カテゴリー別アーカイブ: バイクとツーリング

日記: 1月26日(2013年)

 この週末は、寒いやら年末やら雪やらなにやらで、このところちっとも乗っていなかったバイクに、久しぶりに乗ってきた。しかも夜間の移動に。一応、今年初走行だ。

 いやー・・・当たり前なんだけど、寒かったわ! もう寒いというか、痛いの領域。

 こうなってくると「走りを楽しむ」とか呑気なことは言ってられなくなり、とにかく寒いのが早く終わって欲しい、目的地に早く着いて欲しい、というマインドになってしまう。だから急ぐ。速度を上げる。体に当たる風力が増す。余計寒い。長く寒いか、短く超寒いか、という究極の選択を強いられる。

 無間地獄だった。おー、さぶさぶ。

 さて、また今回は、以前軽く触れたインナープロテクター、「アーマードトップインナーウェア(コミネ)」の初使用も行った。

 感想なんだけども、まず機能性は問題なかった。生地は伸縮性に富んでいるし、体にプロテクターが密着するので、肩や腕の動きを阻害しない。バイクの運転や取り回しには何の支障もなかった。強いて言えば、少し重いな、っていうくらいだ。

 ただし、このプロテクターは当然ながら通常の服の比ではない、ある程度以上の厚みがあるので、組み合わせるアウターによっては、肩や肘が突っ張ってしまって動きに支障が出る、という可能性が大いにあるように思われた。今回の私の場合は、上から羽織ったものが大き目のセーターに、ふわっとしたダウンジャケットだったので、特に窮屈な感じもなかった。でもこれが、ぴっちりしたレザージャケットだったりすると、動きに支障が出るかどうか、などという話以前に、袖が通るかどうか、というレベルの問題が発生することだろう。

 この商品を買う人の多くは、「すでに持っている服装を活かしたい」という動機があるとおもうので、すでに持っている服装に、容積のゆとりがあるかどうかは、よくよく考える必要がありそうだ。

 窮屈なく着ることができて、プロテクターのラインが見えにくい、という条件だと、ほとんどダウンジャケット専用という気さえする。最近の服はアウターもタイトなものが多いし。購入時にはそのあたりの熟慮が必要だろう。

 それともう1つ、冬の着用時に期待した効能に「防寒性」ってのがあったんだけども、これはほとんどおまけ程度だった。プロテクターに防寒性を期待するくらいだったら、当然ながら保温性の高いロンTを1枚増やしたほうが温かい。しかもこれを着ると、その厚みに阻まれて、それ以上インナーを増やすのが難しくなってしまうから、相対的にむしろ寒くなってしまうまである。

 とはいえトータル的には、冬装備の安心感は増したから、十分満足はしている。でも、そもそもやっぱり、冬に乗るのは寒い! だから、冬は乗らない! が一番安全安心かもしれない。

 でも、バッテリー切れだけは勘弁な。

日記: 7月14日(2012年)


今回のコースマップ

 車検でバイク屋に預けてあった愛車が帰ってきた。メンテ状態は最高。しかし、もう少しでバイクなどに乗る気も失せる酷暑の季節がやってくる。乗るなら今この時期を置いて他にない。

 ってなわけで、久しぶりに日帰りツーリングなんぞに行ってきた。最近は街乗りかキャンプツーリングかという両極端だったから、日帰りで繰り出すのはなんだか本当に久しぶりだ。基本に立ち返った気分がするよ。

 今回のコースは、東京から秩父を目指し、そこからR140沿いに山梨に向かって南下。一般国道山岳トンネル国内最長6625mの雁坂トンネルを通ってみることをメインイベントにして、あとはだらだら家に帰るという簡単プランだ。

 レッツゴー。


何の変哲もないフランクフルト

 【シーン1:早朝に出発】

 前夜に振った雨の影響で、まだ路上はウェット。これで高速を走ると、前車の巻き上げた雨水をもろにかぶっていやだなぁ、と思いつつの出発だ。

 3連休の初日ということで、高速道路は大変な混雑が予想される。そこで、朝5時に起床し、6時前には出発したんだけども、もうこの時点で結構道路は混雑していた。首都高から、外環、関越を経て、花園ICで下道に降り、R140に乗ったわけなんだけども、そこに至るまでに、1~3km程度の小規模な渋滞が、幾度も散発していた。まったく、3連休の最初の朝くらいゆっくり寝ていたまえ。

