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日記: 9月5日(2009年)

 ゲリラ豪雨も日をまたぐ午前0時前には降り止んだ。

 前回の●山牧場では、夜半過ぎまでの降雨がテントを叩いてくれたおかげで、うるさくてなかなか寝付けなかったんだけど、今回は降り止んでくれたおかげで、比較的静かな環境だったので、案外あっさりと寝入ることができた。この辺はおそらく、回数を重ねた(2回だけど)ことによる精神的な落ち着きもあったのだと思われる。


朝のテントの様子

 途中2度ほど目を覚ましつつ、眠ること6時間あまり。午前5時45分頃についにはっきりと目が覚めてしまったので、行動を開始することにした。

 テントの外に出てみると、やや空気に湿り気はあるものの、天候は文句のない快晴。上がりたての朝日が、木々の間を縫うようにして、テントサイトに降り注いでいた。●山牧場の全天360度を覆う青空も良かったけど、こういう木漏れ日の朝も雰囲気があっていいね。

 気分が良くなってきたので、昨日はいきなりの豪雨で、ろくに探索もできなかったキャンプ場を、うろうろと歩き回ってみた。


清流尾白川

 サイトは清流尾白川沿いにあり、サイトを少し下りれば、すぐに川にぶつかるロケーションだ。昨日の雨で増水したため、夜半過ぎまでは轟々とした濁流の音が聞こえていたけど、今はその流れもおとなしくなって、静かに清水を運んでいるに過ぎなかった。釣りや水遊び(危ないかも?)もできそうだし、ファミリー層にも受けがよさそうだね、この川は。

 反面、キャンプ施設は、まぁ昨日すでに体験したんだけど、ダメダメだ。施設は清潔さがなく、トイレにいたっては、昨日の豪雨の影響で半ば水没しているという有様。これはひどい。正直この一事をもって、私のこのキャンプ場への再訪の可能性は、ほとんどなくなったと言っていい。

 散歩もひとしきり済んだので、朝ごはんにしよう。

 まずは、昨晩同様に「不思議なめし袋」で炊飯をする。と同時に、買っておいたレトルトカレーを温め、カレーライスの完成だ。

 今回の炊事にあたっては、昨晩使ったガスストーブは使わずに、焼肉用に持ってきたバーベキューコンロで炭火を熾して当たることにした。せっかく持ってきた資材を使いたいのと、前回は人任せ気味だった火熾しを自力でやってみたいのと、そして今こそリベンジ焼肉(残り物)をすべきだと思ったのと、そんな理由だ。

 インスタントシリンダー(着火材の練りこまれたナンチャッテ木炭)を着火材代わりにして、備長炭に火熾しを試みた。

 試行錯誤すること20分ほどだろうか。なんとか備長炭にも火がつき、火熾しは完了した。うーむ、思ったよりも時間が掛かるものだけど、逆に言えばこれはいい時間つぶしになるな。火熾しは、末永くいい遊び道具になりそうな気がするよ。・・・ってなんだか放火魔みたいな危ないことを言ってるかな? う、うむ、大丈夫、大丈夫。


炭火焼ホルモン

 そんなこんなで完成したカレーライスを食い終わったら、お楽しみの炭火焼肉(残り物)だ!

 昨日の残りの肉に加え、満を持して登場のホルモンを焼く! ちょっと腐らないか不安だったけど、多分大丈夫そうなので焼く! そしてだーれもいない屋外で、朝の木漏れ日を浴びながら、のんびりと焼いては、食う!

 この後に運転があるから、アルコールは摂取できないのだけど、うむ、これは実際至福だ。

 そんな風にのんびりと朝の焼肉を終えた頃になると、続々とキャンプ場に人がやってくるようになった。こんな早朝から来るとは一体なんなのだかはわからないけど、トンカントンカンとあちこちでテントを設営する音が聞こえてくる。ここは登山道の入口だから、ここを本拠地にするとかなのかな。ふむ。

 そんな「今から遊ぶ人」を尻目に、私は「今から帰る」ための準備だ。


乾け乾け

 とにもかくにも、テントを乾かさなければならないので、テントの各面が陽光に当たるように、角度を変え、置き場所を変えて、自然乾燥させる。乾燥させつつ、私はまた椅子に座ってぼへーっとしたり、そのあたりを散歩したりして、自然の空気を全身で味わった。

 周囲を歩き回ってみると、やっぱりこれから尾白川渓谷を散策するという登山客、トレッキング客が多いようだ。キャンプ場にはこないけど、キャンプ場までの道には途切れることなくポツポツと人が通っている。また、キャンプ場に陣地を構築していた人たちは、どうやら子連れのファミリーキャンパー層が多いようで、水遊びをしたりしつつ、川辺で日がな一日宴会をする構えのようだ。

 昨日の雨にたたられた身からすると、のんきなもので羨ましくもある。く。せいぜい好天の中、楽しむがいいさ!

