北の大陸からの侵略軍勢と、我々の地域の盟主とが、和平交渉を行うためのサミットが開催された。
そんな重要な会議の場に参加に、なぜ木っ端勢力の我々が!?
・・・という疑問はわかる。でも、わずか10人ぽっちの勢力である我々も、一応、地域の盟主ギルドの傘の下に入れてもらっている身だ。それゆえに今回のような有事では、盟主の脇を固める張子の虎として、代表が末席に加わることになったりもするのだ。
そんなわけで我々のギルドマスターは、あれよあれよという間に、盟主と2人きりで、敵の侵略軍本陣ど真ん中に、乗り込む羽目になってしまった。
この展開に、マスター本人は大いに慌てていたものの、モブの私としてはこれほど面白い場面もない。マスターの実況を聞きつつ、こっそり私も会談の場に紛れ込んで、会話を傍受したり、写真を撮ったりと、楽しい時間を過ごさせてもらった。
会談で印象的だったのは、やっぱり攻め込んできた北の軍勢の格好良さだ。揃いのユニフォームに身を包んだ兵隊が、一斉に騎馬して去っていく様などは、あこがれずにはいられないものがあった。侵略者といえども、あっぱれだ。
さて、少し会談の背景や結末なども書いておこう。
今回やってきたのは、Ridgeline Allianceと称する北の大陸の軍勢。彼らは軍事大国として周辺に大いに武威を示している巨大な連合勢力だ。そして今回はその中の一雄、特に活発に軍事行動を起こしているNew Fairbreezeという国が、十数騎の騎兵隊を率いて乗り込んできた、という形になる。
地勢的にはRidgeline Allianceの支配領域は、世界の北東端にあり、後背を気にすることなく、西、南西、南の三方をにらんでいればよい、という立地になっている。
Ridgeline Allianceの支配領域から見て、西はどうなっているのかよくわからない。
海を挟んだ南西には大きな勢力がある。どうやらそことはライバル関係になっているようで、すでに何度か干戈を交えているようだ。
そして、彼らから見て南には、我々の住まう土地がある。今までのところ、北の軍勢は南西側の勢力を、主に敵視しているようで、我々方面への関心は薄いように感じられていた。
しかし今回、突然こちらに矛先を変えて、乗り込んできたようなのだ。
そこで急遽、そのあたりの事情を確認し、今後の外交姿勢を決定しよう、というサミットが開催された次第である。・・・たぶん。
会談は、Ridgeline Alliance側の攻撃の口実を、こちら側がなんとかなだめ開戦を回避する、という柔弱な方向性で進んだ。
基本的に、Ridgeline Alliance側のほうが、こちらに比べて戦力が上なうえに、どちらかというとRidgeline Allianceの口実に正義がある(盟主傘下のメンバーが、先にRidgeline Allianceに損害を与えたらしい)ので、実力的にも、心情的にも、開戦を回避したいという心理が働いたようだ。
結果的に、開戦は回避された。
けじめとばかりに儀礼的な決闘(とどめは刺さない)が1戦行われたのち、Ridgeline Allianceの一行は、颯爽と馬にまたがり、北へと帰っていった。
とりあえず平和が戻ってよかった。でも、この平和がいつまで続くのかはわからない。今回の件のせいかどうかはわからないけど、盟主傘下の大きなギルド(我々からすると一応同輩となる)は崩壊してしまったようだし、地域としての防衛戦力や安定感は、サミット後でむしろ下がっている。
のどかだった中世生活も、いよいよキナ臭くなってきたな。ふーむ。