悪くない。

 朝からカレー、カツ丼とやや膨らみすぎなおなかを抱えながら、少しリッチな気分で帰り道を進んで、今回のツーリングは幕を閉じたのでした。

日記: 7月14日(2011年)

 東京都在住でバイクに乗ること・・・8年くらい? 先週末、その8年目にして初めて、バイクでお台場にいってきたよ。

 目的はビッグサイトで開催されていた展示会なんだけど、いつもは電車で行くところを、出来心でバイクでいってみたというわけ。クソ暑い中で、満員電車に揺られるよりは、メッシュジャケット越しの風を浴びたほうがいいんじゃないか、とか思ったのもある。

 で、結論からすると、いまいちでした。

 平日の産業道路なせいか、無粋なトラック(仕事をしてるんだよな、すまん!)が多くて情緒もクソもないし、案外道路が汚いし、さほど景観も良くないし、やっぱり都内は都内だと思った。走るための場所じゃぁないね。レインボーブリッジも渡ったけど、渋滞がひどくてすり抜けをするほうに集中してしまい、そこからの景色なんて楽しむどころではなかった。ま、それでも初めてのレインボーブリッジだったので、反射的にヘルメットの中で、「レインボーブリッジ封鎖できません!」とかつぶやいてしまったのは、無理からぬことだけどもね、うむうむ。

 ちゅーことで、湾岸ツーリングなどは楽しくもなんともないということがわかった。わかったことこそが収穫だ。結局のところツーリングの楽しさは、走る場所以上に、交通量と言うものが大きく左右するものなんだよね。だからこそ、カントリーサイドは楽しいのだ。

 今回唯一楽しかったのは、渋滞中に前を走っていた「Y」ナンバーのハッチバックのリアウィンドウ越しに、後部座席にいた外国人の子供が、私に向かって手を振ってきたことかな。私が手を振り替えしてあげると、大はしゃぎして、それを運転手のパパに報告していた。思わず私もニヤリ。

 やはりバイク乗りは子供のヒーローだ。

日記: 8月29日(2010年)


行程図

 久しぶりのキャンプツーリングに行ってきた。

 今回の目的地は、ビーナスラインを走破しての蓼科高原周辺だ。幼少の頃、我が家の夏のリゾートといえば、毎年蓼科高原というのがお定まりになっていたので、私にとっては親しみ深い土地。もうバイクに乗るようになってからも、その前の車の免許しかない時からも、何度も行っているところだけど、何度行ってもいいところだ。

 でもそんな蓼科高原も、キャンプ道具を担いでいくのは初めて。実に楽しみにして出発した。

 【シーン1: 出発】


愛車の旅装2010

 トップケースを導入して以来、初めてのキャンプツーリングのパッキングは、こんな感じになった。

 衣食住のうちの、「住」の部分、すなわち、テント、チェア、テーブル、マット、シュラフ、といったものが防水ザックの中に入っていて、それ以外の「衣:着替え」「食:ストーブ、コッヘル等」はすべてトップケースというような住み分けになっている。

 サイドケースよりもパッキングしやすい上に大容量。それもいいんだけど、何より安心なのは防水性能だ。過去のキャンプツーリングで、わりと雨に祟られてきた私にとって、この構成の防水性が実に心強かった(今回は雨に降られなかったけど)。

 また、キャンプ場での「簡易金庫」になるのも少し安心感があった。今までは「鍵のかかる空間」が全くなかったから、トイレ一つ行くにも少し安心度が増した。いいこと尽くめだ。

 【シーン2: 朝食カフェ「キャボット・コーヴ」】


キャボット・コーヴ

 以前偶然目にしたドライブ記事で紹介されていた、「軽井沢の朝食専門カフェ」なるものが気になっていた。

 とはいっても、もちろんこんなオサレな店そのものには、そんなに興味はない。ただ、供されるメニューの中に、エッグベネディクトがあるってのに強く惹かれた。

 おなじみ「エッグマックマフィン」の原型であるところのエッグベネディクトは、ユアン・マクレガーの世界一周ツーリングの終盤で、ついに北米大陸に入った彼が朝食として頼んだ食事として、強く記憶に残っている。それまでの過酷な状況を乗り越え、馴染み深い欧米文化に触れたことの象徴のようなメニューだった。それ以来エッグベネディクトは、「ツーリングの朝に食うのはイカス」というメニューだと思うようになってしまったのだ。