 やがてテントも乾いたので、いよいよ撤収としよう。前回同様に、帰りの予定は特に無しだ。パッキングをして、とっとと東京まで帰ろう。


ふりさけみれば日本晴

 キャンプ場を出て、木々覆い茂る山を出ると、抜けるような青空が頭上に広がっていた。おぉ・・・なんというキャンプ日和。1日これがずれていればなぁ。くぅ。

 一瞬、翌日も休みなんだし、2泊3日計画にしてしまおうかとも考えたけど、良く良く考えて見れば、この日の夜は、別件の予定が東京で入っていたし、着替えも何もないからそうもいかない。

 好天の甲州に後ろ髪を引かれながら、都心に向けて一路中央道を駆け上がって、今回のツーリングを終えたのでした。

日記: 9月4日(2009年)

 暑い夏も終わりが近づき、ちびっ子たちの夏休みも終わった。やっと平穏な週末ツーリングを楽しめるシーズンだ。


行程図

 ってなわけで金曜日に休みを取って、金、土と2日間のキャンプツーリングに行ってきたよ。

 今回の目的地は山梨県。史跡として武田神社、景勝地として昇仙峡、そしてメインの観光スポットとして、サントリー白州蒸留所の見学に行くというプランだ。観光ののち、蒸留所で手に入れたウイスキーでもちびりちびりやりながら、炭火で酒の肴を焼きつつ夜を過ごせればこれ幸い、という想いを胸に出発した。


初狩PAにて

 出発地点の写真は、中央道の初狩PA。都内での出発前撮影を忘れたので、こんなところが旅の記録のスタートだ。

 この日の天気は曇り。現地の天気予報は、出発段階で降水確率40-50%だったので、多分に運頼みの要素を秘めた旅立ちとなった。雨が降らなければいいけど・・・空気がもう今にも雨が降りそうな湿り気&気圧だよ。とほほ。

 ところで今回の積載の様子は、前回の積載よりもだいぶスタイリッシュになっている・・・と思いませんか? 今回は新兵器として、防水ザック、小型テーブル、インフレータブルマットを導入したのだ。よくわからんかもしれないけども、要するに大きなバッグを手に入れて、積載物のサイズを小さくして、全部を1つのバッグにいれた、ということだと思ってください。

 積載がある程度スタイリッシュで、色合いが落ち着いているというのは、私のこだわりポイントの1つなので、その点が向上したと個人的には満足している。衣装ケースをくくりつけるようなのは、私的にはちょっとないのだ。

 初狩PAでは、軽く朝飯がわりに「鶏串」とかなんとかいうものを食べた。唐揚げほどもある大きさの、鶏のモモ肉とおぼしきものが、串に刺さって焼かれているというもの。焼き鳥の親分だと思ってもらえればいい。味のほうは、取り立ててうまくもなかったものの、量が結構あって満腹してしまった。

 そのまま平日午前の中央道を西進する。さすがに平日午前だけあって、道はガラガラ。ストレスなしで甲府昭和ICにまで到着し、下道に降りた。


武田神社

 甲府昭和IC出口から甲府駅前を迂回して、いかにも参道といった雰囲気の武田通りにでると、すぐに武田神社に到着した。2007年の大河ドラマで頻繁に登場したことでもおなじみの、武田信玄の本拠地である躑躅ヶ崎館の跡地に立っている神社だ。

 想像していたよりは、割と小さくまとまった感じの神社だな、というのが第一印象だ。比較的歴史が浅いことと、綺麗に整備され過ぎていることがあいまって、決して悪い雰囲気ではないんだけども、特筆に価するような感動もないというのが率直な感想だ。

 ここは神社そのものよりも、参道を含めた躑躅ヶ崎館周辺の配置とか、「ここに武田信玄がいたのだ」という想像とかに興趣を見出すのがよいのかもしれない。そういう点では、名高い武田信玄ゆかりの地としての「格」は抜群に高いので、歴史マニアならば喜べるに違いない。

 よし、ひとしきり武田神社の観光は終えたので、次の目的地である昇仙峡に向かおう。

 そう思って出発したら・・・ああああああ。ついに雨が降り出してきた。昇仙峡にいたる山道を登っていくにつれ、雨の勢いは増していく。これはまずいなぁ。

 なんとか昇仙峡の白眉たる仙娥滝エリアを越え、ロープウェイ駅そばまでついたところでギブアップ。駐車エリアの木陰で、雨がしのげる場所を探して一旦雨やどりをすることにした。

 待つこと15分ほど。しかし空は分厚い雨雲に覆われていて、一向にやみそうもない。まだまだ先の行程もあることだし、あんまり時間を浪費したくもないな。雨がやむまで待つことをあきらめた私は、駐車場でおもむろにレインスーツに着替え、昇仙峡観光はせずに、このまま雨の中を突き進むことに決定した。

 ほうとうを食うプランもあったけど、鶏串で腹も膨れているし、そんなに好きな系統の食い物でもないし、パスだ、パス!


