テントの設営を滞りなく済ませた私は、暗くなる前に施設の確認を行っておくことにした。
簡単な流し場。水道が届いており、普通に出る。それなりに清潔。飲用かどうかは未確認。調理台。使う気はあまりしない。コインシャワー。200円。普通かな? 水洗トイレ。とても清潔。悪臭もない。
全般的に値段とロケーションを考えれば、十分以上のような気がする。良いキャンプ場だなぁ。どことも比較はできないけども、たぶん。
必要な施設の確認を終えて、不安のほとんどは払拭されたので、私はくつろぎモードに突入すべく行動を開始した。
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【風呂編】
まずは風呂だ。コインシャワーがあることは確認したものの、時間があるのにコインシャワーというのも何か味気ない。インターネットで調べた情報によれば、併設の山荘(山荘あらふね)にある展望浴場が利用できるらしいから、そこへ行ってみることにした。
果たせるかな、これまたキャンプ場同様に客の気配のない山荘で、遠慮なく浴場を利用させてもらうことができた。定員6名ほどと思われる浴場を、贅沢に独り占めにして優雅なお風呂タイムを満喫。550円だったかな? 何の変哲もない、温泉ではないただの風呂(たぶん)だったけど、展望浴場というだけあって、大窓からの景色はなかなかよかったし、誰にも邪魔されずにのんびりできたことを考えれば、安いくらいだ。
(なお、山荘の名誉のために付記しておくと、この日は偶然空いていた様子。Webの予約状況は結構埋まっている)
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【くつろぎ編】
風呂から上がった私は、無理をして持ってきた「くつろぎ椅子(今回のツーリングで最も大きな荷物)」に座り、大空の下でのんびりと本を読んで過ごした。鳥の声と、風の音を聴きながらの読書は実に快適で、心が洗われるよう。うーん、これはなかなか都会では味わえませんな。
数十分ほどそんな風にして過ごしていると、やっと別の客がやってきた。これまた私と同じくツーリングキャンパーのようで、SUZUKIの原付2種スクーター・アドレスVに荷物を満載しておる様子。よしよし、どんな風に到着から設営の流れをするものなのか、こっそりと見学させてもらおうぞ・・・。
などと暢気に思っていたら・・・ぽつ・・・ぽつ・・・ザァァァァー!!
突然の降雨! 他人の見学どころではなくなった私は、あわてて荷物をテント内に非難させ、自分もテントの中に逃げ込んだ。間一髪、私の被害はさほどではなかったけど、到着するなり雨に降られたあの人は大変だろうなぁ。
しかしおかげで見学どころではなくなってしまったな。雨にぬれてまで見るのは大変だし、さりげなく盗み見るわけにもいかないから、不審者になってしまう。仕方がないので、さらにテントの中に寝転んで読書を続けることにした。
青空の下での読書も良かったけど、テントの中で風雨を避けながらの読書もまた、未経験の私にとってはオツなものだ。スキットルに入れてきた安物のカティサークをちびちび飲みながら、日が暮れるまで読書は続いたのでした。
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【宴会編】
さて。ではいよいよ本日のメインイベント。
飯!
に突入しましょうか。
とはいえ初心者でもあるし、そもそも家で料理自体は頻繁にしているので、凝った料理をするつもりは全くない。今回私がやりたかったことはただ1つ。
「煙や匂いを気にしないで存分に焼肉」
だ。私をアウトドアに行かしめた動機のかなり大きな部分は、この「合法的1人炭火焼肉」に他ならない。1人で焼肉屋に行けないなら、キャンプをしてしまえ。なんという食いしん坊。しかし、これさえできれば私は幸せに違いない。
テントの狭い前室でカチャカチャと小さなBBQ台を組み立て、そこにお手軽な成型炭を置く。成型炭は着火材が練りこんであるので、簡単に火がつくというお手軽なもの。100均で売っているのと、ほぼ同じようなものだ。火力や持続力は本物の炭に比べてだいぶ劣るだろうけど、今回のお試しBBQでは、こんなもんでよかろうとチョイスしたのだ。
ではいざ・・・異常にワクワクしながら点火! ・・・しようと思ったところに、思わぬゲストがやってきた。先ほど雨とともにやってきたアドレス氏だ。むむ?
「一緒に一杯やりませんか?」
!?
なんという神展開。これがキャンパーの連帯感なのか?
テントから首を出して見れば、少しはなれたところにアドレス氏のテントが建っていた。三角柱を寝かした形である私のテントとは違い、アドレス氏のテントは円錐状のトンガリテント。インディアンの家のような形だ。で、それに付随して、タープが前面に大きく張られていた。このタープの下で雨を避けながら、宴会モードに入ろうという誘いのようだ(付け加えると、見渡せば他にもう1つ、別のカップルのテントが1つ建っていた。結局この日の客はこれだけで、テント3張りの、客数4名だったようだ)。
そんな楽しげなお誘いは、断る理由が全くない。点火しようとしていたBBQ台と、ジャスコで買ってきた肉とを手土産に、アドレス氏のタープへ乗り込んだ。
その先は、ただひたすら肉を焼きながら飲み、話し、そして火遊びをするという流れ。キャンプ初心者の私にとって、キャンプ歴が余裕で2桁年を数えるアドレス氏の話は、なにもかもが非常に楽しく、かつ、ためになった。またアドレス氏の持っているアイテムも、私にとってはどれもものめずらしく、またアドレス氏のほうでも私の「くつろぎ椅子」や、BBQ台、それにバイクには興味津々なようで、キャンプアイテム談義、バイク談義でも大いに話は盛り上がった。楽しいなぁ。
結局、そんなこんなで0時を回るまで、静かに2人で宴会を実施した後、「初キャンプでこんな体験ができたのは、きっと運が良かったのだろうな」と思いながら、私は自分のテントに帰り、床についたのでした。
夜0時。いまだ雨、振り止まず。しかし心は日本晴れ。
2日目編につづく。