 ってことで、そんなエッグ・ベネディクトを食って始まるツーリングは良かろう、と思ってここに早朝から向かったんだけども・・・。まぁ、カッコツケだけのためにいくには、少々過酷だったかな。

 まず朝8時につくために、東京発が6時前だったこと。そして8時前についたのに、すでに10人以上並んでいたこと。最後に、シャレオツな店なので、カッポーが多く、ソロツーでいくにはちょっと悲しかったこと。そんな点を思うと、まぁ、私には朝マックが分相応だったかもしれないな。トホホ。

 でも、店自体の雰囲気や、エッグ・ベネディクトの出来は良かったよ。ティーもポットできてがぶがぶ飲めたし。家族や恋人と来るなら、そしてその中に「待つ」ことができない人がいないなら、お勧めできると思う。

 【シーン3: ビーナスライン】


この先が行き止まりだったとは…

 信州ツーリングのハイライトといえば、いうまでもなくビーナスライン縦走だ。

 東京からのビーナスラインツーリングといえば、中央道でアプローチし、小淵沢や諏訪南で降り、ビーナスラインを北上し、霧が峰→美ヶ原→霧が峰、と往復するように走るのが常。でも、正直私の走り好き度や体力からすると、往復するのはちと厳しいんだよね。なので今回は、行程図にもあるような周遊コースとして、同じ道を往復しないようにした。

 朝カフェの軽井沢から、上田へむかい、そこから美ヶ原高原まで一気に駆け上る。そこからがビーナスラインだ。

 ここでちょっと道を間違えて、行き止まりに行き当たったりもしてしまったんだけど(行き止まりの茶屋のおばちゃん「ちがうよ、うん、1時間くらい戻りな」)、そんなトラブルを楽しみつつ、ビーナスラインを南下。和田峠、八島湿原、車山、白樺湖を経て、これまたツーリングの定番道路、メルヘン街道に行き当たるまで、途中何度かの休憩を挟みながらも走りぬいた。

 少し曇り空だったのが残念だったけど、天空を走っているかのような道は、さすがにビーナスラインだった。午前中にビーナスラインを南下する人は少ないのか、対向車線よりも交通量も少なく、実に快適に走ることが出来た。

 【シーン4: 巨大かき揚げの店「利休庵」】


かき揚げ天ざるそば

 巨大なかき揚げ丼を出す店として有名な和食屋「利休庵」で」昼食をとった。

 私が頼んだのは、有名なかき揚げ丼ではなく、かき揚げ天ざるそば。かき揚げ丼ほどのインパクトはないものの、それでもざるそばについてきたかき揚げは巨大で、なかなかの壮観だった。

 食べてみると、見た目の割りに大味ではなく、中までしっかりサクサクの良質なかき揚げだった。惜しむらくは、1本だけ乗っかっている小ぶりな海老を除けば、それ以外の具材はすべて野菜ということで、その辺が少し物足りなくもあった。でも、それを差し引いても、揚げたてでサクサクとした野菜天は、ボリューム十分でおいしかったよ。

 そばのほうは10割そばだったのかな? かき揚げに気をとられてあんまし気にしてなかったけど、10割だけにぼそぼそと短いそばだったけど、これはこれでおいしかった。ボリュームが少し少なかったけどね。