昇仙峡への道

 途中、なんとか昇仙峡の見晴らしの良い場所で記念の写真だけを撮り、駆け抜けるように通過した昇仙峡を背に、山道を下山した。

 しかしふもとまで降りてみると、あっさりと雨がやんでいるではないか。どうやら今のところは山間部のみの降雨らしい。ぬーん、こんなことならレインスーツに着替えなくても良かったか。と後悔しつつ進む。

 なぜ後悔するかと言えば、多少の雨降り程度なら、服が一時的に濡れても、そのあとに雨がやみさえすれば走行風で濡れた服も乾くんだよね。だからすぐにやむ程度の雨なら、そのまま走っていたほうが結果的にドライな服装を維持しやすくて、逆に中途半端に濡れてから着替えてしまうと、下手に濡れた服をしまいこむことになって、乾かす機会を逸してしまいがちなのだ。まぁ仕方がないな。

 道はやがて甲州街道(R20)にぶつかった。「おぉ、あの都心でもおなじみのR20がこんなところまで」というような感激の仕方をしつつ、そのままR20を長野方面に進んでいく。

 R20の両サイドには、金色に輝く稲穂が敷き詰められた水田が広がっている。ツーリングのたびに思うことだけど、日本は本当に水田が豊かだな。なんとなく気分が良くなり、「その者、青きバイクにまたがりて、金色の野に降り立つべし」とかバカなことをフルフェイスの中でつぶやいて、「ランランララランランラーン」などと口ずさみながら、ハイテンションで進んでいく。

 道の駅「はくしゅう」で休憩をして、レインスーツから普段着に着替えなおしてから、また発進。やがて、すぐ近くにあるサントリー白州蒸留所に到着した。

 サントリー白州蒸留所は、サントリーのウイスキー蒸留所としては、あの有名な山崎蒸留所の次に建設された、第二の蒸留所ということになる。同地で取水している「南アルプス天然水」と同じ、綺麗な水源の水を使用しているということが大きな特徴で、ここではウイスキーの蒸留所見学ツアーと、天然水の工場見学ツアーを、無料で体験することができる。

 今月、別のウイスキーのメッカにも行く予定があるので、その予習として、まず白州にいってみておこうと考えた。これが今回のツーリングのメインイベントなのである。


ポット・スチル

 蒸留所見学ツアーは1時間に1回のペースで行っているらしく、私がついた時点で30分後に、次の蒸留所見学ツアーがスタートするとのことだった。自然豊かな蒸留所内をうろつき、みやげ物売り場などを冷やかして、帰りに買って帰るものの当たりをつけたところで、ちょうど時間になったので蒸留所見学ツアーのスタートだ。

 蒸留所見学ツアーは大きく分けて、1)映像による座学、2)発酵、3)蒸留、4)リチャー、5)熟成、6)試飲、の6パート編成だった。

 全体に広く浅くという感じではあるけど、ウイスキーのできるまでがわかりやすく説明されていたと思う。無料とは思えないクオリティで万民にオススメのスポットだ。

 写真は3)蒸留につかう単式蒸留機(ポット・スチル)。ウイスキー蒸留所と言えばこれだよな、という象徴的なやつだ。ある意味、これを見に来たといっても過言ではない。ガラス越しにしか見ることができず、あまり肉薄できなかったのが残念だ。

 面白かったのは、4)リチャー。一度使用した樽を再利用する際に、樽の熟成力を回復させるために、樽の中を焼き焦がすという作業だ。実際は機械化されているこの作業なんだけど、ここでは昔ながらの、人の手による燃焼行程をデモンストレーションしてくれて、なかなか面白い。着火から消化までの随所に職人の技があったりもして、見ごたえがあった。

 6)試飲は、悲しいかなライダーの私は飲めなかったし、お土産の実演販売的な要素が濃厚だったので、面白くもなんともなかった。見学者の中には、無料で試飲するために来たようなオッサンも多くいたようだけどね。