 幸いにも、気温が比較的まだ低く、暑さという不快感がなかったのが救いだった。案の定巻き上げられた汚れた雨水で、バイクや体がぱっと見ではわからない微細な汚れをまとってしまい、ヘルメットのシールドの視界も多少悪くなってしまったけど、これはもう織り込み済みだ。あきらめよう。

 花園ICの手前にある嵐山PAで一旦下車して、シールドをトイレで洗い、視界をクリアに戻して下道に出る準備を整えた。ついでに朝飯代わりにフランクフルト購入。貪り食った。うめえ!

 なんてことはないメニューだけど、こういう安っぽい「観光地や縁日でしか食わないもの」が食えるのも旅の醍醐味。こういう食べ物、大好きであります。


道の駅大滝温泉

 【シーン2:道の駅大滝温泉】

 R140に降りてから走ること数十分(だったかなぁ)。長瀞、秩父の市街地を抜けると、徐々に人里を離れて、山間の国道という雰囲気になってきた。

 ヘルメットのシールドを開けると、梅雨の雨のにおいと、緑のにおいが混ざったような、いい空気が流れ込んでくる。前後を走る車両の数もめっきり減って、速度を調節すれば視界に他の車両がいなくなる。自然の中を、単騎、マイペースで駆け抜けるのは、私の最も好むシチュエーション。ツーリングの醍醐味だ。空気も涼しいし、気持ちええ。

 やがて到着したのは、道の駅大滝温泉。昨晩の雨の名残で曇っていた空も、ここへ来て日差しを覗かせるようになり、景色も良くなってきた。この日差しだと、逆に暑さのほうが心配になってくるけど、ここからしばらくは高地を疾走することになるだろうから、まだ暑さの心配は要るまい。

 時刻はまだ午前8時。渋滞を避けるためとはいえ、朝早く出過ぎて、道の駅の施設はトイレ以外なにも開いていない状況だった。少し寂しいな。でも、まぁ、メインは「雁坂トンネルを走る」なので、いいとしよう。

 ここで15分ほど写真を撮ったり、つぶやいたりして休憩を取ったあと、また路上に繰り出した。雁坂トンネルは近い。


ダム

 【シーン3:ダムとループ橋】

 R140を走っていると、そこかしこに見かける「ダム」。

 ダム好きという人種がいるということは聞いているけど、そんなダムへ誘導する道路標識をいくつも見かけた。下手な観光地よりも推しているんじゃないかという勢いだ。ダムに行く人ってそんなに多いのだろうか。ふむむ。

 ってことで、一応せっかくだからダムの写真も撮っておいた。一回バイクに乗ると、しばらく降りるのが面倒くさくなってしまうので、ほとんどのダムはスルーしてしまったんだけどね。これも何らかのダムで、名称もあったと思うんだけど、忘れた。調べればわかるけど、まぁダムですよダム。ダム湖。

 あとは、途中で見事なループ橋もあった。どちらかというと、こっちは写真を撮っておきたかったなぁ。でも写真撮りたい!と思ったときには通り過ぎてしまっていたし、ユーターンするのも面倒だったのでやめておいた。

 ループ橋は2回くらい通ったかな。空を飛んでいるかのようで、気持ちよかった。


雁坂トンネル

 【シーン4:雁坂トンネル】

 寒い。

 ループ橋を駆使してまで高度を上げ、山越えに挑むR140。高度を上げるほどに気温は下がっていき、トンネル直前にあった路上の温度計表示では、気温20℃と書いてあった。

 この日は東京の最高気温が30℃を超えたという日で、この午前10時前の時点でも、もう東京では気温が28℃くらいにはなっていよう、という日だった。しかし、この高地は涼しいくらいの気温。そして、これがトンネル内はさらに涼しく、いや涼しいというよりも、もはや寒いというレベルにまで気温が下がっていた。多分15度くらいだったんじゃなかろうか。

 トンネルに入る前までは、涼しくていいわー、やっぱり夏は高地に限るわー、などと思っていたんだけど、トンネル内では「寒すぎるだろ!」とかヘルメット内でぶつぶつ言っていた。いやー、夏のトンネルといえば、イコール暑すぎるというイメージがあるんだけど、交通量が少ないトンネルは涼しい(寒い)んだよなぁ。冷蔵庫のようだったよ。