 話題性を抜きにすれば、そばを割り増しにして、かき揚げを割り減らすのが、バランスはよさそうだけど、まぁ、この店でそれを言うのは野暮ですな。

 【シーン5: 松原湖高原オートキャンプ場】


本日のホテル

 ビーナスラインを抜け、さらにメルヘン街道で麦草峠を越えて、今回の野営地である松原湖高原オートキャンプ場に到着した。

 サイトは大きく4つのサイトに区切られている広いキャンプ場。全サイトが林間サイトで、夏場のキャンプをするには、日差しが少なくて助かる。

 値段はバイクなら840円と安く、バイク乗り入れ可、直火可、ゴミ袋支給あり、トイレそこそこ綺麗、そんなに混んでない、至近に温泉施設あり、と申し分のないシチュエーションだった。プロキャンパー的には、そろいすぎていてダメだダメだ!ってことになるのかもしれないけど、そうではない大多数のヌルキャンパーにとっては、絶好のキャンプ場のように思えた。

 ってことで、サイトを見回って、よさげな場所にテントを設営。本陣とした。

 テント張りや、その時の注意点なんかもわかってきて、落ち着いて場所を選ぶことができたよ。以前はなぜかあせって場所を決めてしまって、ちょっと失敗感があったこともあったからね。いいぞいいぞ。

 【シーン6: 八峰の湯】


ヤッホーの湯

 キャンプ場とおそらく同じ経営母体(小海市?)が運営している温泉施設、八峰の湯

 源泉かけ流しの湯船をはじめ、露天風呂、岩盤浴、土産物屋に食事処などがそろっている施設。ここで今回はツーリングでかいた汗を流してきた。

 露天風呂からは八ヶ岳の峰峰が一望できて、なかなかよい気分。湯船に入ったり、ほてった体を夕暮れ時の風で冷ましたりといったことを繰り返して、ゆっくりと温泉浴を楽しんだ。

 この温泉の存在は、キャンプ場の価値を高めるね。私は普段、こういう共同浴場がおちつかなくて、あんまり好きじゃないんだけど、ツーリングの時だけは楽しめるんだよなぁ。きっと普段嫌っている原因にある潔癖観念が、ツーリングをしているとなくなるからだな。我ながらめんどくさい精神構造だけども。

 【シーン7: 一人BBQ】


火は飽きない

 いつもどおりの焼肉ディナー。

 ・・・はあっさりと終わった。

 送風機がなぜか壊れていて、火熾しのときに少し苦戦をしたものの、まぁ普通に炭火焼肉を楽しむことができた。でも、もはや新鮮味もないので、今回は詳細は述べない。しかし炭火があると、1本30円のスーパーの安い焼き鳥すらも美味になるなぁ。うまし!

 また、前回のツーリングで飲みすぎたためにひどい目にあったことを教訓にして、お酒は控えめにしておいた。ウィスキーをシングル程度だけ舐め、それだけ。あとはミネラルウォーターで済ませた。ま、のんべえではないし、特に不満もないな。

 で、その後やることもないので飽きるまで火遊び。林間サイトなだけあって、燃料となる木の枝はいくらでもある。その辺に落ちている枝を拾ってはくべ、拾ってはくべているうちに、夜もふけてきたので、眠りについた。

 【シーン8: さらば信州】


八ヶ岳連峰を背に

 翌朝。

 今回はついに雨にたたられることもなく、頭痛に襲われることもなく、至極快調に次の日を迎えられた。

 飯を炊き、レトルトカレーで腹を満たし、さっさとテントをたたんで、さぁ帰ろう。

 いつも私は、夜が明けて翌朝になると、妙に満足してしまって、てきぱきと帰り支度になってしまうんだよね。「帰る」という残りの仕事を片付けることに、一心不乱になってしまう。

 そんなわけで朝5時におきた私は、7時過ぎにはキャンプ場をあとにして、一路帰路に着いたのだった。

 写真は帰り道にみえた山々。朝の澄んだ空気の中で、あまりにも綺麗だったもんでついついバイクを止めて撮影してしまったんだけど、この先数十キロにわたって、このクラスの景色が続こうとは、この時はまだ気がついていなかったのであった。

 ※行程図の「らくやきおじさんの店」については、後日述べたい。

日記: 11月1日(2009年)