 そんなこんなで見学を終えた私は、お土産に手ごろな「シングルモルトウイスキー白州10年(300ml)」を買って、蒸留所を後にした。

 あとはキャンプ場に転がり込むだけだ。まずは道の駅「はくしゅう」に再び立ち寄って、併設されたスーパーマーケットで食料品を買い込んだ。この道の駅は、なかなか広いし、スーパーマーケットがあるし、キャンプツーリング視点では利用度の高い、良い道の駅だね。

 そこから山間部へ向かう道を進み、自動車で到達できる限界付近までいくと、登山道の入口のような険しい場所にあるのが、今回滞在予定のキャンプ場、白州観光キャンプ場尾白だ。本当はもう少しふもとにある、尾白の森キャンプ場のほうが、値段も、交通の便も、衛生面でも、ヘナチョコな私にはよさそうだったんだけど、平日はお休みだそうで断念した。

 さて、平日の、天候不安定の、しかもこんな山奥のキャンプ場である。当然他の客などなく、私1人での滞在となった。気楽と言おうか、孤独と言おうか。あえて人がいない時期、場所を狙っているとはいえ、1人となるとそれはそれで寂しいものだな。仕方がないけども。

 到着して、選び放題のサイトのどこにテントを設営しようかと思案していると、突然雨が降り出し、雷鳴が轟き始めた。これはまずい。

 あわててテントを設営する。前回の経験があるので、比較的サクサクとテントの設営はできたものの、設営が終わる頃には、全身の50%ほどが濡れてしまった。

 まぁ、それでもこれが2回目でよかったかな。ここで設営に手間取っていたら、全身ずぶ濡れで、なおかつテント内にまで雨水が浸入するような、それこそ安眠できたかも疑わしいテントしか設営できなかったかもしれない。それに我がテント、ムーンライトは設営が簡単で、設営手順的に設営中に雨水が浸入しにくいというのも幸いした。・・・まぁ雨が降ってくること自体がすでに幸いではないんだけどもね・・・。

 さて、なんとかテント内部の安全は確保でき、安住の地を構築できた。テントの中で着替え、体をざっと拭いて、とりあえず一段落する。しかし平和なテント内から布一枚隔てた外側では、さらに雨脚が強くなっていて、「土砂降り」という域にまで達している。幸いなことにつながった携帯電話で天気予報を見てみれば、この地方は「0時までゲリラ豪雨」だそうだ。

 これはもう1歩も外に出られない情勢だな。不幸中の幸いなことに、明日の天気は晴れだそうだから、今夜さえしのげば何とかなりそうだ。がんばれ私。


ミニキッチンで焼肉ごはん

 残念なのは、前回達成できず(前回はいい方向に断念したけど)、今回こそは、と予定していた「屋外での1人炭火焼肉」のプランは、やはり今度も断念せざるを得ない、ということだ。満天の星空の下で、肉を食いまくる夜はいつ過ごせるのやら。

 さりとて、せっかく買ってきた肉を無駄にするのも忍びない。なんとか狭い前室に調理空間を構築し、今回持参した秘密兵器の「不思議なめし袋」で飯を炊き、炭火ならぬコッヘルで肉を炒めて、無理やりにでも焼肉を食うことにした。

 いざ食ってみると、炭火じゃなくたって肉は肉であって、なかなか美味い。吹き込む雨を気にしながらだから、あせって食ってしまったし、調理空間としてはかなり狭かったし、焦げ付くフライパンを使った無理やりな調理だったけど、こういうアクロバティックなディナーも、まぁそれなりに楽しいじゃないか。うむうむ、これもいい経験だと前向きにとらえよう。

 とにかく、そんな風にテント内での調理&食事を終えて、テキトーに時間を潰してから、明日の好天を祈って就寝したのでした。

 ああ、そういえば登山道の入口に「熊注意」とか書いてあったなぁ。1人で雨で熊。三重苦。四面楚歌。woohoo…。

日記: 7月26日(2009年)

 初ソロキャンプツーリング、2日目。

 アドレス氏との宴会も終わり、テントにもぐりこんだ私は、その日の走行や慣れないキャンプ生活の疲れが重なって、泥のように眠り込ん・・・眠れねぇぇぇぇぇ!

 初めての経験尽くしで興奮していた上に、テントを打つ雨音がやかましくて全然眠れん! しかも、7月末だというのに、標高1200mのキャンプ場は夜が寒い! 長袖長ズボンで寝袋に包まって、やっとこさ快適という気温。

 1時間半ほど寝ては目を覚まし、また1時間半ほど寝ては目を覚ます。そんなことを繰り返して気が付けば時刻は4時30分。真っ暗だったテントの室内が、上がりつつある朝日に照らされて明るくなってきた。これではますます眠れない。


ピンぼけ朝日

 もう半ばヤケクソになった私は、テントを出て朝日を撮影してみるなどという、1人遊び開始モードにはいることにした。カシャ、カシャ、カシャ・・・。うむ、私のヘナチョコカメラでは、夜景など撮れないことがわかったよ。なんという無駄骨。

 撮影会も5分も立たずに飽きてしまったので、トイレにいってもうひと眠り。動いたせいか、はたまた排泄したせいか、また少し眠ることができた。

 今度は午前6時に目が覚めた。もうすっかり太陽も上がり、テント内は昼間と同じ明るさで照らされていた。もうさすがに寝る気はしないな。起きてしまえ!