 肝心のトンネル自体は、長いだけで何の変哲もないトンネルだった。途中トンネル内で埼玉県と山梨県の県境を超えるところに、「<山梨県>―<埼玉県>」というような記載があった点を除けば、じつに普通のトンネルだった。舗装はしっかりしていたし、ほとんどまっすぐだったし、内部も明るかったし、交通量も少なかったし、利用に際して怖さのない、いいトンネルなのではないかと思う。

 唯一気に入らないのは値段だなぁ。原付70円で、それ以外の二輪車は560円。二輪車が軽自動車くくりなのは高速道路と同じだけど、この価格体系は本当にどうにかして欲しいなぁ。なんか納得がいかん!

 というか、全体的に高いね、ここの利用料金は。まぁ、おかげで交通量が少なくて快適なのかもしれないけど、それってトンネルの建設目的からすると本末転倒だよなぁ。


いのぶたまん

 【シーン5:道の駅みとみ】

 雁坂トンネルをぬけると、山梨県にはいる。そのすぐの場所にあるのが、道の駅みとみだ。

 ここの名物はいのぶたらしい。事前の情報によると、いのぶたラーメンなるものがあるらしく、それを食うのを楽しみにしていた。

 ・・・のだけど。

 朝早すぎたなぁ。到着した時点でまだ午前10時前。道の駅の食堂は開店準備すら始まっていない状態で、当然いのぶたラーメンなど提供されてもいなかった。

 仕方なく、午前10時過ぎまで道の駅の物産を冷やかし、いくつかのお土産を買ったりして時間を潰し、なんとか販売の始まったいのぶたまんを食べて、いのぶた経験を持つことにしておいた。

 さて、このいのぶたまん。食べてもいのぶたのなんたるかはよくわからなったけど、肉がぎっしりでうまかった。普通の肉まんは、もっと餡に肉以外のもの(とろみや野菜)の含有率が多いと思うんだけど、このいのぶたまんは、これでもかと肉ばっかりだった。ハンバーグが中に入っているようなにくまん。100円ちょっとのコンビニにくまんと比較すると、300円と少々値が張ったけど、それだけに豪華といってよさそうだった。値打ちはあったかな。

 ここから先、山梨県下では桃の季節らしく、ひたすら桃押しが続いていた。国道沿いには桃ののぼりがはためき、石を投げれば桃の即売所にぶつかるというくらい、あちこちで桃が売られていた。道の駅みとみでも、桃は大いに売られていて、その場で食える冷やし桃がなかなか好評のようだった。


ワイン売り場

 【シーン6:ぶどうの丘】

 最後の寄り道地点は、甲州ワインの里、勝沼にある「ぶどうの丘」なるところだ。

 甲州ワインのアミューズメントパークのような場所で、ワインの売買や試飲を軸に、レストラン、軽食、大浴場などが併設された場所。バスツアーなどで人々が連れてこられることが多いようで、潮の満ち引きのように、頻繁に団体客がやってきては去っていっていた。

 実はここでワインを買うのが、今回のツーリングのもうひとつの目的だった。翌日、親戚との会合があったので、ここでワインなどを買っていき、話題にしようともくろんでいたのだ。

 しかし、いざ入店すると困ってしまった。ワタクシ、ワインのことなどもちろんろくにわかりませぬ。数多くならべられた甲州ワインのうち、どれを選んだものか、見当もつかない。仕方がないので、自分の好みの語感を持つワインをテキトーに選ぶことにした。

 ま、正直なんでもいいのだ。渡すほうもそうだけど、受け取るほうもワインのことなどはわかるまい。話題になりさえすればいいのだ。うむうむ。よし、これにしよう。

 そうしてワインを買い、ついでに浴場に併設された休憩室で、お高いぶどうジュース(400円!)を飲みながら大いに休み、かつ、展望レストランで赤ワインビーフカレーなどを食い、帰路についた。

 帰宅は14時ごろ。うん、いつものように早いお帰りで何よりだ。シャワーを浴びて休むとしよう。ふふふ。

 【締めに】

 R140を走り、雁坂トンネルを通る。お土産に甲州ワインを買う。これら目的はすべて果たせたし、トラブルもなく、さほど渋滞にも巻き込まれず、楽しいツーリングになった。