 到着したキャンプ場は、海まで徒歩3分。炊事場、コインシャワー、トイレ、極めて清潔。ウォシュレットまであり。場内電灯あり・・・という、節約を旨とすることの多いバイクツーリングで利用するにはやや高級すぎる、いわゆる高規格キャンプ場というところだった。1区画5000円というような、本来はファミリーキャンパー向けのキャンプ場だ。

 なんだけども、このキャンプ場ではその場内の一角を・・・というか、余ったスペースを、バイク用の区画としてテント1張2000円で使えるように用意されていた。2000円でもかなり高いけど、海至近というロケーションと、コース的に都合のよい立地、そしてなにより、バイクでは無縁だと思っていた高規格キャンプ場を覗き見るチャンス、ってことでここに陣を張ることにした。


どたばたと設営完了

 さて前回言ったように、夕方という明るさを通り越し、夜というべき時刻に到着したので、時間の猶予はない。完全な暗闇になる前に、テントを設営せねば。視界が悪い中、しかしテキパキと設営を進めていく。こういう場面では、「月明かりでも設営できる」がウリの我がテント、ムーンライト2型の実力が存分に発揮できた。設営自体にも、すっかり慣れた感じで、我ながら頼もしい。

 テントが無事設営できたら、もうやることはない。飯だ!

 そもそも「野外で1人焼肉宴会」を夢見てキャンプツーリングをはじめ、しかし過去2回とも雨にたたられたわけだけども、今回はついにこれを達成できた。感無量だ。


肉カモーン

 使用3回目で、だいぶ煤けてきたピラミッドグリル・コンパクトを組み立て、炭を熾す。同時に、ストーブとコッヘルと不思議なめし袋を使って、炊飯も開始だ。今晩のメニューは、肉、飯、酒。それだけ。潔い。

 10月末ともなると、日中はともかく、夜はやはり冷える。薄手のダウンジャケットを羽織って、万全の構えをとりつつ、1人宴会のスタートと相成った。

 たまに脇を通りかかるファミリーキャンパーの好奇の視線(被害妄想)を、鋼鉄の精神力でシカトしつつ、食い、飲み、食う。暗闇の中で、赤熱する炭火と焼かれる肉とを見つめながら、静かに飲食をしているそのイメージは、昔のネスカフェのCMのようで、妙なヒロイズムに浸ることができた。リアルモンハンだぜー!みたいな。ヒロイズムというよりもナルシズムかな。


道の駅で買ってきたペールエール

 黒ビール2缶、地ビールのペールエール1瓶、安物のブラックニッカの小瓶1つを空け、豚と鶏で合計400gほどの肉も食いつくし、大満足。この日は気持ちよくテントに収まって、ぐっすりと寝た。

 しかし。地獄はここからだった。

 翌朝の目覚めは、頭痛とともにきた。ガンガンガンガン。今まで飲酒でこんなに痛くなったことはない、というくらいの激しい頭痛に襲われた。また吐くほどではないものの微量に胃のムカツキも感じる。いわゆる二日酔いというやつになってしまったらしい。

 ろくに水分も取らずに、酒だけ飲み続けたのが敗因だったのだろうか。うーむ、普段飲みつけないで、イベント時にだけ飲む人間は、こういうときの加減が下手で困るよね。まぁ、私のことなんだけども。


朝の外房の砂浜

 ってことで、困った。出発することはおろか、テントの撤収作業すら億劫なほど痛い。今日は、勝浦の朝市を見に行くとか、九十九里浜沿いの道を気持ちよく走るとか、そんな素敵な予定に夢膨らませていたんだけど、もうそれどころではない。無理をして朝の海岸線を見に行ってみたけど、この日の観光的行動は、これが最初で最後になった(これ以降、写真はない。撮る余裕がない)。

 チェックアウトギリギリの11時までテントで寝込み、50%ほど回復したところでよろよろと出発した私は、「最短距離で東京に帰る」ということだけを目的に、コースを取った。

 本来の目的のひとつだった、そして実は一番期待していた九十九里浜沿いの道も、最短距離で東京へ向かうためには、その1/3程度を走っただけで抜けなければならない通過経路でしかなかった。苦渋の思いで海岸沿いから進路を東京に向け、東金道路を目指す。

 しかし私の体調は、そこで限界をむかえてしまった。なんとかたどり着いた福俵PAでバイクを止めた私は、倒れこむようにベンチにダウン。そこで仮眠を取ることにした。

 は!