 テントを這い出て、朝の高原に出てみると・・・うほー!

 昨日の雨がウソのような抜けるような青空が、さえぎるもののない360度全方向に広がっていた。明るい陽光が、僅かに残る芝生の上の雨粒にあたって輝いている。まだ気温も上がっておらず、しかし明るく、陽光は暖かい。これ以上ないコンディションだ。


朝の食卓

 よし、この環境で朝飯にしよう。

 朝食は、「素人が思い浮かべる1度はやってみたいキャンプ飯ランキング」で上位をしめるであろう、「ストーブで即席ラーメン」だ。ストーブというのは、皆さんおなじみの暖房器具ではなくて、携帯できる小さなコンロのようなもの。この上にコッヘル(鍋)を載せて沸かした湯で、即席ラーメンを作り、食うのだ。

 イメージ優先ならベストチョイスはチキンラーメンなんだけど、私はあまり好きではないので、昨日の買出しでチャルメラを買ってきた。

 テントの前に、椅子、テーブルをおき、陣地を構築する。そして厳かな儀式を始めるかのように、ゆっくりとテーブルの上にストーブを組み立て、水を満たしたコッヘルをその上に乗せ、点火する。ストーブからは、想像以上の轟音を発しながら炎が上がり、水を湯に変えていく。・・・おぉぅ・・・いいねいいね。気分が出る。

 そして、麺を少し砕いて投入。お馴染みの作成手順で作り上げ、食う!

 ・・・驚くほど普通の味だ。

 いやー、当たり前なんだけどね。でも、こういうところで食うと、うまそうに思うじゃない? でも、案外普通だった! 所詮は即席ラーメンか! ラーメンは出来上がってしまうと、伸びる前に急いで食わねばならないというプレッシャーもあるから、こういうスローな環境ではあまり向かないのかもしれないな。

 ま、沸騰の儀式が私には楽しかったからいいか。

 食事を終えた私は、しばらく草原でくつろいでいたものの、飽きてしまった。くつろぐことは昨日の降雨前までしていたし、そもそも一晩中寝るためにじーっとしていたので、もうこれ以上じーっとしているのに耐えられないのだ。

 よし、帰る準備でもするか。

 まだ朝7時前だというのに、私はごそごそとテントの撤収を開始した。まだ他の皆さんは寝ているようなので、こっそりと行う。まだ雨で濡れている部分もあったので、とりあえずは水をできるだけ取り除いた後で、太陽に向けて干すことにした。


朝の●山牧場

 干している間に、キャンプ場内を散歩して回ることにした。高原植物と、アブと、トンボと、蜂とに囲まれながら、牧草地を歩く。太陽が高くなってきて、日差しが「暖かい」から「暑い」に変わってきた。これは早く出発しないと、酷暑の中をバイクで走ることになるな。

 30分ほど歩いたり休んだりして、テントまで戻り、撤収。ネットが破れていたので、積載が大変だったけど、予備に持ってきていたゴムコードとミニネットでなんとかなった。備えあれば憂い無しだな。

 帰りは特に事務所に連絡はいらないそうなので、ちょうど起きてきたアドレス氏に別れを告げ、私は帰路に着いた。

 帰り道は、一度佐久市街までもどって、少し南下してR299に乗り、十石峠という峠を経て、本庄児玉ICから関越道に乗って東京へ帰るプランだ。

 十石峠までの道は、途中までは私好みの広く、緩やかなカーブの続く田舎道だったんだけど、山奥深くに行くにしたがって、徐々に道幅は狭くなり、ブラインドコーナーの多発する山道になった。私はビビリなので、ブラインドコーナーは最徐行だ。チンタラチンタラと進んでいくと、次々に地元長野のライダー軍団に抜かされた。うーん、この道をあんなに飛ばしていくとは、命知らずなのか、ニュータイプなのか・・・おそろしや。


十石峠

 そんな走行を1時間強つづけると、十石峠に到着した。峠には展望台とトイレが設置してあり、一応休憩することができるようになっていた。展望台からそこそこ綺麗な景色を眺めたり、私を追い抜いていったライダーの人々と会話をしたりして、一休み(キャンプ道具を積んでいると話しかけられやすい気がする)。