 午前6時に家を出て、午後2時には帰宅しているという四半日ツーリングになったけど、とっとと家に帰ってしまうのは私のいつものことなので、こんなもんでしょう。帰宅ラッシュを避けたくなっちゃうのだ。

 面白かったのはR140の愛称。雁坂トンネルを境に、山梨県側では「雁坂みち」、埼玉県側では「彩甲斐街道」と呼称している。私のセンスからすると、どうみても「雁坂みち」のほうがいいと思うんだけどどうだろう。「彩甲斐街道」って、「最下位街道」じゃないのか、埼玉県よ・・・。

 なんかこのへんのズレたセンス(失礼)が、いかにも埼玉県だよな(失礼)、って感じで秩父あたりを走りながら苦笑してしまった。

 走行区間としては、やっぱり道の駅大滝温泉~道の駅みとみあたりの、山間のR140が良かった。これからの季節は、走るなら高地に限る。涼しくて快適。ただ、この1時間の快適さのために、前後2時間の酷暑を我慢の時間帯があるかと思うと・・・うーむ、やはりこの季節はそもそも走るもんじゃない、っていう思考におちいってしまうなぁ。

 あと、私は走り屋ではないので、あんまりくねくねした道は好きじゃないんだけど、そういう意味でも単調な道で楽だった。神経を使わずに、気楽に走れる。リラックス、リラックス。

 そんなわけで、次のツーリングはまたいつになるかわからないけど、またいずれ、どっかにいこうと思う。それまでは、私のバイクは旅バイクではなく、ママチャリバイクとなるのであった。

日記: 6月24日(2012年)

 この日は実家~自宅間をバイクで1.5往復ほどしてしまった。

 バイクの車検が切れるので、実家近くのバイク屋まで行って、バイクを車検に出しにいこうとしたのがことの始まり。

 まずその前に実家に寄って、その後バイク屋に向かうことにした。なぜかというと、私は「バイク関係の書類入れ」という箱を実家に置いてあるんだけど、そこに車検に出すのに必要な書類が入っているので、それを回収する必要があったからだ。

 ところが実家についてみるとその箱の中には、必要な3つの書類のうち「車両税の納付書」だけしか入っていなかった。「車検証」と「自賠責の証書」が見当たらないのだ。あれー? バイクに積んでたっけなぁ、と思ってバイクの狭いシート下を見てみても、いざというときのための車検証のコピーしか入っていない。そうだよなぁ、原本を入れた覚えないもんなぁ。

 ということは・・・自宅かよぉぉぉぉ。

 ということで、かなり虚無感に襲われながらも、自宅にとって返した。そして自宅を捜索してみると、案の定自宅に車検証と自賠責の証書が鎮座ましましていた。一時は紛失の可能性すら考慮したから、見つかって多少ほっとはしたけど、ああ、なんという無駄足か。こんなことならはじめにもう少し考えてから出発するんだったよ・・・。

 もうすっかり面倒くさくなってしまって、もう車検とか来週でいいか、と思いかけたけども、この季節に雨の降っていない週末は貴重だ。このチャンスを逃すわけにはいかない。そう思い直して、再び実家方面に向かうことにした。

 今度は間違いなく、車検証と自賠責の証書をバッグに入れて、3度目になる道程を移動。都合1.5往復の末に、やっと書類を揃えてバイク屋にたどり着き、車検に出すことができた。

 言っても都内の往復なので、走った距離は片道50km、合計150kmくらいでしかない。でも、都内の150kmは、田舎で200kmツーリングするよりも疲れたわ。そして貴重な週末の時間を浪費してしまったことが悔しくてならない。

 あー、くそっ、くそっ。

日記: 6月7日(2012年)

 昔ゲームで少しだけ一緒に遊んだ人が二輪免許の教習に通い始めたらしい。

 という話を聞いて、自分の頃を思い出して、大自二教習記録を一気に読み返してしまった。いやー、こうやって過去の自分の行動や思考を振り返れるのは、日記書きの特権だなぁ、懐かしい。

 こうやって読んでいると、バイクに乗りたくなる。最近のバイク生活は、必要に迫られた移動で乗るばかりで、バイクに乗ることを目的に乗る、っていうことから遠ざかっていたような気がするよ。ツーリングって最近してないなぁ。ま、私は言ってもそれほどバイクフリークでもなくて、たまに気が向いたら乗る、という程度のなんちゃってライダーだから、仕方がないんだけどね。