 目が覚めると、暴風が吹き荒れていた。この日は、季節はずれの夏日だったらしく、絶好の行楽日和ではあったんだけども、その気温の大きな日較差が強風を生んでいた。私は眠りから目覚め、風の強さに一瞬呆然とした後で、大事なことに気が付いた。仮眠をとる際に、無造作にその辺においてしまった眼鏡と手袋がないのだ。

 これだけの暴風だ。きっと吹き飛ばされてしまったのだろう。

 破れかけの手袋はともかく、眼鏡はまずい。最悪の場合コンタクトレンズが荷物にあるから、頭痛に耐えてでも装用すればいいけど、それでも大事な眼鏡を失うのは痛い。車道で粉々になっている眼鏡の絵を想像して、青くなって周囲を見てみると、それは信じられない光景だった。

 私のバイクのシートバッグをくくっているゴムコードに、なぜか眼鏡と手袋とが風で飛ばないように挟み込まれていたのだ。

 おそらくは周囲を通りかかった誰かがそうしてくれたのだろう。なんという親切か。私は全く気が付かなかったのだけど、ということは逆の可能性を想像すれば、荷物を奪われていても気が付かなかったということでもある。最悪の事態と、実際に起こった事態との格差があまりにも大きく、感動してしまった。

 日本ってやつぁ、なんてすばらしい国なんだ! 福俵PAの親切な方、本当に有難うございました!

 体調もだいぶ復調し、親切に触れた嬉しさもあいまって、残りの帰路はさほど苦痛ではなかった。朝から何も口にしていないことを思い出し、市川PAで朝食兼昼食のミニカレーを食べて腹を満たし、そこからは一直線に我が家に帰っていったのでした。

日記: 10月31日(2009年)

 この週末は、千葉房総半島一周キャンプツーリングに行ってきた。


行程図

 これから冬が近づいてくるにつれ、キャンプツーリングは気温的に厳しくなってくると思われるので、これがきっと今年最後のキャンプになる。だからこれを今年のツーリングの集大成とすべく、気合を入れて出発した。

 首都高湾岸線から東関東自動車道、京葉道路、館山自動車道と、次々に高速道路を乗り継いでいく。ETC割引制度導入以降、サンデードライバーが激増していて、散々な目にあうことが多い高速道路のツーリングだけども、この日は首都高の一部区間以外は快適そのもの。市原SAで少し休憩をしただけで、あとはほぼノンストップで現地まで移動することができた。行楽シーズンも終盤だからかな?

 さて今回の第一の目的地は、「ばんや」だ。「ばんや」は保田漁協直営の海鮮レストランで、様々なメディアでも紹介されている超有名店。ここで海の幸を食するのが、今回の目的のひとつなのである。


込み合う店内

 私が「ばんや」に到着した時刻は11:30頃。混雑することで有名なので、行列に並ぶことを覚悟していたんだけど、運よく待ち時間ほぼゼロで着席することができた。1人だったから、隙間の空席にするっと入り込めたことも、プラスに働いたのかもしれない。でもその後10分も経ったころには、店の前には順番待ちの人々が、20~30人ほどひしめき合っていたので、ここは基本的には「並ぶ店」だと思ったほうがよさそうだ。そういうのが嫌いな向きにはオススメできない。

 壁の掲示板を見ると、刺身、煮魚、焼き魚、揚げ物、と様々な海鮮系のメニューの書かれた札が掲げられていた。ここの名物は、巨大なイカのかき揚げ丼とか、新鮮な刺身などらしい。しかしこの日の私は、どうしても焼き魚が食いたい気分だったので、マコカレイの塩焼き定食をオーダーすることにした。魚種の選択は、ただ単に「食べたことがなかった」というもの珍しさによるものだ。