 一休みし終えた私は、今度は峠下りだ。登りと全く同じように、チンタラ進んで行く私を、地元ライダーが追い抜いていく構図を繰り返しつつ、やがて普通の田舎道に降りたった。

 あとはもう、ただひたすら道路を東進するのみである。すっかり太陽も上がりきり、凄まじく暑くなってきた道路の上を、淡々と進む。途中休憩予定だった、「道の駅上野」「道の駅万葉の里」には、多数の地元ライダーがたむろっていたので、鮮やかにスルー。どちらも非常に小さな道の駅で、例えば「道の駅どうし」や各地のPAのような見物の楽しさは少なそうに見えた。


道の駅上州おにし

 で、高速までに経由する最後の道の駅、「道の駅上州おにし」で休憩を取り、カキ氷を食べてクールダウンをした。うーん、カキ氷1杯が350円かー。高いわ!

 そして、あとは高速を走るのみ。ETCのない私は、正規料金を愚直に払って高速に乗り、わき目も振らずに東京へと帰り、今回の旅は幕を閉じたのでした。

 ってことで、初キャンプツーリングは成功のうちに終わった。

 反省点は・・・やはり積載だな。積載そのものの方法もそうだし、荷物そのものを減らすため厳選も必要だ。でも、キャンプ自体はとても楽しかったから、また是非行きたいな。せっかく買ったキャンプギアも使い倒さないといけないし。

 ただ、今回は幸い涼しかったものの、この季節はキャンプは暑くて辛そうだということも想像できた。だから、次は秋になってからにしようかなぁ。目的地は蓼科か山梨あたりが有力候補かな!

日記: 7月25日(2009年)その2

 テントの設営を滞りなく済ませた私は、暗くなる前に施設の確認を行っておくことにした。

 簡単な流し場。水道が届いており、普通に出る。それなりに清潔。飲用かどうかは未確認。調理台。使う気はあまりしない。コインシャワー。200円。普通かな? 水洗トイレ。とても清潔。悪臭もない。

 全般的に値段とロケーションを考えれば、十分以上のような気がする。良いキャンプ場だなぁ。どことも比較はできないけども、たぶん。

 必要な施設の確認を終えて、不安のほとんどは払拭されたので、私はくつろぎモードに突入すべく行動を開始した。

 【風呂編】

 まずは風呂だ。コインシャワーがあることは確認したものの、時間があるのにコインシャワーというのも何か味気ない。インターネットで調べた情報によれば、併設の山荘(山荘あらふね)にある展望浴場が利用できるらしいから、そこへ行ってみることにした。

 果たせるかな、これまたキャンプ場同様に客の気配のない山荘で、遠慮なく浴場を利用させてもらうことができた。定員6名ほどと思われる浴場を、贅沢に独り占めにして優雅なお風呂タイムを満喫。550円だったかな? 何の変哲もない、温泉ではないただの風呂(たぶん)だったけど、展望浴場というだけあって、大窓からの景色はなかなかよかったし、誰にも邪魔されずにのんびりできたことを考えれば、安いくらいだ。

 (なお、山荘の名誉のために付記しておくと、この日は偶然空いていた様子。Webの予約状況は結構埋まっている)

 【くつろぎ編】

 風呂から上がった私は、無理をして持ってきた「くつろぎ椅子(今回のツーリングで最も大きな荷物)」に座り、大空の下でのんびりと本を読んで過ごした。鳥の声と、風の音を聴きながらの読書は実に快適で、心が洗われるよう。うーん、これはなかなか都会では味わえませんな。

 数十分ほどそんな風にして過ごしていると、やっと別の客がやってきた。これまた私と同じくツーリングキャンパーのようで、SUZUKIの原付2種スクーター・アドレスVに荷物を満載しておる様子。よしよし、どんな風に到着から設営の流れをするものなのか、こっそりと見学させてもらおうぞ・・・。

 などと暢気に思っていたら・・・ぽつ・・・ぽつ・・・ザァァァァー!!

 突然の降雨! 他人の見学どころではなくなった私は、あわてて荷物をテント内に非難させ、自分もテントの中に逃げ込んだ。間一髪、私の被害はさほどではなかったけど、到着するなり雨に降られたあの人は大変だろうなぁ。

 しかしおかげで見学どころではなくなってしまったな。雨にぬれてまで見るのは大変だし、さりげなく盗み見るわけにもいかないから、不審者になってしまう。仕方がないので、さらにテントの中に寝転んで読書を続けることにした。

 青空の下での読書も良かったけど、テントの中で風雨を避けながらの読書もまた、未経験の私にとってはオツなものだ。スキットルに入れてきた安物のカティサークをちびちび飲みながら、日が暮れるまで読書は続いたのでした。

 【宴会編】

 さて。ではいよいよ本日のメインイベント。

 飯!

