レベルはキャップになり、スキルやビルドもそれなりに試し、一段落した。かな?
・・・という所でこのゲームの私なりの最終的な評価をしておこうと思う。
このサイトに来る、New WorldをスルーしたMMORPG紳士たちに贈る。
【概説】
このゲームの出来を私なりに一言で表現するのであれば
「優れた器と、凡庸な中身」
というようなところではないかと思う。
器と中身とを全く違う会社が作ってるんじゃないか? と思うくらい、それぞれの出来映えに差があると感じられた。1つのゲームの中に、大きな魅力と欠陥とが、不思議に同居しているゲームだ。
【優れた器】
このゲームの特筆すべきところは、サーバーや世界そのものの構築の良さだ。
サーバーが安定しているのはもちろんのこと、世界そのもの、つまり物理法則や、立体構造、シームレスの自然さ、採集物の出現と再生の配置、その他もろもろ、キャラクターを動かす舞台設定が傑出している。
特に素晴らしいのは、今までのMMORPGでは実現できなかった、「オープンワールドの気配」を、濃厚に醸し出しているというところだ。
現実に近い、というような魅力ではなくて、あくまでも既存のオープンワールドに近い、という意味の魅力。どこかで書いたけど、エルダースクロールズオンラインより、New Worldのほうが、スカイリムをMMOにした、というのに近い作品になっていると言える。そういう魅力だ。「オープンワールドをMMOで遊びたい」という昔からある欲求に、かなり精度の高いところで応じている。「こういうゲームが出ないかな」を実現している。それが素晴らしい。
モンスターの種類も少ないし、構造物はコピペが多いし、一見すると手抜き感満載の世界なんだけどね。でも、そういうことがオープンワールドの世界構築の良し悪しを決めない、ということがよくわかる。確かにスカイリムなどだって、別にモンスターの種類や、構造物のバリエーションが多かったわけではなかった。
なので、ただその世界にいるだけで、すでに楽しい。街を出て、木を切る。森のウサギを狩る。皮や肉をはぎ取る。見つけた鉱脈で鉱石を掘る。その1つ1つがオープンワールド感に満ちていて、どこか今までのMMORPGでしていたのとは違う生活感覚を与えてくれる。どこがどう違うせいでそうなるのかはわからないけど、確かに違う。没入感が高い。雰囲気がいい。よくできている。
付随して、これは「中身」に近い「器」要素ではあるものの、一応舞台設定の枠組みとして考えると、勢力間闘争としてのエリアや集落の取り合いというような要素の落とし込み方も、今まであまりなかった概念の割には、うまく機能させることに成功している。それによってプレイヤーには不便を強いることもあるけど、それは納得できる不便さだった。
プレイヤー間経済の存在も、最近のMMORPGの中ではよい部類なんじゃないだろうか。先行して頑張れば、それなりに利得が得られる。頑張り甲斐があるし、才覚も問われる。これもまた器。
【凡庸な中身】
が、よいのはそこまで。器まで。・・・と感じられてしまうのが、本当に惜しい。
キャラクターのレベル設定や武器スキル間バランス、ビルド概念の薄さ、そもそものアクションの挙動の悪さ、移動の不便さ、クエストの単調さ、ダンジョンの挑みにくさ、などなど。いい器の上に乗っかっているものが、肝心の料理が、ことごとくいまひとつなおかげで、もったいない感が強い。
バランス関連についてはいわずもがな。悪い。個人的な主義としては、MMORPGのバランスなんてそこまで取らなくてもいいと思っていて、ある程度はアンバランスで強弱があるほうが、遊びのスパイスになってむしろ面白いとすら思っている。だけどこのゲームに関しては、ちょっとスパイスとして楽しめるレベルを超える、つまり許容できる範疇を超えるアンバランスさだった。スキルやビルドの強弱が激しすぎて、とてもスパイスにはならない。もはや劇薬。選択を誤ると死ぬ。こんなにバランスを取っていないゲームは、初期UO以来かもしれない(世界がよくて、中身がよくない、という点では確かに初期UOに似ている)。