 とはいうものの、6月からしばらくは梅雨だし、7月には車検を通さないといけないし、8月は暑いし、9月は海外だし、とかなんとかいっている間に、結局次のツーリングは10月くらいになってしまうかもしれないな。

 まぁ、それもしかたありますまい。かかか。

日記: 4月28日(2012年)

 SWTORで知り合いになった厚木基地勤務の米兵に誘われて、厚木基地のオープンハウスに、ツーリングがてら行ってきた。

 オープンハウス、いわゆる基地祭は、普段は関係者以外なかなか入れない基地内部を、一般市民に公開して楽しんでもらおうというお祭り。グッズや飲食物等の各種出店を楽しむような縁日要素と、軍用の車両や航空機の展示を楽しむミリタリーマニア要素を兼ね備えた、1粒で2度おいしいイベントのようだ。私は兵器を見るのも嫌いではないけど、あえて時間を割いてまで間近で見に行きたいというほどのマニアではないので、主な楽しみを本場のアメリカンバーベキューメニュー、要するに「肉」に照準を定めて出発した。

 ちなみに米兵は来い来いと誘っておきながら、自分の連絡先を私に伝えなかったので(やや嘘。直前まで私に行く気がなかったので、聞くタイミングがなかった)、1人でただ行って、1人で帰ってきただけのイベントになった。米兵はただのきっかけというか、暇つぶしのアイデア提供者という位置づけ。ま、これはこれでいろいろと面倒がないからいいとしよう。

 春の陽気は絶好のバイク日和。バイクにまたがって出発した私は、気分よくショートツーリングの旅を楽しんだ。

 東京から東名で横浜町田ICまで走り、さらに下道を数キロ走った。片道大体1時間ちょっとで、「厚木市からだいぶ離れた綾瀬市にあるのに、なぜか厚木と命名されている」厚木基地近辺に到着だ。ちなみにバイクは近くの某商業施設の駐車場に置かせてもらうことにした。良い子はまねしないように。

 その某商業施設からさらに徒歩数分。厚木基地門前そばに到達した私の目に飛び込んできたのは、入場待ちをする人々の、おそるべき長蛇の列だった。

 推定1キロほどに伸びる人の列、列、列。入場門からでは列の最後尾は視認すらできず、そこから列に加わるために、最後尾にまで歩くだけでも一苦労だった。列はどんどん動いていたので、停滞感が少なかったのがまだしも救いだったものの、それでも結局私が入場門をくぐったのは、基地前に到着してから数十分が経過した午後1時ごろだった。正直マニアックな催しかと思っていたけど、想像以上に人気のある盛況なイベントなんだと思い知らされた。

 入場門では、身分証明書を提示しての入念なセキュリティーチェックが行われていた。これが行列の主な原因だな。まぁ、仕方がないんだろうけども。

 私は事前に「顔写真」と「本籍」を備えたIDカードが必要だという情報を得ていたので、それを満たす鉄板のIDカードである「パスポート」を持参して提示。なんなく審査をパスすることができた。しかし私の前のグループの人々は、その辺の事前調査がたりなかったらしい。「本籍の記載されていない新型運転免許証」を提示したものの入場を許可されず、門前払いを食らっていた。30分以上に渡って、ほぼ私と同じだけの時間並んでいた、ある種「苦楽をともにした」人たちだっただけに、哀れでならない。

 そんな悲喜こもごもを尻目にしつつ、入場。

 内部の開放されたエリアは、大まかに2つのエリアで構成されていた。ハンバーガー、ホットドッグ、ナチョス、ステーキ、チキン、ビール、ソフトドリンク、カキ氷、などを売るアメリカンな出店に囲まれた「芝生のエリア」と、展示用の航空機が並べられ、マニアのみなさまが群がっているであろう「滑走路のエリア」だ。

 私はここまで朝からなにも飲まず食わずだったので、まずは「芝生のエリア」で腹ごしらえをすることにした。

 アメリカンメニューは重い。すべてを食うことはできない。限られた食のチョイスは重要だ。

 空腹も限界に近かった私は、「どこでもいいから食おうぜ」と訴えてくる本能をなんとか抑えながら、すべての出店を覗き、入念にメニューのチェックをした。そして考察だ。何を食うべきか。言うまでもない。肉だ。ニクだニク。肉を食わずしてなにがバーベキューか。そうだ、肉だ!