 に突入しましょうか。

 とはいえ初心者でもあるし、そもそも家で料理自体は頻繁にしているので、凝った料理をするつもりは全くない。今回私がやりたかったことはただ1つ。

 「煙や匂いを気にしないで存分に焼肉」

 だ。私をアウトドアに行かしめた動機のかなり大きな部分は、この「合法的1人炭火焼肉」に他ならない。1人で焼肉屋に行けないなら、キャンプをしてしまえ。なんという食いしん坊。しかし、これさえできれば私は幸せに違いない。

 テントの狭い前室でカチャカチャと小さなBBQ台を組み立て、そこにお手軽な成型炭を置く。成型炭は着火材が練りこんであるので、簡単に火がつくというお手軽なもの。100均で売っているのと、ほぼ同じようなものだ。火力や持続力は本物の炭に比べてだいぶ劣るだろうけど、今回のお試しBBQでは、こんなもんでよかろうとチョイスしたのだ。

 ではいざ・・・異常にワクワクしながら点火! ・・・しようと思ったところに、思わぬゲストがやってきた。先ほど雨とともにやってきたアドレス氏だ。むむ?

 「一緒に一杯やりませんか?」

 !?

 なんという神展開。これがキャンパーの連帯感なのか?

 テントから首を出して見れば、少しはなれたところにアドレス氏のテントが建っていた。三角柱を寝かした形である私のテントとは違い、アドレス氏のテントは円錐状のトンガリテント。インディアンの家のような形だ。で、それに付随して、タープが前面に大きく張られていた。このタープの下で雨を避けながら、宴会モードに入ろうという誘いのようだ(付け加えると、見渡せば他にもう1つ、別のカップルのテントが1つ建っていた。結局この日の客はこれだけで、テント3張りの、客数4名だったようだ)。

 そんな楽しげなお誘いは、断る理由が全くない。点火しようとしていたBBQ台と、ジャスコで買ってきた肉とを手土産に、アドレス氏のタープへ乗り込んだ。

 その先は、ただひたすら肉を焼きながら飲み、話し、そして火遊びをするという流れ。キャンプ初心者の私にとって、キャンプ歴が余裕で2桁年を数えるアドレス氏の話は、なにもかもが非常に楽しく、かつ、ためになった。またアドレス氏の持っているアイテムも、私にとってはどれもものめずらしく、またアドレス氏のほうでも私の「くつろぎ椅子」や、BBQ台、それにバイクには興味津々なようで、キャンプアイテム談義、バイク談義でも大いに話は盛り上がった。楽しいなぁ。

 結局、そんなこんなで0時を回るまで、静かに2人で宴会を実施した後、「初キャンプでこんな体験ができたのは、きっと運が良かったのだろうな」と思いながら、私は自分のテントに帰り、床についたのでした。

 夜0時。いまだ雨、振り止まず。しかし心は日本晴れ。

 2日目編につづく。

日記: 7月25日(2009年)

 この週末、ついに私のツーリングは、新しい領域に到達した。

 念願の初ソロキャンプツーリングに行って来たのだ!


総行程図

 前々から、ツーリング先でキャンプ道具を満載したキャンプツーリング・ライダーを見るたびに、「どんなもんなのかなぁ」と興味だけはあったキャンプツーリング。しかし興味は大いにあったものの、キャンプツーリングやソロキャンプはおろか、キャンプそのものすらろくに経験がなかった私は、未踏地に踏み入れる勇気を持てずに、長年躊躇し続けていた。

 んが、今年は「色々やってみる」がテーマなのだ! リアル生産に続いて、思い切って踏み込んで、キャンプツーリングもしてみたぜ! 頑張れ私!

 目的地は、長野県佐久市の●山牧場キャンプ場だ!


満載

 ということで、まずは積載。いつものツーリングとは違い、キャンプとなれば大量の荷物を用意できなければ(剛の者の野宿を除けば)はじまらない。・・・のだけど、今回のツーリングを終えて振り返ってみると、一番難儀したのはこの「積載」だった。

 先代の愛車ゼルビスは、荷掛けフックが多く、リアボックスもつけていたから積載に不安はまるでなかったんだけど、FZ6は積載能力が非常に弱い。サイドバッグを買ったり、荷掛けフックを増設したりして、なんとか積載したものの・・・なんだか不安だ。

 結局、この不安は的中した。写真を見てもらえればわかるんだけど、この積載方法だと、ネットが思いっきりマフラーの噴射口にかぶってしまっているんだよね。私は愚かにも、それに気がつかずに出発してしまったのだ。あまりにもデンジャラスな行為である。