ビルドの概念が薄いのももったいない。武器2つの組み合わせでビルドをなすシステムの割に、武器を切り替えると、切り替え前の武器で得られた効果は失われるので、組み合わせでシナジーがほとんど起こらない。組み合わせは足し算で、掛け算にならない。クラス間バランスが悪いことも相まって、1番強いのと2番目に強いのを取る、がほとんどの場合に最適解になってしまう。ビルドに多様性がなく、つまらない。
アクションの挙動も決して良いとは言えない。特に戦闘時。思った通りに動かせない。慣れればいけるとか、それがいいところとか、そう思う人は思えば良いけど、私にとってはこれは大きな欠点。もっとスルスルとキャラは動いてほしい。攻撃時の足止めはとにかくストレスだし、NPCによって立ち位置から押し出されたりするのも不快。そして武器の当てやすさにも大きく関わっていて、上述のアンバランスさをさらに助長してもいる。
移動が不便。プレイ時間の少なくない部分を、「ただ走る」に費やさせるデザインは、どんな理由があっても肯定的には受け止めにくい。全ファストトラベル無料はさすがに味気ないにせよ「リコールポイント同士の移動は無料」「なんでもないところからのファストトラベルのみ有料」というくらいの便利さにはしてほしかった。有料ファストトラベルは資産を吐き出させる手段、という大義名分があるのかもしれないけど、それでつまらなさを増すのでは本末転倒。なおさら承服しがたい。
クエストは出来の良し悪しを語る必要はないと思う。用意されたクエストの99%は、長大な移動距離を伴う「〇〇を〇匹倒せ(集めろ)」のみ。ほぼ全部これ。誰がどう見ても特筆すべき点はない。いや、MMORPGのクエストなんて、ある意味こうなるのは仕方がないというか、これはこれでいいとは思うんだよ。必要悪というか、様式悪というか。でも、この必要悪に上述の欠点の数々、特に「移動の面倒くささ」が乗っかってくるせいで、単調さが、ただの単調さではなく、「面倒な単調さ」になる。その結果、必要「以上」の悪さがにじみ出てしまっている。食い合わせが悪い。
ダンジョンの挑みにくさも、現代のMMORPGとしてはあるまじきものがある。まず入場にチケットが必要というのがすごい。ダンジョンへの挑戦ごときでも、ゲーム内資産を消費させようという商売根性。ゲーム内資産の飽和をどう制限するかが、MMORPGの課題なのはわかるけど、コンテンツへの挑戦を自由にさせないというのは、吝嗇にもほどがあろう。またダンジョン挑戦のためのグループファインダーがないのも、はっきりと不便だった。「世界観に合わないから制限している」というわけでもなさそうなのは、「PvPのためのグループファインダーは存在する」という点からわかる。できるけどやってない(タンク、ヒーラーを備えさせるのが難しいのかもしれないが)。これは手抜きと断じたい。ダンジョンの入り口が僻地にある場合などは、前述の移動の不便さもクリティカルに刺さる。悪い点のオンパレード。どうしようもない。
【総括】
文章量はだいぶ悪い点に多く割いてしまったけど、実はいい点の光は、悪い点をそれなりに見えなくさせてくれるくらいには、強く輝いている。
総じていえば、とんとんだ。
じゃなかったらこんなに遊んでいない。
駄作では決してない。MMORPGの歴史の一節をこの項で埋めていい。その資格は十分にある。世界の作り方には、エポックメイキングたりえる何かがあるとまで言える。
ただ、こうは言える。
いい点はソロで遊んでいるときに感じられるもので、悪い点のいくつかは他人と絡むことで気が付くものだ、ということだ。
だからソロの機会が多いレベリング中は、いい点は存分に感じられるものの、悪い点はその一部しか感じられない。おかげでゲーム初期は印象がいい点に傾く。
やがて成長していって他人と絡む機会が増えるにつれ、徐々に悪い点を多く感じ始める。
最終的には、それなりに時間を費やしたところで、悪い点が最大値を記録するが、一方でいい点は、プレイ初日からさほど増えはしない。
そういう印象の推移をするゲームだと思えた。少なくとも私においてはそうだった。
ゲーム開始から2週間目くらいまでであれば、80点90点をつけたと思う。
今は50点くらいだ。
平均すれば65点のゲーム。そう結論したい。