食いかけスマヌ

 待つこと20分弱。混雑っぷりと、焼き魚という調理法があいまってか、だいぶ長めに待たされた後で、やっとマコカレイの塩焼きが到着した。マコカレイとはなんぞや? と思っていたんだけど、見た目は単なるカレイですな。そして食ってみての味も、実にカレイっぽいというか、淡白な白身魚だった。おいしいんだけども、淡白すぎて物足りないともいえる。これは揚げたり煮たりしたほうがうまい系統の魚だな。

 ぺろりと塩焼きを食い終えた私は、順番待ちで混み合う「ばんや」を速やかにあとにした。

 この混み合いには、ETC割引とアクアラインの値下げも、大きく影響しているのかもしれない。アクセスしやすくなった内房に行ってみよう、というアクアライン特需の流れの中では、目的地と定めるに実に適当な位置にある店なのだろう。店にしてみれば願ったりかなったりな僥倖だろうけども、私のようなETCのない身分としては、余計なことをしてくれたものだと思ってしまう。うへうへ。

 今日はこの後、内房の海沿いを南下し、そのまま最南端を通って、ぐるっと外房を北上して、キャンプ場に行く予定だ。下道をそこそこの距離進まなければならないので、頑張ろう。


道の駅でソフトクリームが好き

 走っていて目に付くのは、道の駅の豊富さだ。房総半島はやたらと道の駅の多い土地のようで、石を投げれば道の駅に当たる。そのくらい道の駅がある。ってことで、いくつかの道の駅に意味もなく立ち寄ったりしつつ進んでいった。中には残念な感じの活気のない道の駅もあったり、そうかと思うとそこから10分程度の距離ににぎやかで立派な道の駅があったりする。道の駅に土地の活性化を期待した地方自治体の苦労と、その成功失敗にまつわる悲喜こもごもが偲ばれた。

 南総の道では断崖の下や防風林の隙間から、チラチラと太平洋を横目にしながら進んでいくことになる。切り立った岩山がそのまま海中に没するような、急峻な地形のありようと、そこに波がぶつかり飛沫を上げる様子が、いかにも日本的で気分が出てくる。今までの私のツーリングキャリアは、そのほとんどが山ツーリングばかりだったので、海が見えるというだけでも、相当興奮してくるのだ。


野島埼灯台

 やがて房総半島最南端にそびえる、野島埼灯台にたどり着いた。

 この灯台はお金を払って中に入り、登ることができる。せっかく来たからには、有料と言えども登らないわけには行くまい。わずか200円を払って入場し、「階段とハシゴ」という原始的な手段で灯台の展望台まで登った。

 北の房総半島と、東西南の太平洋とを一望。うむ、いい景色だ。

 しかし実は、私はこういうところで長くは景色を楽しめないたちなんだよね。この日もざっと一望しただけでもう「よし、見終わった」という気分になってしまった。これは「見ること」そのものよりも、「見たことがある」という経験をこそ欲しているからなのかもしれない。我ながら興趣がない感じがするけど、そういう性向なのだから仕方がない。

 景色をざっと網膜と脳みそとに刻み込むと、それですっかり満足した私はさっさと灯台を出て、さっさと出発した。

 よし、今日の寄り道はここまでだ。後はひたすら外房の海岸線を北上し、キャンプ場を目指すぞ。

 鴨川(・・・といえばシーワールド)やら、小湊(・・・といえば三日月)やら、勝浦(・・・といえば朝市)やら、御宿(・・・といえば月の沙漠)やらといった、有名な外房の観光地を通り過ぎ、すっかり日が落ちて暗くなりつつある17:00過ぎに、やっとキャンプ場に到着した。

 しまった! 思ったより到着が遅くなってしまったぞ! 真っ暗になってしまっては、テントの設営がしんどい、急げ!

 (つづく)