 幸いにも目的地までは、ネットはかろうじて荷物を保持し続けた。でも目的地についた時点で、噴射口にかぶっていた部分のネットは、首の皮一枚残して、ほとんどの部分が融解してしまっていたのだ。

 うーむ、危なすぎる。目的地までネットがもったのは、本当に、本当に運が良かった。もし高速道路で荷物がバラけていたら、と思うと、いくら反省しても足りない。くぅ。

 積載については、現地での応急処置でなんとか帰路も事なきを得たけど、この積載という問題は今後の課題だな。考えねば。

 ・・・ってことで、前置きはこの辺にして、いよいよ出発だ。

 前日の天気予報では、目的地の天気が雨だったため、実はこの週末の決行をあきらめていた。だから、特に早寝早起きもせず、夜更かしEQ2野良レイドを終えてから寝て、朝10時過ぎに目を覚ましたんだけど・・・

 朝起きて天気予報を見てみたら、昨日50%だった現地の降水確率が、今日は30%になっているではないか! こ、これは・・・降る降る詐欺だ!

 くそぅ! 昼まで寝てる場合じゃない! これは行くしかねえ!

 朝シャワーで寝ぼけまなこを、即時強制的にシャッキリさせ、神速で荷造りをし、上写真のように積載を施し、あわてて出発した(あわてたせいで上記のような体たらくなわけですが・・・)。


甘楽PAにて

 今回の目的は、兎にも角にもキャンプをすることそのものだ。だから目的地までは、わき目も振らずに高速道路をひた走る。

 運悪く巻き込まれた、関越自動車道の事故渋滞20kmを根性ですり抜け、たどり着いた甘楽PAで昼飯だ。

 「甘楽PAのモツ煮定食がうまい」という情報を以前につかんでいたので、昼飯はここにすると初めから狙いを定めていた。で、実際食ってみると・・・うんうんうん。これは確かにPAの定食にしては旨いな。辛味噌仕立てだったから、このバイクで暑い季節に食うのはハフハフものだったけど、それでなお満足だ。

 本当はもっと早くに出発できていれば、佐久市内で名物の鯉料理を食おうと思っていたんだけどね。でも今回は出発が遅れてしまったから、実は「代打のPA飯」だった。でも代打以上の満足感を得られてよかったよ。


佐久市街から東進中

 腹も満たされて、あとはキャンプ場へ行くのみ。

 佐久ICで高速を降り、佐久市街のジャスコで今夜と明朝の食材を仕入れ、目的の●山牧場キャンプ場を目指した。

 しかし、だんだんと空模様が怪しくなってきたぞ。空を見上げれば、まだ青空も見えるものの、空に灰色の雲の占める面積が、時を負うごとに拡大していた。うーん、このままだと雨が降るんじゃないか、これは。初キャンプなのに・・・。

 しかし、もはやあとには引けない。雨上等の気持ちで●山牧場キャンプ場へ突き進む。

 ●山牧場キャンプ場は、標高1200mを数える高原に位置するキャンプ場だ。標高700mほどと思われる市街地から、あたかも山越えをせんかという勢いで、ぐいぐいと山道を登っていくと、やがてやや複雑な道路を経て到着した。

 キャンプ場に到着するまでに要した時間は30分ほど。思ったよりも時間がかかった印象だけど・・・佐久まで着けばすぐだ、と思い込んでいたせいかな?


全天360度草原独り占め

 受付で1050円のキャンプ場代を支払い、テントサイトへの道順を教わり、「どこにテントを張ってもいいですよ」という気前のいい発言を背に、テントサイトへと向かう。

 受付からバイクで1分ほどダートを走ると、そこがテントサイトだ。

 一面の芝生に覆われた、いかにも牧草地といった風の、美しい緑の絨毯が広がるテントサイトは、周囲にさえぎるもののない、空の広大なサイトだった。とてもすばらしいロケーションだ。晴れてさえいれば、夜にはそれはさぞ美しい星空が望めることだろう。

 そしてなによりもすばらしかったことは、・・・なんと、私しか客がいなかったということだ! ウヒョー、独り占め!

 初キャンプの気恥ずかしさがあったから、できるだけ人の少なそうなところを選びはした。だけど、まさか一人だけの空間を得られるとは・・・。なんという僥倖。ま、時間が経てばあと何人かはくるんだろうけど、この様子なら、かなり優雅に過ごせそうだ。

 慣れない手つきで、自分の一夜の家となるテントを初設営した私は、こうしてついにキャンプ場での初ソロ宿泊に突入するのでした。

 1日目夜編(写真なし)につづく。