 ってなわけで、「ショートリブステーキ」と「ローストチキン」を売る店に並び、ガッツリと肉を買い求めた。アメリカン・ミーーーーート! 

 買い求めた店は「ショートリブ+チキン+ライス+ドリンク」で1000円というセットメニューが基本の店だったんだけど、ライスとドリンクは今の私には必要ない。私が食いたいものは、ただ肉なのだ。そこで「ライスとドリンクはいらないからショートリブを2つにして」とブロークンイングリッシュを駆使して交渉した結果、完全な肉メニューを入手することに成功した。ニクーーー!

 芝生の上にあぐらをかき、いざ食事タイムだ。

 うむ・・・うまい。特にショートリブが美味い。

 米兵氏もゲーム内で「金曜夜はステーキ肉の漬け込みをするのだ」と言っていたけど、その言を信じるならば、一晩中漬け込まれたであろう肉は、さすがにその手間のぶんだけ柔らかく、味もしみこんでいて、実に美味かった。決して洗練された料理ではないけど、バーベキュー肉に要求されるレベルは十分満たしていた。さすが本場だ。ハズレなし。

 部位が部位だけに(ショートリブ。あばらのところ。要するにバラ肉。脂肪多し)、終盤になってくるとさすがに脂っこさが勝ってきたけど、それでもあばら骨ごとスライスされた肉は、あっという間に私の胃袋に消えていった。

 芝生広場に設置されたステージでは、謎のバンドが演奏をしたりしていて、青空の下での食事は飽きることなく楽しめた。少し天気が良すぎて日差しがきつかったのが難だったけど、そばにあったトムキャットのモックを見つつ、トップガンのテーマの演奏を聴いたりするのは、素人にもわかりやすい「らしい」雰囲気が出ていたよ。

 さて、と。気分良くピクニック&BBQ的なことをしたら、もうすっかり満足してしまった。もともと肉が食いたくてきたようなものなので、帰ろうかな、というような気分にすらなってしまった。

 とはいえ、さすがにここまできて、飛行機を見ずして帰るわけにもいかない。

 私は満腹のおなかを抱えるように立ち上がって、「芝生のエリア」から「滑走路のエリア」まで移動した。

 広い。

 「滑走路のエリア」はさすがに広かった。かなり遠くまで、平らなコンクリート舗装された地面が広がっていた。

 そこに何機かの航空機が配置されていて、その周囲にはそれを見物する見物客が群がっている。特に主力と思しき艦上戦闘機の周りには、多くの人が群がり、写真などを撮影していた。

 ミリタリーマニアではないものの、エリア88を読破し、いくつかのフライトシムもかじった私だ。他の機種はさっぱりだけど、さすがにこの主力と思しき機種はわかるぞ。細かい型番とかは知らないけど、これはF/A-18ホーネットだ。

 さらによく知らないんだけども、航空隊はそれぞれにチームカラーとか、愛称があるのかな? 何種類かの異なるカラーリングと愛称とがペイントされたF/A-18が並んでいた。記憶を頼りに言うと、なんとかホーク、ロイヤルメイシズ、だんばすたー?ず、ダイヤモンドバック、とかなんとか、そんな感じのチームがあったような気がする。こういういろいろなペイントがあるというのは、見ていて楽しいね。「私はこのペイントがいいと思う」などと自分の中で批評をしながら見物できた。

 それぞれのチームの機体のそばでは、そのチームのグッズを売るテントがあったりもして、マニアのみなさまが熱心に、そのチームのシャツやら帽子やらワッペンやらを買い求めていた。彼らはかなり本気で買い物をしているようで、私のような半端者ではとても近寄れない雰囲気。邪魔にならないように遠巻きにその辺を冷やかして、写真なんかもとりあえず何枚か撮影して、そっとその場を後にした。

 そのまま「芝生のエリア」までもどり、ジュースを飲みながらもう少しその場の雰囲気を味わってから、入場門をくぐって、厚木基地を後にした。時刻は午後3時前。あれだけ並んで混雑していた入場門も、この頃にはさすがにほとんど行列らしきものはなかった。祭りの日は、緩やかに終わりはじめていた。